アルバニアをご存じですか? 東ヨーロッパのバルカン半島にある小さな国です。戦後長らく鎖国状態にあり、現在は旅行者も増えているようですが、日本での知名度はまだいま一つ。そんな国を訪れ、とりこになったライターの太田瑞穂さんが、2018年と2019年の体験を3回に分けて紹介します。第1回は、首都ティラナです。
(トップ写真は、ティラナ中心部を流れるラナ川の橋を行き交う人々)
美しい国立公園やユニークな歴史文化
「アルバニアってどこにある?」と聞かれたら、すぐに答えられるだろうか。答えは、バルカン半島の南西部。南にギリシャ、アドリア海を挟んで西にイタリアがある。名だたる観光大国に囲まれながら、これほど知られていない国も珍しいのではないだろうか(アルメニアと混同する人も多いが、アルメニアはずっと東、黒海とカスピ海の間に位置する)。
旅行先として真っ先に名前が上がる国ではないかもしれないが、世界遺産や美しい国立公園、ユニークな歴史文化などが豊富で、偶然訪れた2018年に続き、2019年も再訪し、個人的には大好きな国のひとつとなっている。
初めて降り立った首都ティラナの空港は、日本の地方空港ほどの大きさで、カラッとした空気に包まれていた。空は青く、遠くに小高い山が見える平野に、空港がポツンとある、そんな印象だった。
気さくで親切な隣席の人
空港の前から出ている市内行きのバスに乗るやいなや、「どこから来たの?」と隣の席に座った男性に英語で話しかけられた。がっしりとした体ながら、愛敬のある、人懐こい笑顔だ。「日本? 私は小さい頃ギリシャに住んでいたけど、よく日本のアニメを見たよ!」。ツアーガイドの仕事をしているというこの男性、イリルさんは、空港でゲストを見送った帰りだった。
「イリルっていう名前は、アルバニア語でアルバニアのことを示す『イリリア』から来ているよ。ティラナの観光なら、『バンカート』がお勧めかな。近くにロープウェーがあって、山頂からの景色も楽しめるしね」
アルバニアについて親切に色々と教えてくれた彼は、「これからおばあちゃんの家に行くんだ。アルバニアを楽しんでね!」という言葉を残し、さっそうとバスを降りて行った。
この後、2週間アルバニアを旅する中で、イリルさんのような人に数え切れないほど出会った。旅人を大切にもてなす文化が根付いているというアルバニアでは、行く先々で出会う、温かくて優しい人々が大きな魅力のひとつだ。
アルバニア人の3分の1が暮らす街
アドリア海から30キロほど内陸にあるティラナは周辺部も含めると、人口の3分の1近い約80万人が暮らす大都市である。とは言っても、高層ビルはおろか、世界的なチェーン店もほとんどない。マクドナルドやスターバックスなど、どの街でも見かけるようになった看板を目にすることなく、装飾が施されたカラフルな西欧風の建物や、ミニマルで直線的なデザインの共産主義的なスタイルが混在する街を散策できるのが、すがすがしく、新鮮だ(ちなみに、ケンタッキーフライドチキンは1店舗ある)。
長い間、ローマ帝国やオスマン帝国など大国に支配されてきたアルバニアは、第2次世界大戦後、隣接する国々がユーゴスラビアとなる一方で、50年近く共産主義政権下で鎖国状態にあった。街のいたるところに見られるその名残が、街歩きの楽しみのひとつである。
街の中心部には博物館やオペラ劇場などに囲まれた巨大なスカンデルベグ広場があり、片側3車線あるメインの通り沿いには高い木々がまっすぐに植えられている。遠近感がわからなくなってしまうようなスケールだ。広場の名前になっている「スカンデルベグ」は、15世紀半ばに、オスマントルコからアルバニア北部の独立を勝ち取った英雄で、広場には馬に乗った雄々しい銅像が設置されている。
中心部から離れるとすぐに、下町のような雰囲気に変わり、年季の入った建物がひしめく。壁が少し崩れ落ちたり、道路がでこぼこしたりしているところもあるが、どこも本当にきれいに掃除されていて、道端で遊ぶ子供たちや、野菜や果物を売る人々の姿がある。観光客にとっては、治安がいいのもうれしい。ヨーロッパの大都市でよく見かける物乞いの姿はほとんどなかった。
フェタチーズやヨーグルトたっぷりの料理
散策に疲れたら、カフェでエスプレッソやビールを注文して、街ゆく人々をゆっくりと観察してみるのも楽しいだろう。カフェやレストラン、チーズや肉などの具が入ったパイのようなビレック(ブレク)を売るお店は街のいたるところにあり、おしゃべりにいそしむ人々であふれている。
ギリシャ料理とトルコ料理を合わせたようなアルバニアの料理は、フェタチーズやオリーブ、ヨーグルトなどが多用され、なかなかおいしい。店の前でジュージューと焼いているケバブなどの肉類を食べながら、ビールや塩味のヨーグルトドリンク「ダーレ」をぐいっとやるのもまた最高だ。ほかにも、石窯で焼くピザや手打ちパスタなど、本格的なイタリアンも手頃な価格で楽しめる。
核シェルターが博物館に「BUNK’ART 1」
イリルさんのオススメ「BUNK’ART 1(バンカート1)」は、街の中心部から路線バスに揺られて30分ほどの郊外にある。アルバニアでは共産主義時代、核戦争に備えて国中で17万から18万個以上ものバンカー(核シェルター)が作られ、今でも、いたるところに、おわんを逆さにしたような半球形のバンカーが点在している。その中でも、「バンカート1」は、政府高官らを収容するための最大規模のものだった。
地下5層におよぶ核シェルターは、とにかく巨大で、延々と続くトンネル状の内部には、数え切れないほどの小部屋が並び、当時の歴史資料などが展示されている。一見の価値はあるが、時期や時間帯によっては見学客がまばらで、当時の音源が鳴り響き、所々にリアルなマネキンが置かれている広大な地下トンネルは、少なからずおどろおどろしい。もっと気軽に見学したい方は、ティラナの中心部にある「バンカート2」で雰囲気を味わうのも良いだろう。
BUNK’ART 1
http://bunkart.al/1/faqe/about-us
「バンカート1」から15分ほど坂道を上がると、ティラナを見下ろすダイティ山行きのケーブルカー「Dajti Ekspres」(ダイティ・エクスプレス)乗り場がある。
Dajti Ekspres
ttps://dajtiekspres.com/v1/
標高1000メートルの切り立った岩壁にある頂上駅まで、15分ほどかけて上がる道中には、山あいの家々や自然が間近に見られ、冒険心をかき立てられる。ぜひ、緋色(ひいろ)に染まる夕焼けと、きらめくティラナの街を楽しめる夕暮れ時に訪れてほしい。
次回は、南部の港町、サランダへ。
<旅の情報>
アルバニアの首都ティラナへは、ヨーロッパの主要都市やイスタンブールなどから、複数の航空会社が飛んでいる。公用語はアルバニア語だが、イタリア語と英語を話せる人も多い。7月と8月は混むので、3月〜6月、9月〜10月がおすすめ。通貨はレクで、1レク=約1円なので、換算しやすい。
PROFILE
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「あの街の素顔」ライター陣
こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希
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太田瑞穂
ライター、翻訳&通訳。旅先でその土地の日常的な暮らしやそこに根付く文化を少しだけ体験するのが好き。
"シェルター" - Google ニュース
April 01, 2020 at 10:07AM
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オススメ観光地は核シェルター?! 欧州の「秘境」アルバニア紀行(1)ティラナ - asahi.com
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