新型コロナウイルス禍の中、いち早く社会経済活動の正常化が進んだ欧州では航空需要が急激な回復基調にある。エールフランスとKLMオランダ航空を傘下に持つエールフランスKLMは2022年夏以降、搭乗率がコロナ禍前の19年の水準に近づき、売上高は既にコロナ禍前を上回る推移を見せている。日経ビジネスの取材に応じた同社のアンリ・ドゥ・ペイルロング副社長は「23年には供給力をコロナ禍前の9割まで戻す展望だ」とした上で、中長期的な航空需要の行方について語った。
アンリ・ドゥ・ペイルロング(Henri de peyrelongue)氏
エールフランスKLM取締役執行役員副社長。仏UTA(現エールフランス)を経て1992年にエールフランス入社。パリ近郊のシャルル・ド・ゴール空港のハブ化事業の担当者や路線計画、収益管理の責任者を務めた後、2008年からエールフランスKLM上席副社長を務め20年から現職(写真:小林淳)
2022年に入ってから、エールフランスKLMの業績は大幅な回復基調にあります。
アンリ・ドゥ・ペイルロング氏(以下、ペイルロング氏):22年7~9月期はとても好調だった。結果的に売上高、利益率はコロナ禍前の19年同期を上回っている。旅客数が回復しているのに加え、イールド(乗客1人に対する距離単位当たりの旅客収入)も改善したことが要因だ。この勢いを持続させていきたい。
イールドが上がっているのは、人手不足などを背景に供給が絞られていることも要因の一つではないかと見ています。
ペイルロング氏:座席の供給を需要が上回っているため、イールドが上がっているというのは確かだ。一方でエールフランスKLMとしては競合他社よりも早い段階で需要がどこで発生しているのかを把握し、そこに経営資源を割り振ることができた。それが良い結果に結びついた理由と考えている。
22年はロシアによるウクライナ侵攻が起きました。この危機が業績に与える影響をどう見ていますか。
ペイルロング氏:ロシアやウクライナとのビジネス的な関係は薄く、危機による直接的な影響は極めて限定的だ。一方で間接的には燃油費、特に(航空機燃料となる石油精製品である)ケロシンの価格高騰によってコストの上昇圧力があるのは確か。ウクライナ危機によってロシア上空を飛行できず、日本を含めたアジアへの航路は以前よりも長距離となり、所要時間も延びた。これもコスト高の要因だ。その分、エールフランスKLMとしては収入を増やすことに努めてきた。
人手不足などを背景に供給力にも限りがあり、ロシア上空を飛行できないという悪条件もある中、アジア路線に割いてきた経営資源をいち早く需要が戻っている北米路線などに振り向けるという選択肢もあるのではないでしょうか。
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