メバルがモチーフの防災公園が登場
台風をはじめとした、暴風や大雨による増水、地震など多くの自然災害が発生する日本。災害への備えというのは、とても大切になってくる。
そのような中で山口県防府市が、普段は公園として使用しつつ、災害時には避難所となる防災公園「新築地町防災広場」(通称:メバル公園)を整備した。
場所は、瀬戸内の穏やかな海が一望できる、防府市の中心市街地から南西3キロに位置する三田尻中関港の緑地。敷地面積は約6千平方メートルで、サッカーグラウンド一面分ほどの広さとなっている。
まずこの公園の遊具について説明すると、特徴的なメバル型の大型遊具は内部が上下の二重構造で、常に日陰となる下層部は、夏場でも保護者が休憩することができるフロア。上層部は波型にトランポリンが張り巡らされ、空中にはつり橋やリングネットのトンネルなどアクティブな遊びができる仕組みとなっている。
他にも公園として、子どもたちから人気があるターザンロープ、すべり台、クライミングなど37種類の遊具が取り揃えられている。
また、“幼児・乳幼児エリア”には、タコの遊具や知能の発達に寄与する知育パネルなどが29種類も。
さらには、大人も利用できる健康遊具や休憩施設など全77の遊具が揃った公園となっている。
ちなみに、モチーフがメバルとなった理由は、瀬戸内海に多く生息し、ご当地の魚の一つであるからだそう。その中でも、遠くでも目立つ彩色を模したアカメバルが採用された。
また、メバルは目がとても大きくて目が良いことから、「子どもたちの遊びをいつも見守る」という意味も込められているという。
非常時にはシェルターなど防災機能を持つ場所に変身
そんな普段は憩いの場として楽しめる「メバル公園」だが、非常時にはしっかりと防災機能を兼ね備えた場所に変身する。
まず、メインとなるメバル型の大型遊具。
大きさは、高さ約11メートル・全長約20メートル・幅約10メートルで、下層部フロアを仮設テントで囲うことで約50人が収容できるシェルターとなるのだ。
隣接する備蓄倉庫に保管する仮設テントを使用し、メバル型大型遊具のレールにフックで引っかけてテントを展開。屋根の部分にもテントを張るため、雨が降っても内部が濡れる心配はないという。
公園は海に面しているため、ある程度の強風の環境下でも使用できるようになっており、設計上は風速40m/sの強風雨にも耐えられる強度となっている。
そして周辺には、シェルターとして機能するバーゴラ(日陰棚)やあずまやが9カ所あり、それぞれ3~4人程の人数を収容できるという。
これらの小規模なシェルターは、授乳室や更衣室としてのプライベートスペースとしての活用も想定している。
また、ベンチは取り外しができ、テーブルとかまどとして活用が可能。このかまどは、簡易湯たんぽや医療道具などの煮沸消毒に使うことができる。
列車型遊具は、物資や資材を運搬するための手押し車となり、携帯電話の充電ができるソーラー照明なども設置されるなど、多くの防災機能が整備されている。
このメバル公園は11月上旬の開園予定だが、防災施設としての機能はすでに完成しており、災害発生時はすぐに使用することが可能だという。
防災機能としてのさまざまな仕掛けがあるが、そもそも防災施設ではなく“防災公園”として整備したのはなぜなのだろうか? 防府市役所の土木都市建設部・河川港湾課の藤本英明課長に話を聞いてみた。
憩いの場であり防災教育の場
ーー「メバル公園」を整備することになった経緯は?
防災広場が整備された場所は、山口県の地域防災計画においても防災拠点として位置づけられています。また、平成30年7月豪雨の広島県呉市において、幹線国道などが土砂災害により寸断され物資輸送ができない状態でしたが、海路を活用することで物資輸送が可能となり、港の重要性を認識しました。
一方で、地域住民が海に親しむことのできる開放的な親水空間や交流活動の核となる空間の創出を図ることも県の基本方針に示されており、防災広場周辺の区域は、国土交通省から「みなと」を核としたまちづくりを促進する「みなとオアシス三田尻」の指定を受けているところです。
上記理由の点から、防府市といたしましては、災害時は防災の機能を有し、平常時には交流と憩いの場となるような、市民の皆様に喜ばれる施設を建設した次第です。
ーーなぜ防災施設ではなく、防災公園という形になった?
大規模災害時における県央の防災拠点としての更なる防災機能の強化は元より、大型複合遊具を整備することで、平常時に子どもから高齢者までの多様な世代の人達が集い、憩うことのできるファミリーゾーンが生まれ、賑わいの創出につなげていきたいと考えております。
また、子供たちの防災に対する関心を高め、防災教育の場としても活用されることも期待してこのような形といたしました。
ーー防災機能としてのこだわりを教えて
いつどこで災害が起こるかわからない中、ひとつ考えられるのは、いかに素早く、この防災広場の防災機能を展開させることかと考えます。そこで、普段は収容している避難シェルター用の仮設テントなども、極力労力をかけずに早期に展開できるように設計されています。
仮設テントは大人一人で運搬できますが、誰でも運搬できるように“遊具が荷車になる”というのも、基本はこの考えのもとで発案されたものです。
ーーでは、遊具としてのこだわりのポイントは?
メバル内部(上層)ネットトランポリンの空間になります。
ここには、具体的な遊び方がわかるような遊具をあえて配置せずに、子供たちに空白・余白を持たせた遊びができるように、広い空間を活用したネットトランポリンを敷設しています。
昔の子供たちが、山や川で遊ぶときに自分たちで遊び方を見つけたように、考えながら工夫して遊べるように自由度の高いスペースがこだわりの部分となっております。
ーーメバル公園の反響は?
おかげさまで、完成する前から開園日時のお問い合わせ・取材や現地視察の申し込みなどさまざまな反響をいただいております。また、すでに市内の小学校から遠足や社会見学などのお話もいただいております。
コロナ禍により大々的な宣伝や広報を自粛している中で、多くの方々にご興味・ご関心をいただいておりますことに大変うれしく思っています。
この施設がこの地域のランドマーク的な存在になり、開園後も多くの方に末永くご愛顧いただける場所になればいいなと思います。
普段から慣れ親しむ場が非常時に防災施設となることは、いざ災害が起こった際の迅速な対応や安心感につながることもあるだろう。
災害はいつ起こるか分からない。このような防災公園がさらに増えることを期待したい。
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September 17, 2020 at 09:30AM
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