IATA(国際航空運送協会)が発表した2022年9月の世界の航空需要によると、航空機を利用した旅行は世界各地で力強い回復傾向を続けている。総RPK*は前年同月比57.0%増で、パンデミック前の2019年同月比では73.8%(26.2%減)まで回復。この3カ月間は安定しているといえるだろう。通常9月は夏の時期と比べると需要が減る傾向にあるが、季節調整データよれば引き続き勢いを保っているとのことだ。
(*RPK:有償旅客が搭乗して飛行した総距離=revenue passenger kilometers:有償旅客数×輸送距離)
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、「経済的、地政学的な不確実性がある中でも、航空輸送の需要は回復基調を続けている。ただ、中国はゼロコロナ戦略により国境をほぼ閉鎖したまま、国内市場はジェットコースター並みに変化が激しく、9月は前年比で他の市場がプラス成長のなか、中国だけが46.4%減となった。アジア太平洋地域全体では前年同月比で464.8%の国際輸送量を記録したので対照的だ」と述べた。
欧州、北中南米の国際線は安定した回復ぶり
9月の国際線RPKは、世界平均で前年同月比122.2%増、2019年同月比では69.9%(30.1%減)だった。
国際線の主要路線は、アジア太平洋地域とその他の地域間の路線を除き、2019年同月比10〜20%減で、パンデミック前に近い水準で推移している。
アジア太平洋地域は前年同月比464.8%増と、4カ月連続で世界で最も高い成長率を記録しているが、2019年同月比では58.5%減で、他の地域から大きく後れをとっているままだ。
欧州地域はパンデミック前の78.4%まで回復、過去4カ月間の平均も77%と安定している。中南米地域も今年1月のRPKが2019年同月比52%だったのに対し、9月は78%と順調に回復。北米地域の国際線RPKはパンデミック前の89.4%にまで達し、国際線市場では引き続き最もいい成績を残している。中東とアフリカも回復が続いている。
好調が続く、アメリカやブラジルの国内線
9月の国内線RPKの世界平均は、前年同月比6.9%増で、2019年同月比では81.0%(19.0%減)だった。前月より4.7ポイント伸び率が減った。
国内市場の大半は引き続き好調で、パンデミック前の水準に近い水準で推移している。しかし、中国は規制強化により、国内旅客数は大幅に減少し、先月よりも22.7ポイント減らして2019年同月比60.5%減となった。
順調に回復しているアメリカの国内線は、2019年同月比0.4%増と、パンデミック以降初めてプラスに転じた。一方、ブラジルは前月より4.6ポイント減らして2019年同月比4.0%減としたが、この両市場はパンデミック前のレベルにほぼ戻ったといえるだろう。
日本の国内線は前月より9ポイント減らしているが、季節調整済み国内線RPKは、パンデミック以前の80%前後の水準で推移している。
求められる出入国プロセスのアップデート
ウォルシュ事務局長は、航空業界の今後について、次のように語る。
「旅行需要の高まりは、業界が燃料価格の高騰に対処する助けになっている。長期的にその需要を支えるために、旅行者の声に耳を傾けたい。パンデミックによってこの3年近く旅行は複雑な手続きを必要とした。IATAの2022年世界旅客調査(GPS)は、旅行者が簡素化と利便性を求めていることを示している。これは航空会社にとって重要なメッセージであると同時に、空港や政府にとっても同様だ。GPSによると、乗客の大多数は、国境での手続きにパスポートではなく、生体認証データを使用することを望んでいる。また、93%の乗客が、セキュリティチェックの迅速化ためのトラスティド・トラベラー・プログラム*に関心を持っている。出入国プロセスをアップデートすることは、混雑の緩和だけでなく、すべての人にとってよりよい体験を生み出すことになるだろう」
(*日本のトラスティド・トラベラー・プログラムについてはこちら)
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