
南島信也
【静岡】都会を離れて自然豊かな地方に移り住む「コロナ移住」への関心が高まっている。伊豆市はこうした人々の住環境を整備して、移住・定住を促進するために、対象地域で宅地開発をする事業者に対して1500万円を上限に補助金を支給する制度を始める。
市によると、同様の制度は湖西市や裾野市で前例があるが、金額面では県内で最も大きいという。対象となる地域は、伊豆箱根鉄道修善寺駅から半径1キロの区域内のほか、小学校のある区域など。新規に造成する面積が1千平方メートル以上の宅地開発を行う事業者に補助する。6月1日から受け付けを始める。
菊地豊市長は「ビジネスの理論だけでは、不動産業者が伊豆市で宅地開発してくれない。公益上必要な場所の宅地開発を誘導したい」と狙いを語る。優遇策を打ち出した背景には、慢性的な住宅不足というやむにやまれぬ事情がある。
伊豆市の面積は伊豆半島の自治体で最大だが、8割以上が山林で占められ、可住地面積は全体の17・3%にとどまる。わずかな平地に多くの家が集中しているが、高齢化や人口減に伴って空き家は増え、市内に約3千軒の空き家があるという。ところが、先祖から代々受け継いできた家を手放したり、貸したりすることへの抵抗感が根強く、空き物件数は少ないのが実情だ。
一方で、伊豆市への移住希望者は近年急増している。2016年度はわずか15件だった相談件数が、19年度は189件、20年度160件、21年度は118件となった。空き家バンクなど市の制度を利用する人も増え、少なくとも20年度は37世帯85人、21年度は34世帯70人が移住した。ただ、移住したくても住宅数が限られ、需要に供給が追いついていない。
伊豆市は「コンパクトタウン&ネットワーク構想」を掲げ、街づくりを進めている。玄関口となる修善寺駅付近に都市機能を集め、周辺の集落部には生活拠点機能を持たせたうえで、効率的で持続可能な交通ネットワークで結ぶという考え方だ。今回の補助金制度は、住宅の供給不足を解消するための「苦肉の策」(菊地市長)ではあるものの、将来の街のあり方を見据えた一手といえる。(南島信也)
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