2億4000万ドル(約257億円)の企業価値を抱え、ゲーム配信チームだったフェイズ・クラン(FaZe Clan)は世界最大のeスポーツ企業のひとつとなった。
フェイズ・クランはフォートナイトやFIFAシリーズ、PUBG(PlayerUnknown’s Battlegrounds)といったゲームのエリートプレイヤーたちからなるグループで構成されている。彼らのソーシャルメディアでのフォロワー数は合計で約2億人にもなり、彼らが獲得する賞金やスポンサー契約は非常に大きな金額となっている。現在はゲームにとどまらず、若者向けのライフスタイルメディア企業としての顔を持ち、マーチャンダイジングも手掛ける。最近は映像制作会社のシュガー23(Sugar23)との契約を結び、これによって彼らは長編コンテンツという長い歴史を持つ業界にも参入することになる。
4月に4700万ドル(約50億円)の資金調達をしたばかりのフェイズ・クランだが、CEOのリー・トリンク氏はすでに新たな数十億円規模の資金調達プロセスの最中であり、メンバーの多様化、グローバルな拡大を進める準備を進めていると述べた。ほかにもゲーミングコミュニティで使われる争いや対立を生むような言動を根絶することに取り組んでおり、ゲーミングにおける多様性改善の取り組みについても語った。また、若者向けのカルチャーと関わろうとするマーケターたちはカルチャーの「エッジー」さを受け入れる必要がある、とも述べた。
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以下、インタビューは読みやすさのために若干の編集を加えてある。
◆ ◆ ◆
−−グローバルへの拡大とは何を意味するのか?
昨年12月にテストしたマーケットのひとつがタイだ。タイではeスポーツチームを中心に市場を牽引すると決断し、現地のPUBGモバイルのチームとFIFAオンラインのプレイヤーたちをリクルートした。コンテンツは今まさに出始めていて、タイ国内でのソーシャルメディアの反応も上々だ。
フェイズ・クランのコンセプトは、グローバルブランドでありながら可能な限り(展開先となる)国内で育った、ローカルな存在だと感じてもらいたいというものだ。そして我々はフェイズ・クランを世界中で表現しながらも、アメリカからの「輸入品」だと感じさせない能力を持っている。
−−昨年、初めて女性プレイヤーとの契約をおこなった。フェイズ・クランのメンバーたちを多様化させる計画があるのか?
ゲーミングコミュニティの多様性について議論する機会を増やしていることはもちろん、女性プレイヤーを参加させる具体的なアクションを起こしていることも間違いない。それが簡単ではないことは確かだが、この分野の牽引者として多様性と女性プレイヤー増加をリードする必要がある。
ゲーミングコミュニティにおいて我々のようなグループがリーダーとしての役割を担うことは重要だ。
ゲーミングは少し遅れているカテゴリーでもある。(文化的に)メインストリームの人々の多くがゲーミングに価値を見出さず、放置され隔離されたカテゴリーだった。そんななかで我々が取り組んでいること、つまりメインストリームのエンターテイメント分野との架け橋を作ることや大きなスポンサーを引き入れることは、数年前であればあり得なかった。このことは大きく活発なコミュニティが存在していることを意味すると同時に、ビジネス面で洗練されたオペレーターがそれほど多くは存在せず、放置されていたことも意味している。
架け橋を作ることができた今、我々はゲーミングコミュニティとビジネスをつなぎ直すことができるが、同時に我々ゲーミングコミュニティの人間が成長しなくてはいけない。ビジネスコミュニティにおける「善良な市民」になる必要がある。時にはそれを苦痛に感じる人も出てくるかもしれないが、数年前にすでに「成長」を経験した他分野のビジネスと並んで、適切なスタンスをとることは我々にとってポジティブかつ必要不可欠なプロセスだ。
−−「成長」の具体的な例を挙げて欲しい。
我々が取り組んでいるなかでも大きなもののひとつが、ゲーミングコミュニティで使われる言葉遣いだ。
争いや対立を生むような言葉遣いはいかなるものも許さないということをファンに対して公言してきた。その取り組みの助けとしてAIツールも使い始めている。具体的なルールに関しては「ストライクひとつでアウト」という形になるのか、一時的なペナルティを課すのか、あるいはサブスクライバーもしくはフォロワーから排除すべきなのか議論を重ねているところだ。ほかのゲーミングコミュニティとも会話を持ち、同じ取り組みをしてもらえないか図っている。
フェイズ・クラン内ではダイバーシティ評議会を設置した。この分野におけるアクション可能な議題に取り組むボランティアグループのひとつだ。
−−クイビー(Quibi)とリアリティ番組を制作するパートナーシップが発表された。その企画はどうなったのだろう。
現状では実現しなさそうに思える。契約が確定する前、時期尚早なタイミングで発表されてしまった。今は前進していない企画だ。前進する方向に変わる可能性があるかと言われるとあるかもしれないが、私自身ははそうは思わない。
この契約にはふたつの組織が関わっており、契約のひとつは実行されたがもうひとつはされなかった。もうひとつの関係者と契約内容について同意に到達できなかった。
−−同意に到達できなかったのはクイビーか?
違う。
−−マーケターたちはインフルエンサーたちに対して不安を抱えることがある。彼らを安心させるために何と言う?
我々が持っている力の多くは社会的影響力だ。フェイズ・クランというブランドにつながっているからであり、IPやアイデンティティが存在しており、個人のインフルエンサーが持つ影響力の浮き沈みを超えたものがある。
フェイズ・クランはただのeスポーツチームではない。カルチャーをプッシュするスポーツチームでありライフスタイルブランドだ。カルチャーが牽引されている現場にいればわかるが−−特に若者向けのカルチャーに関しては−−エッジーな人々がカルチャーの原動力となることが一般的だ。つまり、本物であることが重要だ。「本物である」という言葉が抑えが効いていないことを意味するわけではない。ただ、フェイズ・クランのような魅力とパワーにあふれた存在に参加したいのであれば、エッジーさが必要になる。
もちろん、我々はブランドセーフティを確実にするために尽力する。問題が起きたときに重要なのは、何を起こしたかよりも所属する組織がどのように反応するかだ。(問題が起きるのではないかと恐れ)エッジを削り取ってしまおうとしたら、我々の持つ魅力をキープすることはできない。
Lara O’Reilly(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)
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July 16, 2020 at 09:50AM
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