居抜き物件は、自分が住むための住居を探している際には出会わない表現です。店舗や事務所用の物件を探す経験をして、初めて知ったという人は多いでしょう。居抜き物件の意味やメリット、デメリットなどを紹介します。
不動産用語「居抜き」の意味
居抜きは、暮らすための住居を探す場合ではなく、店舗・事務所・工場などの物件を探す際によく出てくる言葉です。居抜きの意味や語源を確認しましょう。
内装設備、家具、道具込みの物件のこと
居抜きは不動産用語で、店舗や事務所などに使用していた物件の内装設備や家具・道具などを撤去せず、『営業していたときに近い状態』で賃貸契約や売買契約を結ぶことを指します。
必ず全てのものが残っているわけではなく、内装だけ・厨房設備だけというように、物件によって状態はさまざまです。一部だけ残っている場合、『一部居抜き』と表現されるケースもあります。
「居」を抜くから居抜き
居抜きの語源には諸説あります。一つは、住居から人がいなくなった状態を表しているとする説です。『居』は住んでいる状態を表す漢字で、設備や道具だけ残して住んでいる人がいなくなった状態が、居を抜いているということで居抜きと表現するようになったとされます。
もう一つの説は、関西方面でゆで卵を『煮抜き』と表現することに関係しているというものです。物件が空っぽの状態を中身がない卵の殻部分、中身が残っている状態をゆで卵(煮抜き)に例えていたところ、煮抜きを居抜きと聞き間違えた人が周囲に広めたという説があります。
居抜き物件に入居するメリット
新しく出店する人にとって、居抜き物件には多くのメリットがあります。よい物件に巡り合えれば、出店までにかかる時間や費用に対する不安を解消できるかもしれません。どんなメリットがあるのか、見ていきましょう。
出店のコストを抑えられる
以前の店と同じ業種であれば、出店に際して必要なものにそれほど違いはありません。居抜き物件の設備を流用できる状態なら、コスト削減につながる点はメリットといえます。
内装費や家具・道具などの購入費用がかからなくなる分、節約できるでしょう。ただし、実際に使用してみたら家具や道具の耐久性に問題があり、長くは使えないというケースもあります。
場合によっては、処分費用と新たな物品の購入費用の両方が必要になってしまったという状態になりかねません。流用したい場合は、どのような状態で残されているのかをしっかりと確認することが大事です。
スピーディーに営業を開始できる
居抜き物件を使用する場合、内装工事に時間を取られずに済むので、入居から営業開始までの期間が短い点もメリットです。営業を開始するタイミングが遅くなれば、それだけ資金を回収するために必要な期間が延びてしまいます。
出店を決めてから営業開始予定日までの準備期間が不足している場合、スピーディーに営業を開始するために、居抜き物件を狙うのも一つの方法です。
営業開始までに時間がかかりすぎると、ビジネスを始めるタイミングを逃してしまう可能性もあります。例えば、夏のレジャーの利用客を見込んだ店なのに、夏休みの開始時期に間に合わなければ、それだけ多くの売上を逃す結果になるでしょう。
以前からの顧客に利用してもらいやすい
居抜き物件は、『あの場所に店がある』と近隣の人が知っている状態からスタートできます。以前からの顧客を取り込める可能性がある点はメリットです。
一から店を出す場合に比べ、以前の認知度をそのまま利用できる点は、有利に働きます。以前も飲食店だった場所に、新たな飲食店ができれば『次はどんな店ができたのだろう?』と思い、積極的に行きたがる人もいるでしょう。
告知しなくても、需要がある近隣の住民が訪れて利用してくれれば、宣伝のために大きな費用をかけずに済みます。
居抜き物件にはデメリットもある
よい部分が多いように思える居抜き物件ですが、デメリットも存在します。デメリットを知らないと、思わぬ失敗をするでしょう。居抜き物件を使用するにあたって、注意すべき点を紹介します。
イメージ通りの内装にしにくい
以前の物件の内装や設備をそのまま引き継ぐと、自分のイメージ通りの店にしづらい場合があります。その店ならではのオリジナリティを出しづらい点はデメリットです。
以前の店の使いにくさも、そのまま受け継いでしまうことになる点に注意しましょう。配管の位置の都合で、水回りのレイアウトを変えられないケースもあります。
飲食店では、トイレや洗面台の位置、厨房内の動線は営業に大きく影響するため、しっかりと見極めたい部分です。もともと事務所だった居抜き物件を同じ目的で使用する場合は、レイアウトの制限による問題は起きにくいといえます。
前の出店者のイメージを引き継ぎやすい
居抜き物件の以前の入居者が、何らかのトラブルを過去に起こしたというケースもあります。認知度を引き継ぐメリットがある一方で、前の出店者の悪いイメージも付きまとってしまう点はデメリットです。
撤退した理由によっては、営業に問題が起こる可能性もあります。騒音や近隣住民とのトラブルなどが原因だった場合、同じような問題に悩まされる可能性があるのです。
よいと思える居抜き物件を見つけたら、不動産屋やインターネットなどを利用して、以前の出店者の評判もチェックしておきましょう。
併せて覚えたい「スケルトン」とは
スケルトンは居抜き物件と同じく、店舗や事務所を探す際によく出てくる言葉です。併せて覚えておくと、物件探しに役立ちます。どんな意味なのか確認しましょう。
建物の躯体がむき出しになった物件
スケルトンは居抜き物件の反対で、内装工事を一から行う必要がある物件のことです。肉が付いていない、骨組みの状態をスケルトンに例えています。
壁紙や仕切りなどがなく建物の躯体がむき出しになっている状態なので、そのままでは使えません。内装工事や家具・道具などの購入が必要です。
営業を開始するまでの期間が長くなり、工事にかかる費用も必要になりますが、思い通りの店にできる点がメリットといえます。
契約終了後は内装を撤去し、スケルトンに戻した状態で引き渡すのが基本です。解体にかかる期間や費用についても計算した上で、契約する必要があります。
構成/編集部
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