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農家とメーカーらをつなぐ農業プラットフォーム「アグミル」--新コミュニティで目指すこと(CNET Japan) - Yahoo!ニュース

 SBテクノロジーとリデンが「農林水産省まるみえアグリ」プロジェクトの一環として2017年6月にサービスを開始したオープンイノベーション農業プラットフォーム「agmiru(アグミル)」は4月7日、各分野のプロやメーカーなどに直接相談できる「プロ指名相談サービス」を発表した。2019年12月にスタートした「農家コミュニティサービス」を拡充したものだ。

 agmiruは5種類(肥料、農薬、農業機械、飼料、種苗)の資材販売業者と農業者をマッチングする無料サービスとしてスタート。農業コミュニティに加えて、天気情報や市況情報、農業ニュースなどの情報サービスも提供しており、現在は5500人以上の農業者が利用している。プロ指名相談サービスの利用には月額200円が必要になる。

 プロ指名相談サービスの詳しい内容やサービスの狙い、今後のサービス拡充予定などについて、SBテクノロジー 法人公共事業統括 公共本部 副本部長でリデン 代表取締役の上原郁磨氏に聞いた。

500社を超えるサプライヤーが農家の資材購入を支援

 agmiruが当初から提供している農業資材購入サービスは500社を超えるサプライヤーが参加しており、商品数は5000点を超えている。

 「たとえば、アイアグリのような大手卸小売り企業、小泉製麻のような老舗メーカーなども参加していただいている。サービスをローンチしてから引き合いをいただくようになっており、少しずつ提携を進めている状況」という。

 ホームセンターは自身でECサービスを展開しているところも多く競合になりうるが、「ホームセンター独自のECサイトよりも販売機会が多い」と上原氏は自信を見せる。

 「マイナビ農業をはじめとする『農業NEWS』、天気情報や市況情報など、agmiruには農業者向けのツールがたくさんそろっている。農水省などの補助金の情報なども提供していく予定である。さらに、機能としてはクラウドファンディングのような『共同購入』も用意している」と説明。多様なサービスが最大のポイントだ。

市況情報や、政府の補助金情報なども含めたニュースを配信

 日々の情報収集面では天気情報に加えて、各作物ごとの取引の最高値や最安値、最も取引の多い価格などを数値やグラフで確認できる「市況情報」も用意している。

 「卸売市場の公開情報を基にデータ化している。数字の羅列では分かりにくいが、さまざまな角度からグラフで見られるようになっている。道の駅などでの値付けも新聞の情報を見ることが多いと聞くが、これらのデータを使えば手っ取り早く価格設定ができる。また、一定の指標を出した方が判断しやすいと考えて、値動きを予想する『予想士』もアサインしていく予定だ」と説明した。

 そのほか、農業に関する事例や取り組み、補助金政策なども含めた政府情報が分かる「農業NEWS」などの提供を予定している。

 「現在は『マイナビ農業』に協力いただき、さまざまなニュースを配信している。コロナウイルスの感染拡大などでこれから問題を抱えることになると思うが、農林水産省をはじめとする農家向けの補助金申請などの情報もここに入れていく予定だ。そのほか、一般の農家にとって有益な情報を、いろいろな企業にお声がけをして準備している。現在、補助金政策など有益な情報を届けることで、農業者に貢献していきたい」

4月から「プロ指名相談サービス」をスタート

 agmiruが中核的なサービスとして見据えているのが、2019年12月にスタートした「農家コミュニティ」だ。「資材」「販路開拓」「土づくり」「災害対策」「栽培管理」「スマート農業」「病虫害」「生育」などさまざまなトピックを用意しており、困りごとを相談したり、自らの取り組みについて紹介したりと、情報交換ができるようになっている。

 「たとえば、かなり大きな圃場を持つ米農家の方から、自分たちにとって使いやすい草刈り機はないか──といった質問が寄せられている。同じ地域の人だけではなかなか解決できない問題でも、agmiruでは他の人に広く聞けるという場を提供できる」という。

 農家コミュニティは、ユーザー同士がコミュニケーションをとれる無料のサービスだが、4月7日にスタートした「プロ指名相談サービス」は農家やメーカー、農業機械の専門家、コンサルタントなどさまざまなプロフェッショナルに相談できる有料サービスだ。土作りのノウハウや、経営ノウハウ、どうすれば補助金を申請できるのかなど、どこに相談すればいいのか分からないことを、気軽にプロに相談できる。月額200円で、月に何回でも質問可能だ。

 「農業経営のプロの場合、たとえば補助金はどのようなものがあって、何を適用できるのかといったノウハウを持っている。こうした補助金は農林水産省にとどまらず、経済産業省など省庁にまたがることもあるため、申請は難しい。そういったことを相談し、その何%をもらうというビジネスがあるのだが、彼らとしては営業行為が不要になるという意味で参画してくれている。広い入り口を設けつつ、そこから深くビジネスに進めていける設計」と説明する。

 プロフェッショナルは、「農業版YouTuberや、土作りのプロである『土壌医』など幅広い。引退された農家の方にもぜひ、知識を伝承するとともに副業としていただければと思っている」と上原氏は語る。

 サービス開始当初のプロフェッショナルは、「有識者などからの口コミで広げていった」という。現在はリデンがスカウトしたプロフェッショナルに相談できるスタイルで、今後はさらにプロフェッショナルを増やしていく予定だ。

 具体的には、「無料の農業コミュニティでコメントすると星がたまり、『いいね』の数などを含めたスコアの高い人とプロ契約を結ぶというスキームも持っている。最初はスカウティングだったが、今後は自動的に増殖するような設計にしている」という。

 さらに、「資材店やメーカーに直接相談する機能も用意している。メーカー側はすでにサポートセンターを持っていて運用スキームもあるので、そちらに誘導する形になる。われわれとしては資材販売を促したいので、サポートセンターにつなげて相談してもらい、ユーザーに購入してもらうというWin-Winの関係が築ければと考えている」(上原氏)

 こうしたコミュニティやプロに相談できるサービスは、相談するユーザー側にとっても、資材を販売するメーカーや資材店にとってもメリットがある。

 「農業機械など、高額な商品ほど相談したいというニーズがある。生産終了した農業機械のモーターなど、パーツだけ欲しいといったニーズもあり、実際にそういったパーツを型から起こして生産する業者もいる。もともとは資材購入のECサービスと農業コミュニティを別々に用意したが、相談した上で売買する『相談購入』という機能も用意しているので、そちらに誘導していきたいと考えている」と今後について語った。

画像解析サービスや衛星写真サービスなども提供予定

 そのほか、画像解析サービスや衛星写真サービスも2020年春にローンチする予定だ。

 「画像解析サービスはSkymatiX(スカイマティクス)との連携によるもので、ドローンで撮影した写真などを投稿すると、その写真をAIで解析して返すというものだ。例えばキャベツの収穫適期などを解析することで、効率よく収穫できる」という。

 衛星写真サービスは約5km四方程度の区画と撮影日をパソコンやスマートフォンで指定すると、2~3日後にはその区画の超衛星写真をダウンロードできるサービスだ。

 「1マス72~80cm程度の超高解像度衛星写真を、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index:植生指標データ)付きで提供するため、そのまま収穫予測ができる。1枚あたり30万円前後となる。1つの農家さんが購入するというケースもあるが、JAや自治体が買って使うスタイルも想定している。現在はそれぞれのサービスが独立しているが、今後はそれらをつなげることで、衛星写真サービスで撮った写真を画像解析サービスで解析するといったこともできるようにしていきたい」(上原氏)

 ドローンの機体や部品の購入、ドローン用の薬剤購入、さらにはドローンのプロパイロットに薬剤散布や撮影の依頼ができる「ドローンサービス」も今後のサービス開始を予定している。

 「ドローンは撮影用と農薬散布用の大きく2種類に分かれる。撮影用は決められたルートを巡回するだけなので楽だが、農薬散布用はパイロットがやらなければムラになってしまう」と説明した。

 2019年8月、ドローンによる夜間飛行農薬散布の実証実験などもリデンが主導で行っている。

 「夜間にドローンに発光体を付けて飛ばし、害虫を引き寄せて農薬を散布するという実証実験を北海道の東川町で行った。一般的に農薬散布は昼間に行うが、この技術が確立できれば暑い昼間に散布しなくて済むようになる。開発は3年目に入って技術はできてきたが、現在はどのようにサービスとして落とし込むかについて検討している状況」という。

 「農家向けのクレジットカードを用意したり、資材の割賦購入、リースなども簡単にできるように準備している。法人化が進むなど、農業界も変わってきている。そういう背景もあり、銀行からも何社か声をいただいている状況」で、今後はさらに作物販売サービス、会計・青色申告サービス、保険・金融サービスなどの開始も予定している。

5万人のユーザー獲得を目指し、他社との連携もさらに加速

 農業資材販売サービスには500社を超えるサプライヤーが参加し、ユーザー数は5500人を超えたagmiruだが、ユーザー数は5万人を目指す。

 農家にとってのagmiruの魅力は、ほかの農家の取り組み事例を入手したり、自分たちの取り組みを共有することによって「地域ごとの違いやノウハウなどといった情報が可視化できること」だという。

 「いくら試行錯誤しても農業は年に何回しかチャレンジできないので、多くの農家の方が試行錯誤した情報を基に、効率的に作業をしていただけるのではないかと思う。また、困りごとを共有する場にもしてほしい。何か困ったことがあったらここで検索したり相談したりすることで、他の人はこうやって解決したという情報をぜひ得てほしい。そのためには、積極的に活用してコミュニケーションを取ってほしい。また、『これからスマート農業を始めたい』という方は、ぜひともまずagmiruに登録してほしい」とアピールする。

 資材店やメーカーらが参画するagmiruのメリットは、「コミュニティでの会話などの情報がすべてビジネスにつながること」にある。

 「コミュニティでのユーザー同士のやりとりなどを踏まえて商品開発や売り方などを考えていただくこともできるし、農家の方々の困りごとを解決することでいい関係を築くこともできる。コミュニケーションを中心にビジネス展開していただければうれしい」(上原氏)

 コミュニティベースのため、ECサービスとしても大きなメリットがある。「われわれのECサイトは会話も含めて非常に広く深くコミュニケーションできる環境になっている。普通のECサイトでは価格比較だけで終わってしまうが、agmiruの場合は会話をした上で価格の上げ下げも含めて検討できる環境。そういった意味では農家の方々にも、メーカーや資材店の方々にも有効に使っていただきたい」と語った。

 最後に上原氏は、agmiruへの参加や提携を検討している企業に向けてアピールした。

 「ぜひとも協業先も増やし、『競争』ではなく多くの方々と『共創』していきたい。われわれはユーザーを集めていき、サービスをつなぎ合って価値を創造していきたいと考えている。そういったサービスをお持ちの企業からは、声をかけていただけるとうれしい」

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April 14, 2020 at 09:00AM
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