「コミュニティは人生の豊かさに直結するんです」
ご自身も”コミュニティに救われた”経験を持ち、日本で唯一の“コミュニティフリーランス”を名乗る長田涼さんは、まっすぐな眼差しでそう言い切ってくれました。
そんな長田さんが講師を務めてくれているのが、グリーンズの学校「コミュニティの教室」です。これまでに小杉湯3代目の平松佑介さん、6curryの廣瀬彩さん、OSIROの杉山博一さんなど、コミュニティの領域で活躍する実践者をゲストにお招きし、コミュニティについてともに学び、その本質を探求してきました。卒業生はのべ300人以上!
その豊富な経験をもとに、いよいよ9月からは少人数によるアウトプット中心の学び場「コミュニティの教室(実践編)」がスタート! そこで今回は「ひとつでも多くのコミュニティが良いものになっていくために、コミュニティマネージャーを育成していきたい」と語る長田さんに、その思いを伺いました。聞き手は「グリーンズの学校」学長の兼松佳宏(YOSH)が務めます。
長田涼(ながた・りょう)
スポーツ大学を卒業後、ユニクロ→スポーツイベント会社→IT企業を経て、2018年にコミュニティフリーランスとして独立。これからの働くを考えるオンラインサロン「Wasei Salon」、卓球複合型施設「T4 TOKYO」、コミュニティ型まちづくり「渋谷をつなげる30人」のコミュニティマネージャーを務める。また、コミュニティポイント「mint」、NPO法人グリーンズのコミュニティ事業にも関わっている。その他、コミュニティメディアの運営、コミュニティコンサル、コミュニティイベントなど、コミュニティを生業として活動中。また、フレスコボール日本代表選手としても活動している。
無いから、つくった
「コミュニティフリーランス」という生業
兼松佳宏(以下、YOSH) まずは「ふだん何してる人ですか」というのを改めて聞かせていただけますか?
涼さん ぼくは”コミュニティフリーランス”っていう肩書きで活動をしているんですが、名前のとおりコミュニティとか人の関係性を生業(なりわい)として生きている人間です。一番多いのは、オンラインコミュニティの「Wasei Salon」や「渋谷をつなげる30人」など、ぼく自身がコミュニティマネージャーというかたちで立ち回ることかな。
涼さん 特にオンラインのコミュニティづくりが専門で、FacebookグループやSlackを使ったコミュニケーション設計や、そこに集まってくださるみなさんとどうやったら関係がつくれるか、付加価値が生まれていくのかっていうことを考えています。その延長としてイベントをやったり、ライティングをしたり、幅広く。
YOSH 最近は「コミュニティアドバイザー」という肩書きも?
涼さん 5月に始めたばかりなんですけど、企業がこれからコミュニティに着手していきたいとか、もしくは今やっているコミュニティをなんとかしたいというところで、いかにうまく回るかを見る役割ですね。今はオンラインカウンセリングの「cotree」とか、ウェブ面談サービスを提供している「ZENKIGEN」とかと一緒に仕事をさせていただいています。
YOSH すごい活躍ですよね。独立する前の自分が2年後にこんなことになってるって想像できました?
涼さん いやあ、まったく(笑) 2年前までは会社員をしていたのですが、仕事が楽しめなくなったというか、ずっと鳥かごの中に閉じ込められているような感覚があって。そのタイミングでWasei Salonに関わり始めたのが、人生の転機ですね。そこで出会ったメンバーが、これまでにないくらい信頼できた仲間だったんです。
YOSH 長田さん自身がコミュニティに救われたんですね。
涼さん そうですね。彼らに相談させてもらっていると、「お前が一番好きなことやった方がいいんじゃないか」と言っていただいて。だったらこれはもう一歩踏み出すしかないと、何も仕事が決まってないのに独立してしまいました(笑)
YOSH そうだったんですね…!
涼さん それこそ貯金も2カ月分くらいしかなくて、「これはやばい」と本気で仕事を探したりしながら、いろんなご縁に支えられて今の状態までたどり着くことができました。ただそろそろ限界もあるなあというか、ステージを変えていく必要があるような気もしていて。グリーンズの学校の「コミュニティの教室」のように、今後はコミュニティマネージャーの育成にも力を入れていけたらと思っています。
コミュニティにお金を払うという
大切な経済の始まり
YOSH ちなみに「コミュニティアドバイザー」として実際にどんなアドバイスをするんですか?
涼さん 立ち上げから関わるときは、「どんな準備が必要なのか」というところからですね。中身の部分はみなさんに考えてもらうんですけど、外枠をぼくがつくるみたいな感じです。そのうえでコミュニティの戦略として「このぐらいのスパンで、こういうことをできたらいいですよね」っていう、企業さんの目指している方向を達成できるように併走していきます。
実際に動き始めたら、Slackとかのコミュニケーションを日々見るようにして、「あそこのやり取りはいいですよね」とか「おそらく今後こういうやり取りが生まれるから、このへんに気をつけていきましょう」とか、そういう話をしています。
YOSH うーん、それはものすごく貴重なノウハウですよね。
涼さん そうですね。今、冷静に話していても、なんでこれができてるのかがいまいち自分でわからないです(笑)コミュニケーションを取っていくなかで、肌で感じるものがあるんですよね。想像力が働くというか。
YOSH 大きな世の中の流れとしては、”オウンドメディア”だけでなく、「”オウンドコミュニティ”をつくりたい」というニーズが増えているんでしょうか?
涼さん 大きな方向性はそうだと思いますが、それぞれのニーズは多種多様ですね。たとえば、「一方的な発信だけでなく横の関係性をつくって自社サービスを活性化させたい」とか、「ファンイベントを皮切りにユーザーやファンとつながれるコミュニティを形成していきたい」とか。
YOSH どこもかしこもコミュニティですが、こうやってコミュニティがバズワードになるくらいの世界のほうが、健やかな気もするんですよね。何に対価を払っているかといえば、所属感だったり安心感だったり、目には見えにくいけれど、ものすごく大切な経済が始まっているような。
涼さん そうですね。極端な言い方をすると、その人の人生を豊かにしていくものがコミュニティっていう空間だと思っています。やるからには、そういう空間をひとつでもたくさんつくりたいっていうのが、ぼくの大事にしている思いです。
コミュニティの活性度を測る指標は
「その人から出る発言」
YOSH コミュニティや関係性の難しいところは、「”活性化している”ということをどう測るか」だと思うんです。「これがよかったから続けましょう」ってフィードバックするには、何か指標があって判断しているのかなと思うんですけど、涼さんの場合は何を?
涼さん シンプルにコミュニケーション量やSNSへの発信量、イベントの参加率などももちろんありますが、それだけではやっぱり不十分で。たとえばぼくがヒントにしているのは、その人から出る発言とか。
YOSH その人から出る発言。
涼さん はい。関係性が変わっていくと、言葉選びも変わっていくんです。「この人がどういう気持ちでこれを発言しているんだろう」というところまで掘り下げていくと、「明らかにふるまいが変わっているな」というのを見てとれる瞬間がある。そのあたりの数を肌感覚として追っている感じですね。
YOSH なるほど。
涼さん あとはコミュニティに参加して終わりとかじゃなくて、コミュニティメンバーを助けるアクションをとっているか、自ら率先してコミュニティ活動に参加しているか。あとはぼくを介さずにメンバー同士のコミュニケーションがとられているか、とかもポイントですね。そういったところから「この人の熱量はこのぐらいだろうな」とかを判断しています。
YOSH ふと思ったんですけど、熱量を測るのにテキストマイニングが使えるかもしれませんね。コミュニティの発言や言葉選びの変化でコミュニティの盛り上がりを分析してみたりとか。最初はテンプレートっぽい発言が多くて、だんだん、個性的なボキャブラリーの言葉が出てき始めて、とか?
涼さん あー、それは面白そうですね。コミュニティで大事なことは、コミュニティによって個人個人のアクションがどう変わっていくか、自己実現がどれだけできているかだと思うんです。誰かの「やってみたい!」という一言が、しっかり形になっていくかどうかはとても重要な指標だと思います。
YOSH ちなみに涼さんは“自己実現”という言葉にどんな思いをこめて使っています?
涼さん 自分のありたい姿を実現させる、という感じでしょうか。そして、自分のあり方を見つけるには、いろんな価値観を持っている他者の存在が必要だと思うんですよね。いろいろ関わる中で見つけたちょっと興味があること、好奇心が向く方向に対して小さな一歩を踏み出していく。コミュニティがその手段になればいいなと思っています。
進化していく「コミュニティの教室」
“魂の治療所”を目指して
YOSH さて、そんな涼さんが講師を務める「コミュニティの教室」ですが、「入門編」につづいていよいよ「実践編」が始まりますよね。というか、ぼくもgreenz peopleをひとつテーマにして、本気で通おうと思っているんですけど(笑)今どうして「実践編」を?
涼さん いろんなゲストをお呼びする入門編は、「こういうやり方があるんだ」とか「考え方があるんだ」みたいにインプットの場としてはすごくいいんです。もちろん「悩み相談ができる仲間が見つかる場になってほしい」という思いもあります。
一方で、人数も多かったので、「コミュニティを本気でつくりたい」というひとりひとりと寄り添えていなかったかもしれない。そこで少人数で、アウトプット重視の場をつくりたいと思って始めたのが「実践編」です。
YOSH 「実践編」だからこそ大切にしているポイントってありますか?
涼さん アウトプット型になるので、ある程度コミットは求めて、しっかり目標設定や振り返りをやっていきたいです。来てくれたメンバー同士で「ここで出会った10人は、マジ、仲間!」みたいなことになったら嬉しい(笑) なかなか大人になってから、そういう出会いってないですから。
YOSH いろいろな学びの場があるなかで、涼さんが「グリーンズの学校」に感じている可能性ってどのあたりですか?
涼さん グリーンズが生み出す空気感かもしれません。
そこに集まってくる人って、なんというか優しい人が多いし、価値観が合う人が多いというか。知見としてコミュニティのノウハウがどうとか、ライティングスキルがどうとか、いろんなものがあると思うんですけど、「本質的に人生を豊かにすることってこういうことじゃないか」みたいなことを体感的に学べる空間になったらすごい面白いと思いますね。グリーンズだからこそ、そういう場ができるイメージが沸きます。
YOSH ぼくは「魂の治療所」っていうキーワードがすごい好きで、古代エジプトにあった「テーベ図書館」というところに刻まれてたらしいんです。
Healing Place of the Soul。つまり、昔の人は図書館に行くことによって魂というか、精神的な部分とか心の部分を癒しに行っていたっていう。
ぼくらもケガしたり病気になったりしたら病院に行くじゃないですか。火事になったら消防車が来るし、泥棒がいたら警察に行く。けど、魂が傷ついたときに、「図書館に行こう」ってあまりならないですよね(笑)
涼さん そうですね。
YOSH でも、コミュニティの機能ってそれに近いものがあるんじゃないかなとも思うんです。人生を豊かにするためにそこに行く。またエネルギーとか好奇心とかが枯渇したら、いつでも戻ってくるみたいな。
涼さん そういう生命体のような場所になれたら面白いですよね。やっぱり今の社会ってどこか消耗戦なので、「グリーンズの学校」がそうじゃない社会を生み出せる場になっていったら理想です。
コミュニティの活性化には
「やっぱり運営が楽しまなきゃいけない」
YOSH 最後に、ちょっと手前味噌でズルい質問になってしまうんですけど、greenz peopleというコミュニティを活性化していくにはどうしたらいいと思いますか?
涼さん そうですね。見極めなければいけないのは、「コミュニティのメンバーの好奇心がどこにあるか」ということだと思うんです。今の取り組みが本当に彼らがやりたいと思っていることなのかとか、こっちから押し付けていないのかとか、そういう視点。
YOSH そこは確かにまだ掴めていないかも。ぼくがgreenz.jp編集長だったときはそれなりのロジックが見えていたんですけど、まだgreenz peopleでは見えてない。ウェブマガジンだと”記事”というわかりやすいアウトプットとか、”読者”とか”ライターさん”のようにわかりやすい関係性あるんですけど、コミュニティにおける人々の変容とか自己実現とか、どう掴んでいくか、ということですね。そのあたりは「実践編」に通って見つけたいと思いました。
涼さん やっぱり、なんだかんだ運営する側が楽しまなきゃいけないんだろうなって。Wasei Saonがうまくいってるひとつとしては、発起人の鳥井さんが全力で楽しんでいるし、「もっとこういうことをやりたい」ってよくアイデアが出てくる。そういう熱源があるから「なにか面白いことしようか」って熱が広がっていくんです。
YOSH なによりぼくたちが楽しまないとってことですね。すみません、なんだかぼくの個人セッションになっちゃって。
涼さん いやいや(笑) 日々コミュニティのことを考えてはいますけど、誰かとしっかり考えを話すことって意外と少ないので、ぼくとしても楽しい時間でした。今まで言語化しきれていなかったことが、少しできた感覚。
YOSH ありがとうございます。「実践編」でさっきの”関係性の指標”みたいなこととも、本当に一緒に探求していきたいですね。ひきつづき、よろしくおねがいします!
(対談ここまで)
人と人が関わるコミュニティを育んでいくためには、わかりやすいノウハウというよりも関わる自分自身が楽しんだり、好奇心を持ち続けたり、そのあり方こそが大事になる。9月からはじまる、少人数のアウトプット型の学び場「コミュニティの教室(実践編)」は、まさにそんな場所になるはずです。
コミュニティマネージャーとして本気で力をつけたい方はぜひご参加ください!
(構成: 廣畑七絵)
– INFORMATION –
コミュニティの教室 (実践編)
グリーンズの学校でこれまで5期に渡って開催してきた「コミュニティの教室」。
今の時代だからこそ求められる、”コミュニティ”の本質を追求するための教室として、様々なゲストをお招きしてインプット重視で実施してきました。
コミュニティを広く学ぶ場として機能してきましたが、コミュニティの教室をスタートさせてから2年以上の時間が立った今、私たちが抱いているのは「さらにひとりひとりの実践に踏み込んで伴走していきたい!」という想いです。
もっと実践的に結果を出せるようなコミュニティマネージャーが生まれる取り組みをしたい。ひとつでも多くのコミュニティが良いものになっていってほしい。そう願いを込めて、「コミュニティの教室(実践編)」を開催することになりました。
https://school.greenz.jp/class/community202009/
"コミュニティ" - Google ニュース
September 01, 2020 at 03:33AM
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