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ウェブ小説30年史――カクヨムとほかの出版社系投稿サイトの違い - 現代ビジネス

ウェブに書かれた小説はいかにして本になってきたのか。ネットビジネス史、出版産業史的な視点から「ウェブ小説書籍化の歴史」を紐解く。

(以下、『ウェブ小説30年史 日本の文芸の「半分」 』(星海社新書)より一部抜粋して紹介する)。

photo by iStock

「人気」と「評価」と読者の関係――カクヨムとほかの出版社系投稿サイトの違い

2016年に始まったカクヨムが『ひげを剃る、そして女子高生を拾う。』や『スーパーカブ』などのヒット作を生み出し、2010年代以降にスタートした出版社発の投稿サイトとしては比較的成功したと言っていい数少ない存在になりえたのはなぜかを考えてみよう。

映像化なしでも書き手と読み手が作るグッドサイクルが一定の大きさで回るようにするための方法論が、対読者施策だ。軌道に乗ったカクヨムとサービスを畳んだ文芸ピクシブなどとでは、この違いも大きかった。

カクヨムが成功した理由として多くの人が真っ先に思いつくのは、人気ジャンルのネット適性だろう。

ランキングを見れば、カクヨムでももっとも人気のジャンルはなろうやアルファポリス同様、異世界ファンタジーではないか、と。

なろう系がラノベに組み込まれたあとで始まったカクヨムは、ラノベの中心地であるKADOKAWAが運営するものなのだから、ファンタジー系のラノベが人気になって書籍化も成功するのは当然だろう、と。一理ある。実際、ファンタジーやロマンス、ホラー、青春小説など、ウェブ小説書籍化において商業的に有望なジャンルは、書籍化され、読者に買われるルートが確立されている。

一方でそれ以外の一般文芸、純文学は未開拓というより「以前、誰かが散発的に出してみたがそれほど成果が芳しくなかった」ジャンルが多い――刊行しても目立たなかったので「まだ誰もやっていない」と勘違いされ、失敗時のノウハウも引き継がれずに同じ失敗が繰り返されている。

投稿・閲覧サイトには「みんなが使うから自分も使う」「面白い作品があるから読みに来る/読みに来る人がいるから投稿する」というネットワーク効果が生じる。

だから、ただでさえ後発参入者はそのサイクルを軌道に乗せるまで苦労する。そのうえウェブ上で需要があるのか、書籍化して需要があるのか定かではないジャンルでチャレンジするならば、軌道に乗るまで余計に時間がかかる。

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