「ITIL 4」進化論(5)
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ITを作る側と使う側の両方の視点で活用ノウハウをフレームワークとして整理した「ITIL (IT Infrastructure Library)」。国内では主にIT運用のフレームワークとして利用されてきたが、最新バージョンの「ITIL 4」(以下、ITIL4)は新たなコンセプトの下、DX(デジタルトランスフォーメーション)に求められる要素を盛り込んで生まれ変わった。本連載では、『ITIL 4の基本 図解と実践』(日経BP)を執筆した、ITサービスマネジメントの専門家であるアクセンチュアの中 寛之氏に最新版ITIL4の特徴を解説してもらう。連載第5回はSVS(サービスバリュー・システム)の中心にあるSVC(サービスバリュー・チェーン)を解説する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)
SVS(サービスバリュー・システム)の中心にあるSVC(サービスバリュー・チェーン)は、顧客やユーザーの需要に応えるための主要な活動の概要を示しており、サービスの創造と管理というバリューチェーンを通じて価値の創出を促進する運用モデルといえる。
5つの活動で価値を実現するSVC(サービスバリュー・チェーン)
組織によって需要が異なり、活動を通じて実現すべき価値が異なる。このため運用モデルは、必要とされる個々の活動に対して組織自身が設計しなければならない。SVCが提供するのは、インプットとアウトプット、および運用モデルを組織が組み立てる際に使うべき活動の定義である。インプットはSVSで登場した「需要」が該当する。これを基に「製品およびサービス」が提供され、その結果、SVCのアウトプットである「価値」が創造される(図1)。
SVCでは価値実現のために必要な活動を、「①エンゲージ」「②取得/構築」「③設計および移行」「④提供およびサポート」「⑤計画」「⑥改善」と定義する。これらを組織の事情に応じて組み合わせることで、価値創造に必要なバリューチェーンを定義する。
価値実現のための活動は必要最低限に絞るべきだが、同種のサービスであっても個々に運用した方が効率的であれば、複数種類(マルチモーダル)で考えてよい。例えば、社外ユーザーと社内ユーザーの問い合わせ対応サービスは、無理に1つのルールで運営するより、それぞれの特性に合わせて別々に提供した方が効率的だ。
顧客との接点に当たるのが「①エンゲージ」である。外部とのやりとりはすべてエンゲージを通じて実施する。エンゲージでやるべきことは幅広い。需要のある相手とコミュニケーションを無理なくやりとりできる関係を築き、必要に応じて需要を深掘りする。これには関係を維持する努力も含まれる。
どこまでやるかは価値と需要次第である。社内IT部門がユーザーからの様々な問い合わせをサポートする場合、あえて個別に活動を定義しない方法も可能である。仮に、新たな社外ユーザーを開拓しなければならなくなったとしよう。対象が既存の社内IT部門と異なるため、社外ユーザー向けのWebサイトやチャットボットを使った窓口運用の活動内容を新たに検討することになるだろう。
サービス提供に必要なあらゆるリソースを取りそろえるのが「②取得/構築」である。ITの場合、ハードウエア・ネットワーク・アプリケーションの調達や構築のみならず、クラウドサービス活用やベンダーを介した構築・運用要員の獲得も含まれる。製品およびサービスを利用可能なものとするには、後述する設計および移行、提供およびサポートとの密接な連携が必要となる。
製品およびサービスの構成を決定し、構築後にユーザーへ提供可能な状態まで持っていくのが「③設計および移行」だ。設計および移行は、利害関係者の期待に応えることに主眼が置かれている。そのため、期待値を機能面および非機能面で定義する設計段階と、それをユーザーへ展開する移行段階が一組みになる。設計のアウトプットを基に取得/構築で必要なリソースを取得し、それを基に移行を実施する。移行後は提供およびサポートに移る。
運用フェーズに入った製品およびサービスに対し、いつでも・どこでも合意した特性でユーザーが利用できるように運用保守を実施するのが「④提供およびサポート」だ。SVSを組み立てる際、そのサービス特有のサポート業務であっても、過剰な個別最適(サイロ化)にならないよう、既存プラクティスを最大限活用し、提供およびサポートのタスクとして作り込む。
製品/サービスを構築するための計画立案と、製品/サービスの継続的な改善をするのが「⑤計画」と「⑥改善」だ。計画段階では、サービスマネジメントの4つの側面からスケジュール・タスク・リソース計画・予算を検討する。インプットは、経営方針・機会/需要・継続的改善計画・設計フェーズ以後の活動状況フィードバックが該当する。アウトプットは、活動目的と意義・タスク単位の計画・設計および移行に関する複数案の検討・ポートフォリオ評価・顧客との契約要件定義が該当する。
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