9月の牛肉需給は、8月の盆休み明け以降、末端消費が低迷し、各社在庫を抱えることとなった。とくに和牛の上位等級は、輸出需要も弱いため、月間通して前年相場を下回ったが、ホルスも輸入品の在庫圧迫から引合いは伸びず、相場も去勢B2で905円(東京市場・搬入)と3ケタ台にとどまった。期待された2つの3連休も、台風による天候不順で行楽需要に水を差す結果となり、小売り需要も振るわず、末端も在庫を抱える結果となった。
10月は基本的に需要の端境期にあるものの、「全国旅行支援」の開始と入国制限の緩和で業界としても観光需要・インバウンド需要への期待は大きく、すでにヒレ、ロースを中心に業務用筋からの引合いが増えているようだ。ただ、相次ぐ物価高騰で消費マインドが低下しているのも事実で、実際にどこまで消費がけん引されるか微妙なところ。そのため、全体としては需要の底は脱したものの、枝肉相場は前月から小幅な上げにとどまりそうだ。ただ、共励会もあるため、和牛去勢A5等級で2,600円前後、同3等級で2,100円程度か。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、10月の成牛出荷頭数は和牛が3万9,900頭(前年同月比1.6%減)、交雑種が2万2,600頭(13.0%増)、乳用種が2万9,600頭(3.1%増)と予想している。ただ、ホル雄に関しては、家畜改良センターの個体識別情報によると、8月末現在で10月に出荷適齢期を迎える生体の飼養頭数は前年同月比3.4%減と少ない。また、輸入品は、チルドが1万6,900t(17.5%減)、フローズンが2万8,900t(16.6%減)と供給はかなり絞られる見込み。依然として市中在庫は多いものの、円安によるコスト高と買付け抑制でバラ以外は徐々に締まりつつある。
〈需要見通し〉
牛肉の末端需要は、量販店ではスライス系に棚替えが進んでいる。ただ、現時点で動いているのは安価なスネやブリスケなどで、モモ系など切り落とし関係の動きは弱い。気象庁の1カ月予報では今月も全国的に気温の暖かい日が多いとみられているため、スライス需要が本格化するのは来月からとみられる。むしろ、10月からの食品の値上がりに伴う消費マインドの低下で、小売需要は厳しい展開が年末まで継続する懸念もある。これに対して、外食・ホテル需要は「全国旅行支援」や入国制限の緩和によって期待感が高まっており、すでに先月後半からホテル関係の業務用筋から和牛のヒレ、ロース、カタロースの引合いが増えている状況だ。輸出も東南アジア向けは堅調で、中国市場も共産党大会を踏まえた需要の回復を期待する向きもある。一方、ホル雄は春先までの引合いの強さは見られないが、ヒレをはじめ全般的に堅調で、今後、輸入チルドの在庫・相場次第では再び代替需要が強まる可能性もある。交雑種もホル雄に引っ張られる形で仕上がりの良いものは引合いが強まるとみられる。
〈価格見通し〉
9月の3連休は期待外れに終わり、在庫を持ち越す結果となった。来週は再び3連休を控えるが、小売関係の需要は厳しいと予想されるため、外食関係で需要を下支えできるかがポイントとなる。10月3日の枝肉相場(東京市場)は、和牛中心に前市から上げて強保合となった。今後もホテル関係など業務筋からのオーダーが見込まれるほか、各市場で共励会が開かれるため、相場は維持されるとみられる。供給量の少ないホル雄は堅調、出荷頭数が増えてくる交雑種は品質の良し悪しによってマチマチ、和牛はやや上げの展開と予想される。和牛去勢A5で2,600円前後、同A4で2,350円前後、同A3で2,100円前後か。交雑は去勢B3で1,500~1,550円、同B2で1,300~1,350円、乳雄B2で1,000円前後と予想される。
〈畜産日報2022年10月4日付〉
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