円安や物価高に対し、値上がりしても購入してもらえる価値をいかに生み出すか。そんな新たな価値を提案したのが、ローソンの実験型店舗「グリーンローソン」(東京・豊島)だ。コンビニの要である便利さを軸から外し、持続可能な店舗づくりを強く押し出した。消費者と二人三脚で“未来の店舗”の完成を目指す。
食用油が3割高、マヨネーズが2割高、食パンが1.5割高――。2022年11月の消費者物価指数(CPI)の前年比からは、メーカーの値上げが小売店の店頭価格に影響を及ぼす様子が見て取れる。
身近なコンビニでもその動きは顕著だ。ローソンは22年5月に、ホットスナックの「からあげクン」を216円から238円(税込み、以下同)に。22年8月には、いれたてコーヒー「マチカフェ」の一部商品を値上げし、コーヒー(S)は100円から110円にした。
値上げ対策と聞くと価格戦略のイメージがあるが、値上がりしても購入してもらえる価値をいかに生み出すか、という視点も重要になる。その視点を強く押し出したのが、ローソンが22年11月にオープンした「グリーンローソン」だ。ローソンが目指す、持続可能な店舗づくりの実験型店舗。山手線の大塚駅から徒歩5分。都営住宅やタワーマンションなどが立ち並び、子供からシニアまで幅広い年齢層が行き交うビルの1階に出店した。
既存店との違いは、店舗の至るところに見られる。上の写真のように、入り口の自動ドアの横には、ローソンの店員に扮(ふん)したアバター(分身)が映る大きなモニターが設置され、入店時にアバターに「いらっしゃいませ」と声をかけられた。有人のレジカウンターは設置されておらず、会計はセルフレジのみ。壁にはモバイルオーダーのQRコードが設置されるなど、既存店とは一線を画す工夫が施される。
グリーンローソンの狙いは“見極め”
「グリーンローソンの目的は、ローソンの環境意識、持続可能な店舗運営への方向性が、利用者にどの程度受け入れられるかを調査すること」と話すのは、ローソン インキュベーションカンパニー事業開発部長の吉田泰治氏。コンビニ業界は、その名の通り“便利さ”を追求して市場を拡大してきた。その一方で、24時間営業による二酸化炭素(CO2)排出の環境負荷、廃棄による食品ロス、プラスチックごみの増加、人手不足といった社会課題も引き起こし、「もう避けて通れないところまで来ていた」と吉田氏は話す。
完全セルフレジにして店員のオペレーションを効率化したり、カトラリーを完全廃止して環境に配慮したり。利用者の便利さを多少犠牲にしても、サステナブル(持続可能)な価値が受け入れられるのではないかという仮説を立て、「便利さとサステナブルな価値のバランスを見極める」ことが今回の実験の趣旨。「コンビニエンス=便利」という意味から考えると、いわば“脱コンビニ”を目指す取り組みと言える。
便利さとサステナブルな価値を両立させたければ、セルフレジやモバイルオーダーといったコンテンツを1つずつ試したほうが消費者の抵抗感が少ないように思える。「社内でも反発を心配する声があったが、ローソンが目指す姿を示し、利用者とのコミュニケーションの中で改善していくほうが理想に近づきやすいと判断した。グリーンローソンは、今実験できるコンテンツをすべて詰め込んだ、かなり踏み込んだ店舗」(吉田氏)。コンテンツを小出しにせず、すべて出し尽くしたことが大きな挑戦といえる。
ローソン初“4つの挑戦”を全部入り
実際に既存店とはどこが違うのか。ローソン初の試みを4つ見ていこう。
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