[サンフランシスコ 27日 ロイター] - 何カ月も待たされた末、ついにテスラの新車を手に入れたオーナーには、この2年間の大半を通じて、めったにない選択肢が与えられていた。真新しい電気自動車(EV)をそのまま保有するか、待ちきれない誰かに購入価格以上で売って利益を得るかだ。
だが、「テスラ転がし」の期限は迫っている。すでに値引きが行われている新車価格にとっても潜在的な脅威だ。
ロイターが入手した業界データによれば、テスラの中古車価格は他のメーカーよりも急速に下落している。クリーンエネルギーの象徴でもあるテスラ製EVが、売れないままディーラーの駐車場で眠っている期間も長くなっている。
テスラ製中古車の平均価格は、2022年11月時点で5万5754ドル(約748万円)。ピークだった7月の6万7297ドルに比べると17%の下落だ。自動車関連調査会社エドマンズのデータによれば、この期間の中古車市場全体の下落幅は4%にとどまった。
さらに、11月時点でのテスラ製中古車のディーラー在庫期間は平均50日。これに対し、中古車市場全体では38日となっている。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響によるガソリン価格の高騰は、市場では数少ない長距離EVであるテスラ車への需要を加速させた。テスラ自身も他社より早いペースで価格を引き上げ、利益率を高めていった。テスラの一部車種を新たに入手した顧客は、好調な市場のおかげで、まだ新しい自分のテスラ車を売却して利益を確保し、また新車を注文する機会を得た。これがさらにテスラ製新車の需要を押し上げた。
だが今や、ガソリン価格は安定し、金利は上昇。テスラ自身の生産拡大やEV市場の競争激化も相まって、テスラ製中古車の価格は市場全体よりも早いペースで下落し、同社製の新車価格にも波及している。
テスラは12月、年内に納車される「モデルY」と「モデル3」について、米国市場における値下げ幅を2倍の7500ドルに増やし、需要減に対する投資家の不安をあおった。
アナリストらは、8月に販売されたテスラ製中古車の3分の1近くは2022年モデルであり、元々の購入者が転売益を狙っていたことがうかがわれると話している。エドマンズによれば、他ブランドの中古車のうち2022年モデルの比率は約5%だ。
中古車販売サイトのアイシーカーズ・ドット・コム(iSeeCars.com)でエグゼクティブ・アナリストを務めるカール・ブラウアー氏は「この2年間は多くの場合、購入時よりも高い金額でテスラを売ることができたが、今は無理だ」と指摘。「それが、テスラ製新車の需要減につながっている」という。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は12月22日、「急激な利下げ」で新・中古車の価格が上昇したものの、同社としては販売台数の伸びを維持するため価格を引き下げ、結果として利益率が低下する可能性があると述べた。
テスラはメディア向け広報部門を解散しており、ロイターがメールで送った問い合わせに対する回答はなかった。
実際には、問題を抱えているのはテスラだけではない。
グローバル規模で自動車生産が苦境を迎えたことで、米国の中古車市場は活況を呈したものの、あるアナリストの言葉を借りれば、今や「中古車不況」に直面している。先週、中古車販売企業カーマックスは第3・四半期について86%の減益を発表した。
とはいえ、不調が目立つのはやはりテスラだ。エドマンズ・ドット・コムのアイバン・ドゥルーリー氏によると「これまで長いこと、基本的には中古EVと言えばテスラしかなかった」ため、他のブランドと比べて価格が高騰した要因が強く働いたという。
だが、EV専門の調査会社リカレントでコンテンツマーケティング担当マネジャーを務めるリズ・ナジマン氏は、米フォードの電動ピックアップトラック「F─150ライトニング」や韓国・現代自動車の「アイオニック5」といったEVが市場に登場し、大きな話題を呼んでいると指摘する。
ソフトウェア技術者のグレッグ・プロフィットさんは2021年、テスラ「モデルY」の新車を4万9000ドルで購入。3カ月後、1万2000ドル上乗せした価格で手放した。彼はまた新車を注文したものの、結局、中古のテスラを値引き価格で購入した。
「経済状況を考えると、新車を購入するのはちょっと怖い」とプロフィットさん。新たに発表された7500ドルの値下げについても、需要を維持するには小幅すぎるだろうと話した。
(Hyunjoo Jin記者、Nivedita Balu記者 翻訳:エァクレーレン)
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