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アングル:過熱する豪賃貸市場、供給不足と家賃高騰にあえぐ住民 - ロイター (Reuters Japan)

アングル:過熱する豪賃貸市場、供給不足と家賃高騰にあえぐ住民

 10月30日、オーストラリアの賃貸住宅市場が過熱している。写真は8月、シドニー・ライカートで撮影(2023年 ロイター/Stella Qiu)

[シドニー 30日 ロイター] - オーストラリアの賃貸住宅市場が過熱している。生活コストが上昇するなか、記録的な移民急増による需要の急拡大と慢性的な供給不足により、住宅のアフォーダビリティ(適正な住宅費負担)は限界点に到達しつつある。

オーストラリアでは全国的な空室率が過去最低となり、物件価格は過去3年間で30%上昇した。これにより賃貸住宅で暮らす人々は困難な状況へと追い込まれている。

シドニーの会社員ララ・ウィークスさんもその一人だ。18年間住んでいたアパートの一室の売却が決まり、高騰する都心部の家賃に耐えかねたウィークスさんと飼い猫は最近、寝室が2部屋ある部屋を出た。引っ越し先の寝室は一つで、家賃が22%高い中心部からも距離のある場所だ。

「同じような家賃水準でこの地域にとどまることができないのは悲しい」とウィークスさんは言う。

家賃は現在、オーストラリアの物価を押し上げている大きな要因のひとつだ。同国統計局が発表した第3・四半期の消費者物価指数(CPI)の伸びは前年比5.4%。この数字はオーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が掲げる2─3%の物価目標レンジの上限を優に上回っており、早ければ来週にも追加利上げが実施される可能性もある。

利上げが実施されれば、家主の多くが抱える住宅ローンの変動金利は上昇するだろう。大規模な法人ではなく、1軒もしくは数軒の不動産を持つ個人投資家がほとんどを占めるオーストラリアの不動産所有者は、家賃のさらなる値上げの必要に迫られ、借主にも厳しい選択を強いることになる。

「既に、戸建て住宅からアパートに転居する人々が散見されている。賃貸アパートの家賃も高すぎるとなれば、次は必然的にシェアハウスで暮らすようになるだろう」とREAグループ(REA.AX)傘下プロップトラックのチーフエコノミスト、キャメロン・クシャー氏は言う。

<最高値に近づく>

戸建て住宅は既に、多くの借り手が手を出せないほど高騰している。同国で最も物価の高い都市シドニーでは特に深刻だ。豪プロップトラックのデータによれば、第3・四半期の全国の家賃は週550オーストラリアドル(豪ドル・約5万2250円)、月におよそ2380豪ドルと横ばいのままだ。

全国のアパート平均家賃も同様の伸びを見せている。第3・四半期は4%跳ね上がり、伸び率は第2・四半期の約2倍となった。平均家賃は週520豪ドルで、戸建てとほぼ変わらない水準に近付いている。

全豪の賃貸物件の在庫の平均家賃は第3・四半期に前年比7.6%上昇。公式データによると2009年以降で最も大きい伸びで、同じく家賃の急騰がみられる米国と似た動きが見られた。

豪中銀のブロック総裁は上院公聴会で26日、家賃インフレは今後数四半期で年率10%のピークに到達し、その後下がっていくことが見込まれると述べた。

不動産業者からは一部で落ち着く兆しが見られているとの指摘もある。

「年の初めに比べれば、今ははるかに静かだ」とクリスティアン・ポスティリオーネ氏は言う。同氏はボンダイビーチなどを含むシドニー東部郊外の高級住宅地を担当する業者の一人だ。

「今年1、2月頃には、一度の内覧につき40─50のグループが訪れていた。だが、現在ではかなり少なくなってきている」

<アフォーダビリティの上限>

オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)初期に国境が封鎖され、人口の純流出が見られた。ただ、その後の家賃の上昇は、コロナ禍の落ち込みを補填する以上のものだった。

今年6月までの1年間で移民の純流入数は50万人に回復した。

住宅建設業界は高い借り入れコストや労働力不足、原材料価格の高騰に圧迫され、住宅供給は大幅に遅れを取ったままだ。

豪不動産サイトのドメイン(DHG.AX)は、市場の需要に見合うには7万件の新規賃貸物件が必要と推測している。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が9月に発表した「コアロジック・ハウジング・アフォーダビリティ・レポート」によると、全国で新規賃貸住宅に必要とされる金額は第2・四半期に収入の31.4%にまで上昇。低所得世帯の場合、直近の公表データである4月時点では52%だった。賃金の上昇は、家賃の高騰に全く追いついていない。

退役軍人のティム・ビーティーさん(62)は、オーストラリア西部では家賃を支払えなくなり、社会奉仕活動の仕事を辞めざるを得なかった。

現在はアデレードに住む娘の元に身を寄せながら、週200豪ドル以下を条件にシェアハウスの物件を探している。ビーティーさんはこう話す。

「かつては中産階級というものもあったが、いまはもうなくなってしまった」

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