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日本酒も「脱炭素」 目の前の需要小さくても作る理由:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 神戸市東灘区の酒蔵が、製造工程の脱炭素化をめざした純米酒を発売した。背景には、近年の気候変化が山田錦など酒米の育成に悪影響を与えているという懸念がある。持続可能な日本酒づくりに向けて、業界の意識を変えるきっかけにしたいという。

 「福寿 純米酒 エコゼロ」を発売したのは、神戸市東灘区の神戸酒心館。270年以上にわたり日本酒を造ってきた酒蔵だ。

 社内の工場で行う醸造から瓶詰めまでの工程を、脱炭素化をめざして見直した。電気は二酸化炭素を出さない再生可能エネルギーで作った電力を使用。ガスは製造工程での二酸化炭素の排出量を環境保全活動などで相殺し、実質ゼロにしたものを導入した。

 これまでの純米酒は精米時に機械で70%まで削っていたが80%にとどめたり、醸造日数を短くしたりと、電力消費も抑える。味は従来のものより辛口で米のうまみが強いという。

 脱炭素にかじを切った理由を、安福武之助社長(49)は「これからも質の高い山田錦などの原材料を安定して調達したいから」と話す。近年の夏の暑さや台風を体感して、農作物が受ける気候変動のリスクの大きさを感じるようになったという。「事業を続けるために、作り方をアップデートしなければ」と決意した。

 コロナ前に海外のワインの展示会に出展した際、現地の多くの企業がサステイナビリティーの取り組みを前面に押し出していることも刺激になった。安福さんは「エコゼロ」発売が、業界の意識が変わるきっかけになればとも願う。「日本酒には歴史がある。これからも継承する責任が我々にはあると思う」

 純米酒は720ミリリットルで、希望小売価格は税込み1650円。同社のオンラインストアや百貨店で買える。今後は同社の他の種類の日本酒づくりにも再生可能エネルギーなどを使う予定。

     ◇

 10月中旬、神戸市北区大沢町(おおぞうちょう)の一角にある田んぼでは、横倒しになった山田錦の稲がコンバインで次々と刈り取られていた。

 「今年は台風14号の風で、稲がほとんど倒れてしまった」。山田錦農家の坂井正和さん(65)は嘆く。倒れると収穫作業に時間がかかるほか、水に浸って品質が低下したり出荷できなくなったりする。

 坂井さんは、年々増すように感じる夏や秋の暑さで酒米の品質が下がり、日本酒の質に影響するのではないかと気にしている。「最上級のお酒を造れるのが山田錦。できる限り高い品質のものを作り続けたい」

 1936年に生まれた山田錦。近年、栽培する農家や酒蔵を悩ませているのが、気候の変化だ。

 山田錦の品質は、稲に穂が出る出穂の後、9月ごろの気温に特に左右されるという。高温が続くと、醸造の時にこうじ菌の入る米の中心部「心白」が小さくなってしまうなどの障害が起きる。兵庫県立農林水産技術総合センターの調査によると、1998年ごろから、この時期の気温が高くなる傾向が続いてきた。4~5年前からは、米の粒にひびが入り、精米の時に砕けてしまうケースも目立つようになったという。

 県や各地のJAなどは、農家に対し、適切な水の管理や、栽培時期を後ろ倒しにすることなどを呼びかけてきた。坂井さんも以前は5月に田植えをしていたが、7~8年前からは6月に時期をずらした。

 JA兵庫六甲神戸北営農総合センターの大石雄三さん(53)は「暑さや台風で、良いものができなくなっている」と危惧する。肥料の価格高騰や高齢化など農業が直面する課題は多く、気候の変化に合わせた対応ができない農家も少なくないという。(大下美倫)

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