ロンドンの充電ステーションにはひっきりなしに電気自動車(EV)が来場する
ロシアのウクライナ侵攻は、世界の産業界に様々な影響を及ぼしている。自動車産業においては、電気自動車(EV)シフトへの影響が大きな焦点になった。
侵攻直後から2つの議論があった。1つは欧州などでロシア産の原油調達が滞り、ガソリンや軽油の価格が急上昇。それを避けるために、エンジン車ではなく、電気で走行するEVの需要が高まるとみられた。実際、2022年春の欧州ではガソリン1リットルの価格が2ユーロを超え、EV購入の動機が高まった。
一方、供給制約が広がるとの見通しから、EV向けリチウムイオン電池の原材料であるリチウムやニッケル、コバルトの価格が急騰した。こうした状況を受け、米テスラは22年末までの1年半で、主力の「モデルY」の最廉価グレードを約25%値上げした。
結果として、22年はEV用電池価格が前年に比べ上昇した。米ブルームバーグNEFによると、22年の世界のリチウムイオン電池パックの平均価格が、前年比7%増の1キロワット時当たり151ドルになった。13年には同732ドルだった価格が下がり続けていたが、22年に初めて上昇した。
米テスラは2022年に世界で131万台のEVを販売した
それでも、22年は世界的にEVの販売は伸びた。中国の販売台数は21年比82%増の536万台で、欧州主要18カ国のEV販売台数は21年比に比べ29%増の153万台。最大手のテスラは、値上げをしても22年の世界販売台数が131万台と前年より40%伸びた。
ロンドンではテスラのEVを見かけることが多い
販売増の要因は主に2つある。1つは、補助金による後押しだ。ドイツやフランスではEVを購入する際に多額の補助金を活用できた。例えばドイツは、4万ユーロ以下のEVに対して最大で9000ユーロの補助があり、フランスは6000ユーロの補助があった。
2つ目はリースの比率が高い点だ。欧州では社用車向けなどにリースで供給するクルマが多い。リース会社はCO2(二酸化炭素)排出量を下げるために、積極的にEVを購入しているケースがある。エンジン車の販売やリースの価格が上がっており、EVとの差が小さくなっている。
リース大手であるオランダのリースプランは毎年、自動車の購入や走行、整備などの費用を合計した「総保有コスト(TCO)」を算出している。それによると、電気料金に比べ自動車用燃料の価格が上昇したため、ドイツやフランスなど大半の国で、EVのTCOはガソリン車やディーゼル車を下回った。また大半の国でテスラのEV「モデルY」は、独メルセデスのガソリン車「Cクラス」よりTCOが低かった。
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