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通販需要だけじゃない! いま「大型物流センター」があちこちで ... - au Webポータル

工場跡地に大型物流施設を誘致

大型物流センター(画像:写真AC)

大型物流センター(画像:写真AC)

 全国で大型物流センターの建設ラッシュが続いている。

 郊外の幹線道路沿いや高速道路のインターチェンジ近くでは巨大な倉庫が林立している光景も見られる。また、都市部でも工場跡地などに大型物流施設を誘致することが増えている。

 なぜ、それほど大型物流センターが増えているのか。

 これは「需要があるから」にほかならない。小売りや卸売の業界ではEC(電子商取引)の市場が拡大している。アマゾンや楽天に代表されるECモールはもちろん、個々の企業でも独自にネット販売を展開する動きが加速している。

 消費者個人向けのみならず、企業間の商取引においてもリアル店舗での販売や営業マンが顧客を訪問して注文を取ってくるといった従来型の販売スタイルにプラスして、ECで商品を販売するところが増えているのである。

センター増による販売拠点の変化

国内電子商取引市場規模。BtoCおよびBtoB(画像:経済産業省)

国内電子商取引市場規模。BtoCおよびBtoB(画像:経済産業省)

 2022年8月に経済産業省が発表した、2021年の国内消費者向けのEC市場規模は前年比7.35%増の20.7兆円、企業間取引のEC市場は2020年で前年比11.3%増の372.7兆円となっている。当面、ECの市場はその規模が拡大していくことが見込まれる。

 ECでの販売が増えれば、それに対応するための物流センターが増えるのは必然だ。販売拠点が

「店舗や営業所から、物流センターに変わる」

のである。

 またECの特性として、

「店舗に置けない商品でも販売できる」

というのがある。店舗の面積は限られており、そこにありとあらゆる商品を陳列することはできない。どうしても売れる品目に限って販売せざるを得ない。

 一方、ECでは物流センターで保管スペースが確保できれば、販売する品目を無限に広げることができる。いわゆるロングテール戦略(売れ数が少ない商品も幅広く品ぞろえすることで、トータルの売り上げを増加させる戦略)を取ることができる。

 そのため、ECに対応するための物流センターを新設する企業が増えているのだ。

サプライチェーン混乱も要因

物販系分野のBtoC EC市場規模(画像:経済産業省)

物販系分野のBtoC EC市場規模(画像:経済産業省)

 また、ECの多くは宅配便を利用して届け先まで配送する。

 宅配便の運賃は、配送先までの距離が短ければその分安くなる。従って、首都圏エリアや名古屋周辺、関西エリア、福岡周辺など、国内の大消費地向けに複数のEC拠点を設ける企業も多い。ECでの販売増に伴い、ひとつの企業でも

「複数の物流拠点を設けるようになる」

のである。

 さらに、物流センターの需要が増加している理由として、サプライチェーンが混乱したことの側面もある。

 新型コロナウイルスの影響によって海外からの輸入コンテナのリードタイム(注文してから納品されるまでの時間)が長くなり、またそれよって海上コンテナの運賃が大幅に上昇した。

 ほかにも、半導体不足やウクライナ情勢によって調達しなければならないものが不足するなど、サプライチェーンにひずみが生じたのである。

 その結果、企業では在庫を増やす動きが加速した。

ジャストインタイムの崩壊

サービス系分野のBtoC ECの市場規模(画像:経済産業省)

サービス系分野のBtoC ECの市場規模(画像:経済産業省)

 従来はジャストインタイム(必要なものを、必要な量だけ、必要なタイミングで調達すること)を実現させ、在庫の極小化を目指す企業が多かった。

 しかし、サプライチェーンの混乱によって、原材料の在庫不足、ひいては販売したいものの欠品が生じることとなった。何とか欠品を防ごうと、多くの企業で在庫を積み増す動きが取られた。

 在庫が増えるということは、それを

「保管するためのスペース」

も増やす必要がある。結果として物流センターの需要がさらに拡大しているのである。

近年進む大型物流センターの快適化

千葉県船橋市にある現代的な大型物流センター「MFLP船橋III」(画像奥)、「MFLP船橋・&GATE」(画像:三井不動産)

千葉県船橋市にある現代的な大型物流センター「MFLP船橋III」(画像奥)、「MFLP船橋・&GATE」(画像:三井不動産)

 新たな大型物流センターの増加を、そこで働く従業員の観点から見てみると、喜ばしい面は多い。近年建設されている大型物流センターは、なかの施設が非常に充実している。休憩室はおしゃれなカフェテリアのような仕様になっており、とても快適に過ごすことができる。

 当然、トイレや洗面台もきれいである。施設によっては従業員や地域住民向けの託児所を完備しているところもある。

 一昔前の物流倉庫といえば、「暗い」「汚い」「危険」というイメージがあったかもしれない。物流センターは日差しが入って保管品が劣化することを防ぐため、窓は最小限しか設けられていない。実際、照明が暗ければ昼間であってもセンター内全体が暗くなってしまうのだ。また入荷口や出荷口から風が入ってきてほこりがたまることもある。

 働く立場からすると、誰もが快適な環境で仕事をしたいと思うのは当然である。物流センターは、庫内の冷暖房が完備されているところはそれほど多くない。常温の物流センターでは、大半は夏は暑く、冬は寒い環境にある。庫内の作業現場がそのような環境であるのは致し方ないとしても、せめて休憩所やトイレは快適であってほしいとは、誰もが願うことだ。

人材不足がセンター環境を変化

千葉県船橋市にある現代的な大型物流センター「MFLP船橋III」(画像奥)、「MFLP船橋・&GATE」(画像:三井不動産)

千葉県船橋市にある現代的な大型物流センター「MFLP船橋III」(画像奥)、「MFLP船橋・&GATE」(画像:三井不動産)

 以前より、物流センターでは作業に従事する人手の不足が生じている。

 パート社員やアルバイトを募集しても応募が少なく、やむを得ず派遣会社に人材の派遣を依頼するところが多かった。派遣会社でも派遣できる人員に限りがあり、登録者ひとりひとりに電話を掛けて何とかかき集めているという状況も見られた。

 一時期、新型コロナウイルスで小売店や飲食店が休業や時短営業を強いられていたときは、物流センターで働くことを希望するパート社員や派遣社員が増加したが、経済活動が正常化に向かうと、再び多くの物流センターで人手不足が生じている。

 省力化を図るために搬送ロボットや自動でピッキングを行う機器などを導入しているところもあるが、それらの設備を入れることができる企業は限られる。

 必要な人手を確保するうえでも「快適に働ける」ことは重要なファクターとなる。寒い冬に冷たい便座に腰掛けなければならなかったり、作業で汚れた手を洗う際に冷たい水しか出なかったりするところと、きれいなトイレや温水が出る洗面所が完備されているところでは、どちらが働きたいと思うかはいうまでもないであろう。

 EC化への対応も含め、古くて環境が良くない物流センターから、

「広いスペースが確保できて快適な施設が整っている」

ところに移ろうとする企業はこれからも増えていくであろう。

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