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「家にいられない人」の一時的な避難場所確保を ~宿泊業界の取り組み~【堀菜保子】 | 堀 菜保子 - nhk.or.jp

「ホテルを一時的な避難場所に」
昨日7月30日のほっとニュース北海道の放送はこちらから。

※8月3日(月)午後10時~ ラジオ第一「NHKジャーナル」でも放送予定です。

紹介したのは、「ホテルシェルター」という宿泊業界の取り組みです。
専用のHPにアクセスすると、家庭内不和で家にいることにストレスやリスクを抱える人などに通常より安い価格で部屋を提供しているホテルを探せます。
始まったばかりで、現在掲載されている宿泊施設は13ですが、掲載を希望しているのは全国で230にのぼります。

取り組みを始めたのは、道内外5つのホテルを経営するホテルプロデューサーの龍﨑翔子さん。

龍﨑さんが経営するホテルを休業した4月頃、
ニュースなどでDVが増えているなどのニュースを目にする機会が増えたといいます。

「自宅にいたくないとか自宅に帰りづらいといった方々が、感染が拡大している中でも安心して過ごせるような空間が必要なんじゃないかなと思ったのと、それと同時に、コロナショックの影響で多くのホテルが休業していて、ここをうまくマッチングすることができないかなと考えて立ち上げたのが、『ホテルシェルター』です」
「ちょっと厳しいと思ったときに、すぐ駆け込める、すぐ自分の居場所を確保できる、そういったお客さんに寄り添えるようなホテルとして『ホテルシェルター』を育てていきたい」

と話します。

こうした居場所が求められる背景に何があるのか―――
札幌市で女性の人権保護を行うNPO法人女のスペース・おんを訪ねました。
このNPO法人では、DVなどに苦しむ女性の相談を受けたり、避難場所を確保して安全をはかって生活の自立を支援したりしています。

このNPO法人が加盟する「全国女性シェルターネット」は、3月末、国に、要望書を提出しました。

そこには、

「夫が在宅ワークになり、ストレスがたまり、家族に暴力を振るうようになった」
「自営業の夫が仕事がなく、ずっと在宅し、家族を監視するようになった」
「夫がテレワークで自宅にいるようになり、これまで長時間労働ですれ違っていた夫が妻に家事一切を押し付け、文句を言うようになり、モラハラが起こってきた」

などの、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、家庭で苦しむ女性の声がまとめられ、
国に対し、相談窓口の拡充や母子の保護体制の充実を求めました。

ことし4月、全国の支援センターに寄せられたDVなどに関する相談は、前の年の同じ月と比べておよそ3割増えたというデータもあります。

こうしたことが起きてしまう要因を、女のスペース・おんの山崎菊乃代表は次のように話しています。

「災害とか緊急事態が起きると、必ずDVや虐待が顕著になってくるというのは私たち経験しておりますので、今回もコロナで外に出られなくなったり、そういう社会的パニック状態が起きると必ず家庭の中の暴力というのはひどくなるというのは予想できました。これまで距離を保ってなんとか抑えていた夫婦間の関係性、性別役割分担意識というのが表れてきてしまっている。自分のストレスを誰かのせいにしたくなる。それで、誰のせいにするかというと自分より立場の弱い人に向かっていくわけですよね、だから夫のイライラは妻に向かい、子どもに向かい・・・」

山崎さんの団体では、これまでも女性が避難できる場所を確保。生活の自立を支援してきました。
被害者の安全を確保するためには、離婚をして加害者から離れることが必要です。

しかし、山崎さんは、

「なかなか家を出るというのが、特に子供さんがいると、夜の海に飛び込むような、そういう気持ちだと思うんですよ。
でも、まだそこまでは(できない)という人がいっぱいいるんです」

と話し、
いまの日本は、「離婚までは考えられないが、一時的に避難したい女性」に対する金銭的・物理的支援が不十分だといいます。

そのため、今回の「ホテルシェルター」の動きには大きな期待を寄せています。

「私たちへの相談で、やっぱり、いますぐに離婚は決められないけれども何日間か距離を置いてゆっくり頭を冷やしたいの、だけどお金がないのという相談が多いんですよね。そういった方に利用していただいて。ホテルだったらフロントに人も配置されていますし、清潔ですし、居心地もいいし。それで、必要に応じて私たち支援団体にコンタクトをとっていただいて、私たちが、こんなことできるよ、あんなことできるよ、で、離婚したとしてもこんな制度があるよという、彼女が安心して次の一歩を踏み出せる情報提供をしていけるかなと思います」

ホテル側も情報管理と感染対策を徹底しています。
ホテルのスタッフにも必要以上の情報を知らせず、希望すれば部屋での食事も可能にするなど、人に会わない対策をしています。
取材をしたホテルは、まだ「ホテルシェルター」として利用している人はいませんが、受け入れる態勢は整っています。
支配人の池田智哉さん、

「できるだけお客様の求めているものや、不安を取り除けるようにスタッフ間でも共有しながらお客様とお話させていただけたらなと思っています」

と話しています。

一方で、一時的とはいえ、避難する場所を知られたくないという人もいます。
龍﨑さんはそうした人の声にもこたえられるよう、現在自治体や女性の支援団体などと協議を進め、
HPには掲載せずに一部のホテルの部屋を提供できるような体制づくりも進めています。

また、女のスペース・おんの山崎菊乃代表が大きな期待を寄せるのが、「ホテルシェルター」へ協賛する企業の存在です。
現在部屋を利用するには1泊3000円からの宿泊費が必要ですが、宿泊費を負担しようという企業も出てきています。
まだ一部にはとどまりますが、次第に支援の輪も広がってきています。
山崎さんは、こうした動きについて、

「被害者が逃げ隠れするのではなく、被害者が堂々と歩いてその周りをちゃんと囲む人が守ってくれて加害者を排除するという社会的な動きにつながっていくんじゃないかと思っています。いろんな企業の方とのコラボレーションというのは、それイコール、社会として被害者を守っていく・暴力を拒絶するシステムの足掛かりになっていくと考えています」

と話してくれました。

新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ女性が増えているということを知って始めた今回の取材。
「家にいられない人」を守っていくための貴重なこの取り組みをより持続可能にするため、
さらなる多くの人や企業からの支援、行政やNPOなどとの連携が広がっていくことを願います。

※内閣府は、従来の電話での相談「DV相談ナビ」に加え、4月中旬から「DV相談+」を開設し、24時間電話・SNS・メールで相談を受け付けています。
また、女性に対する暴力への各国の取り組みについては、2014年に欧州評議会で制定された「女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス防止条約(通称 イスタンブール条約)」などを見ると分かりやすいです。

2020年7月31日

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July 31, 2020 at 04:08PM
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