コロナ禍を経て急速に進展するDX環境下において、BtoB企業のマーケティングにも変革が求められている。さまざまな環境変化のもと、デジタルを成果に結びつけることこそがDXの深化だ。顧客接点の強化を効率化し、付加価値を創出するために、BtoB企業のマーケティング組織、営業組織が目指すべきものは何か。慶應義塾大学大学院ビジネス・スクール教授の余田拓郎氏が、方向性を指し示す。
※本コンテンツは、2022年7月1日(金)に開催されたJBpress/Japan Innovation Review主催「第5回 Marketing & Sales Innovation Forum」の基調講演「DX環境下のBtoBマーケティングを展望する」の内容を採録したものです。
DX環境下における営業環境の変化とプロモーション戦略の転換
コロナ禍で加速した環境変化は、顧客接点などさまざまな制約をもたらすとともに、これまでリーチできなかった新規の顧客を獲得するチャンスも運んできた。そんなDX環境下のBtoBマーケティングを考える上で、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクール教授の余田拓郎氏がまず指摘するのは「BtoBマーケティングにおいて、人的販売への依存度が高く、広告に対しての期待は高くない」という事実だ。
一方、環境の変化として余田氏が挙げるのが「営業環境の変化」と「プロモーション環境の変化」だ。グローバル化によって日本企業の輸出先が多様になり、需要が分散しつつある。輸出額は、特にモノの取引において右肩上がりで拡大している。そしてプロモーション戦略の転換期が来ているという。
マーケティングには2つのタイプのプロモーション戦略がある。営業マンの説明販売や推奨販売に重点を置くプッシュ型プロモーションと、商品力と広告に重点が置かれ、ブランド力やコミュニケーションチャネルが重要になるプル型プロモーションだ。これまで、日本はプッシュ型、欧米はプル型中心のプロモーションだった。
「もちろん、どちらか一方ではなく、プロモーションスタイルはセグメントごとに特定して展開されてきました。しかし今、デジタル環境下において、情報の買い手と売り手の情報の非対称性が希薄化し、購買行動が大きく変わりました。対面コミュニケーションがマストではなくなってきている。買い手側が自分の力で選ぶ可能性が高くなります。人的販売への依存度を含め、ポートフォリオを変更すべき時期に来ています」
では、何をもとにプッシュ型とプル型を決定するべきか。まず、人的コミュニケーションの必要性だ。製品仕様やスペックにおいて売り手側の営業マンが、どの程度サポートする必要があるのか。次にコミュニケーションコスト。ウェブ上でのコミュニケーションコストは低下傾向にある。そして、営業利益率も視野に入れていくべきだという。
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