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多様化する人間レンタルサービス…「レンタルなんもしない人」が語るリスクヘッジや利用者増加の背景 - ORICON NEWS

 かつて「おっさんレンタル」が話題になったが、人間のレンタルサービスは、年々増え続けている。家族や恋人、パートナーの代行を提供する会社はかねてから複数あったが、体重100キロ以上の人をレンタルできる「デブカリ」など、コンセプトも多様化している。なかでもユニークなのが、書籍化やドラマ化などで広く知られるようになった「レンタルなんもしない人」。サービス開始から4年弱、依頼者は「なんもしない」ことにどのような価値を見出しているのか、森本祥司さんに話を聞いた。

「役に立たない自分」に利用価値はあるのか? という実験から始まった

 生身の人間をレンタルできるサービスは、年々増え続おり、代行の枠を超えたユニークなコンセントのサービスも登場している。2018年6月よりTwitterで「なんもしない人(僕)を貸し出します」と依頼を受け付けている森本祥司さんは、人間レンタルサービスのなかでも、“なんもしない”というコンセントで異彩を放つ。レンタル料は何度か改定されているが、現在は1件1万円と交通費、飲食代等の諸経費となっている。サービス提供から4年経ち、これまで受けた依頼は「ちゃんと数えていないけれど、4000件くらい」とのことで需要は確実にあるようだ。

「初めてTwitterで告知をした翌日には依頼がありました。ありがたいことに、いまもほぼ毎日のようにいろんな依頼が来ていて、皆さん上手に僕を活用してくれているなと感じています」

 そもそもサービス開始当初、どの程度の需要を見込んでいたのだろうか。

「もともと需要があると思って始めたわけじゃないんです。いろいろな仕事をしてきた結果、自分は働くことが向いてないとわかった。それであれば、『役に立たない、なんもできない自分』には利用価値があるのか? という実験的な気持ちもありました」

 依頼は花見の場所取りや行列に並ぶ、レストランへの同行、話を聞いて欲しいなど、森本さん自身はあくまで「なんもしない」ことを前提に受け付けている。

「『なんもしない』の定義は僕の主観で決めています。『なんもしないと言いながら、息をしているじゃないか』と言われても困るので(苦笑)。これは違うなとか嫌だな思った依頼は断るし、簡単な受け答え程度はしますが、僕の方から能動的に関わることはしないので、ストレスを感じることもないですね」

それぞれの事情や背景に踏み込まずシンプルに依頼を遂行 心理的ハードルを下げる要因にも

 2020年4月期には増田貴久の主演でドラマ化もされた『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系)。それ以前にもドキュメンタリー番組などに取り上げられることも多く、現代人は「なんもしない人」にどのような価値を見出しているのか? といった関心は高い。

「『東京から大阪に引っ越すので新幹線のホームでお見送りして欲しい』や『離婚届の提出に同行して欲しい』など、人生の転機のようなものに立ち会うこともときどきあります。なぜ友だちや知り合いではなく、僕に依頼をするのかは聞いていません。『ホームでお見送り』の依頼者は、ドラマや映画でよくあるようなシーンを経験してみたいといった願望がありました。ただそれを友だちや知り合いに頼むと、しんみりしてしまいそうで嫌だったそうです」

 さまざまな理由で人間をレンタルする人や、そうしたサービスも増えているが、「依頼者を一括りにするのも失礼な感じもしますが、たぶん相手にも自分にも“心理的コスト”をかけたくないという気遣いが細やかな人が多いのかなと思います」と推測する。

 森本さんは依頼者の事情や背景に踏み込むことなく、シンプルに依頼を遂行する。そうしたポリシーも依頼する側の心理的ハードルを下げている要因かもしれない。

「特に配慮しているわけではなく、単純に僕は人に興味がないんです。だから自然と立ち入らない。なかには300回くらい利用してくださるリピーターの方もいて、『300回も一緒に過ごせばもはや知り合いなのでは?』と言われますが、あくまで依頼者として接していますし、その方の普段のことは、ほとんど知らないです」

 ちなみに森本さんは既婚者であることを公表している。依頼者と一対一で時間を過ごすことも多いが、うっかり恋愛感情を持つことは「ない」と断言する。

「依頼者も僕が既婚者であることをわかっているはずなので、逸脱した雰囲気になることはないです。万が一そういう方がいたとしても、依頼する際のDMの文面でなんとなくわかるものなので、最初から依頼を受けないと思います」

リスクヘッジも“自己責任”…個人営業だからこそ危機管理が可能なことも

 「レンタルなんもしない人」は多くの人間レンタルサービスとは異なり、法人化せず個人で活動している。依頼はTwitterのDMで受け付けており、対面するまで相手の素性はわからないが、リスクヘッジもすべて“自己責任”だ。企業のサポートもないため、より一層気をつける必要もあるように感じるが、実際にはどうなのだろうか。

「なかには確かにちょっと心配な方からのコンタクトもあります。ただ僕はわりとネット歴が長いので、DMの言葉遣いややり取りの間で危なそうだなと感じたらスルーしたり、お断りしています。むしろ会社ではなく個人でやっているからこそ、その辺のリスクヘッジもできるんじゃないかなと思っています」

 これまで危険な目に遭ったこともないという。

「そもそも僕はリスクに対する意識がわりと低いのかもしれません。いろいろやったあげく『なんもしない』ことしか残ってなかった。この活動をしているなかで死ぬことがあったとしても、そういう運命だったんだなと受け入れる気持ちはあります。もちろん死にたいわけではありません。安全に仕事を続けたいからこそ、ちゃんとリスクからは逃げているんです」

 メディアで多く取り上げられたこともあってか、近年は「レンタルなんもしない人」の亜流も現れている。多くの仕事が続かなかったという森本さんだが、この仕事に向き不向きはあるのだろうか。

「友達との関係に重きを置いている人は向かないかもしれないですね。僕に関していえば、友達は少ないですし、会社に勤めていた頃は同僚と話すことがすごくしんどかった。だけど知らない人とはぜんぜん緊張せずに話ができる。深くて濃い繋がりよりも、緩やかな関係性のほうが居心地が良いという人なら、この仕事は向いていると思います」

 なお、「レンタルなんもしない人」をパクるのはぜんぜん構わないとのこと。

「ただ、せめて名前や告知の文面は、自分で考えて欲しいです。同じTwitterアカウントでやるのは本当に困りますね。僕と勘違いして模倣した方に依頼して、何らかの事件が起きてしまったら嫌ですし、怖いですよね」

 「レンタルなんもしない人」のTwitterには、信頼と実績の証として認証マークがついているので、依頼する際にはぜひ確認してほしい。

(文/児玉澄子)

◆「レンタルなんもしない人」Twitterはこちら(外部サイト)

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