年末年始の日本の航空需要は国内線で新型コロナウイルス禍前に迫る水準まで回復を見せ、国内の観光地は活況を見せたものの、国際線の需要回復は限定的だった。背景の1つが2019年に訪日客数が1000万人近くにも上り、全体の3割を占めた中国の徹底的な新型コロナへの防疫体制だ。ただ、そんな「ゼロコロナ」政策も終わりを告げた。間近には春節(旧正月)の大型連休も迫る。一方で中国の「開国」による日本の観光業界への恩恵は限定的との見方が大勢だ。なぜか。
22年12月29日の羽田空港第2ターミナル。同ターミナルを使うANAの国内線下り便の利用はこの日ピークとなり、旅客数は14.5万人に達したという。一方で国際線の需要回復は限定的だ(写真:AFP/アフロ)
「日本人の出国がこんなにも伸びないとは」。こう話すのは国内航空大手の関係者だ。行動制限がなかったこの年末年始、国内線は好調だった。日本航空(JAL)の年末年始期間(22年12月28日~23年1月5日)の国内線旅客数は19~20年の同期に比べ9割弱まで回復。全日本空輸(ANA)も81.3%まで戻った。一方で両社の国際線旅客数は5割前後の回復にとどまる。
日ごとの国際線搭乗率の推移を見ると、コロナ禍前との客体の変化がわかる。コロナ禍前であれば、年末年始期間の序盤に日本を出発する便の搭乗率がピークに達し、終盤に日本到着便の利用が最盛期を迎えていた。日本人による海外旅行が年末年始の需要を支えてきたからだ。
ただ、今回の年末年始は違う。ANAの場合、日本発の便の利用のピークは1月5日。日本着の便の搭乗率が期間中で最も高くなったのは12月29日だった。JALも日本発の利用ピークは1月2~3日だ。日本発の海外旅行需要は円安や燃油高による実質的な航空券価格の高騰で水際対策が緩和されてもなお回復が鈍い。一方で円安により拍車のかかった「安いニッポン」を求める外国人の訪日需要は堅調だ。その結果、コロナ禍前と正反対の需要の推移が生まれた。
国際線復活の鍵は中国路線
需要回復は路線ごとに濃淡がある。北米路線の年末年始期間中の旅客数はJALがコロナ禍前の19~20年に比べ98%、ANAは約8割まで回復し、搭乗率は両社とも85%前後まで高まった。JALの東南アジア・オセアニア路線、ANAのアジア(中国本土を除く)・オセアニア路線の搭乗率も84~89%となっている。アジア・北米間を中心とした3国間の移動需要もやはり底堅そうだ。
一方、両社とも搭乗率が3割台に沈んだのが中国本土と日本を結ぶ路線だった。座席の供給量を両社とも19~20年に比べ1割ほどに落としたにもかかわらず、旅客数が19~20年比の5~6%までしか回復していない。新型コロナの感染拡大を徹底的に封じ込める、中国のいわゆる「ゼロコロナ」政策によって日中間の人の往来は依然低調だった。
こう見ると、国際線事業の復活の鍵は19年に訪日客数が1000万人近くを数えた中国と日本を結ぶ路線の需要回復にあると分かる。
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