国内で使える4種類目の新型コロナウイルスワクチンとして、米ノババックス製が厚生労働省に承認された。だが、国民の約半分が3回目接種を済ませ、3回目で必要な米ファイザー製と米モデルナ製は確保済み。当面の接種対象となるのはワクチン未接種の二千数百万人だが、政府が購入契約を結んだノババックス製は1億5000万回分ある。使い道がなく宙に浮く恐れもある。(佐藤航)
◆どの社が早期に開発するかは未知数だった
政府はなぜ今、ノババックス製を購入するのか。実は、ノババックス製の製造を担う武田薬品工業と供給契約を結んだのは昨年9月。予算措置は第4波の渦中の昨年5月に講じた。「承認が今になることを前提に、確保を進めていたわけではない」と厚労省の担当者は打ち明ける。
世界保健機関(WHO)が2020年3月、「パンデミック(世界的大流行)」を宣言。世界の製薬会社がワクチン開発を始め、ファイザーとモデルナは「m(メッセンジャー)RNAワクチン」という新しい技術で、1年もたたずに開発に成功した。
一方で、各国政府はワクチン確保に動き、日本はファイザー製やモデルナ製などを確保した。ただし、どの社がワクチンを早期に開発するかは未知数だった。厚労省の担当者は「あらゆる可能性を考える必要があった」と振り返り、結果として開発が遅くなったノババックスとも当初から交渉を続けていたと明かした。
◆B型肝炎ワクチンと同タイプ「選択肢が広がる」
ワクチンに詳しい長崎大の森内浩幸教授は「より多くの人が接種するのに選択肢が広がるのは良いこと」と評価する。ノババックス製はB型肝炎ワクチンなどで使われる「組み換えタンパクワクチン」というタイプで、「新しい技術に不安がある人に比較的受け入れやすいと思う」と話した。
臨床試験(治験)結果を比較すると、ノババックス製は有効性がファイザー製とモデルナ製よりもやや低い。しかし、ノババックス製接種による強いアレルギー反応のアナフィラキシーショックは治験で1件も確認されておらず、接種を控えていた人が接種をする理由になるかもしれない。
◆費用対効果の検証を求める声も
とはいえ、国民の約8割がワクチンの2回接種を済ませ、未接種者は二千数百万人。その全員がノババックス製を3回接種しても、政府が確保した1億5000万回分は使い切れない。
1、2回目にファイザー製かモデルナ製を接種した人の3回目接種の使用についても、「ノババックス製の交互接種の(有効性や安全性を示す)データは企業の治験からは不足している」(厚労省)という。27日の厚労省の分科会で、交互接種について議論される予定だが、認められるかは見通せない。
ごくまれに血栓症を起こす可能性があるアストラゼネカ製は国内での接種を限定し、政府は確保した1億2000万回分のうち、4000万回分の契約をキャンセルした。ノババックス製が同じ道をたどる可能性もある。
九州大の馬場園明教授(医療経営管理学)は「開発競争中に、確実に確保するには早い段階で予約するしかない」と一定の理解を示す。その一方で、最終的にワクチンの費用対効果がどうだったのか、政府が検証することを求めた。
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