「大阪都構想」の是非を問う2度目の住民投票が実施され、大阪市民は再び「ノー」の判断を下した。5年前と今回の2度にわたり否決された以上、終止符が打たれたと考えるべきだ。
都構想を推進してきた地域政党「大阪維新の会」は、大阪市を解体し四つの特別区に再編するメリットとデメリットを明確に示せなかった。その責任は重い。
都構想は大阪府と市の二重行政を制度的に解消し、大阪の成長を実現することが狙いだった。
だが毎日新聞が投票直前に行った世論調査では、「メリットが分からない」が反対の理由として最も多かった。
「住民サービスの低下」を危惧する声は強かった。新型コロナウイルスの影響で税収の落ち込みが予想されるのに、維新は特別区になってもサービスは維持されると説明した。税収減などを考慮した試算を最後まで出さず、市民の不信感を払拭(ふっしょく)できなかった。
成長戦略そのものも疑問視された。万博の誘致や統合型リゾート(IR)整備など大型開発で経済成長を促す方法は、コロナ下の今、見直しは避けられない。
だが広域行政の司令塔を府に一本化し、成長戦略を推進するという都構想の基本方針が再検討されることはなかった。結党時からの看板政策を維持することを優先させたと批判されても仕方がない。
維新が2011年以降、知事と市長のポストを独占した結果、府市が一体となり、港湾部局の統合などが進んだ。そのため、市民が二重行政の弊害を実感できなかったことも一因だろう。
維新は都構想に再挑戦することを掲げ、2度にわたる知事・市長のダブル選で勝利し、公明党の協力も得た。それでも市民の賛成多数を得ることはできなかった。維新代表の松井一郎市長が23年4月の任期満了後に政治家を引退すると明言したのは当然だろう。
東京一極集中が進む中、大阪市に限らず大都市は人口減や高齢化などの課題に直面している。政令指定都市では道府県との二重行政が問題になり、財源と権限のあり方が問われている。
都構想が一石を投じたのは間違いない。その経験を生かし抜本的な対策の議論につなげるべきだ。
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