
電力需要に供給が追いつかなくなる事態が懸念されている。
政府は需要が高まる7月から9月の間、家庭と企業に節電に取り組むよう要請した。
全国規模の節電要請は2015年度以来、7年ぶりだ。11年に福島第1原発事故が起きてから数年は毎年のように出ていた。
節電の意識が薄れてきた面はあるだろう。政府は、エアコンの設定温度を高めにするといった具体例を挙げて節電を求めている。
節電で体調を崩すようなことがあってはならない。無理なく取り組める環境づくりが課題だ。
電力は、使う量と発電する量を常に合わせる必要があり、バランスが崩れると大規模停電につながる可能性がある。ピーク時の需要量を供給可能な範囲にどう抑えていくかが、節電の鍵となる。
より積極的な取り組みが必要になるのは、太陽光の発電量が落ちる午後5時から8時ごろという。広く周知する必要がある。
今年3月には、福島県沖の地震の影響で複数の火力発電所が急停止したところに気温の低下が重なって暖房需要が増加し、一時は大規模停電が危ぶまれた。
経済産業省は「需給逼迫(ひっぱく)警報」を出したが、発令が遅れるなど準備不足が露呈した。その後「注意報」を新設し、早めに呼びかける仕組みに改善している。
冬には、夏よりも厳しい需給状況が予想されている。いつどんなタイミングで逼迫の恐れがあるのか。家庭や企業に協力を求める以上、見通しを分かりやすく具体的に伝える工夫が欠かせない。
逼迫のたびに節電を呼びかけるだけでなく、中長期の対策も考えていかねばならない。料金の時間帯別設定など、余剰気味の時間に電力需要を誘導する仕組みも積極的に取り入れていきたい。
電力不足が目立ち始めた要因には、複数の問題が絡んでいる。
老朽化した火力発電所の休廃止が広がり、脱炭素化の中で新たな設備投資が進まない状況がまず挙げられる。3月の地震からの停止も含め供給力が低下している。
これを機に原発の再稼働を加速すべきだとの意見も強まっているが、安易な発想だ。避難計画の不備などが指摘されている。不信は拭えていない。安全対策をおろそかにすることなどできない。
問題の根底には、福島事故後に再生可能エネルギーの普及に本腰を入れるのが遅れ、供給体制の構築論議を実質的に先送りしてきた政府の姿勢がある。その事実を改めて確認しておきたい。
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