シノノメサカタザメは、不思議な外見の海洋生物だ。一見したところ、尾の部分はサメのように見える。しかし、平たい頭と厚みのある体をもつエイであり、頭にはとがった「トゲ」のような突起が並んでいる。
絶滅の危機にあるサメやエイは、中華料理で珍重されるヒレ目当てで乱獲されることが多い。シノノメサカタザメも近絶滅種(critically endangered)に指定されているが、別のぜいたく品としての需要があるために、危機にさらされている。それは宝飾品だ。シノノメサカタザメの「トゲ」を切り取ったものは、指輪や腕輪として加工される。(参考記事:「米国が違法フカヒレの一大中継地になっている」)
シノノメサカタザメは、かつてインド太平洋の全域に生息していた。ノコギリエイやトンガリサカタザメ(どちらもサメに似ているがエイの一種で、絶滅の危機にひんしている海の魚)に近い種で、国際自然保護連合(IUCN)のデータによると、この数十年の間に生息数が80%以上減少している。
2月6日付けで学術誌「Conservation Science and Practice」に発表された新たな研究の論文によると、シノノメサカタザメのトゲを使った宝飾品は、少なくとも10年ほど前からタイを中心によく見られるようになり、ネット広告による宣伝も盛んに行われている。
この研究を率いたのは、英国ウェールズにあるバンガー大学で海洋生物学の修士課程に在籍するジェニファー・ピトカ氏だ。氏によると、こういった取引のほとんどは違法で、長い間認識も記録もされずにきた。東南アジアからわずかにトゲの宝飾品に関する報告があったこと以外ほとんど手がかりはなく、「何を探せばいいのか、まったくわからない状態でした」という。
体系的な手法でネット検索をしてみたところ、シノノメサカタザメを使った商品が977件見つかった。中には、2012年の製品もあった。ほとんどは、トゲを一つだけ使ったもので、指輪にはめ込むか、単独で売られていた。ほかにも、腕輪、顎の骨、全身はく製などが見つかった。品物の3分の2は「ラザダ」や「ショッピー」といったeコマースプラットフォームに、残る3分の1はFacebookマーケットプレイスに出品されていた。
販売元はほぼすべてタイで、ほかに米国、イタリア、台湾、オーストラリア、英国、カナダにもあった。
シノノメサカタザメを使った製品の国際取引は、2019年以降、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の規制対象になっている。国境を越えて輸出する場合は、当局による記録が義務づけられる。また、取引が認められるのは、種の生存に影響を与えない場合に限られる。商品の出所をはじめ、取引の全容はわからないので、実質的にこの要件が満たされることはあり得ない。
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