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2023年9月1日、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が第4世代の超高速DRAM技術「HBM†3」を使ったメモリーを米NVIDIA(エヌビディア)に納品することが決まったと、韓国メディアが一斉に報じた。同サンプル品の性能テストは完了しており、契約手続きが終わり次第、早ければ10月から本格的に納品を開始する。エヌビディアの「H100 GPU」に搭載される見込みという。このニュースに株式市場が敏感に反応した。サムスン電子の株価は同年8月31日の終値6万6900ウォンから同年9月1日には7万1000ウォンへと約6%アップとなり、その後も7万ウォン台を維持している。
†HBM=High Bandwidth Memory。広帯域幅メモリー。DRAMのダイを積層(垂直に積み上げ)して、全体のデータ転送速度を高速・広帯域化するメモリー技術。
HBMは韓国SK Hynix(SKハイニックス)が開発で先行し市場をリードしている。2022年6月にはHBM3の量産を開始、エヌビディアに納品していた。この市場にサムスン電子が参入し、SKハイニックスを追いかけるかのようにシェアを獲得していく構図になった。今回、エヌビディアへの納品が決まったことでサムスン電子のHBMとメモリー事業の成長が見込まれて株価が上がっている。
スマートフォンの需要鈍化などでメモリー製品の不況が続く中、AI(人工知能)向けメモリーの需要が立ち上がり伸びた。特にHBMの市場拡大に懸けるサムスン電子とSKハイニックスの期待は大きい。HBMはより⾼度の技術が必要で、価格も⾼くできる付加価値ビジネスである。これまではHBMで優位に立つSKハイニックスが高く評価され、エヌビディアとの取引により売り上げが伸び、株価も上がり続けていた。エヌビディアは生成系AIブームを支えるサーバー向けGPUの需要の高まりを受けて、予想を上回る利益を出している。そんなエヌビディアにサムスン電子もHBM3を納品するようになったことで、メモリー事業の収益が回復に向かう可能性が高い。
サムスン電子はSKハイニックスと差別化するために、GPUとHBM3をパッケージングするサービスを提供しようとしている。現在、エヌビディアは台湾TSMC(台湾積体電路製造)にパッケージングを委託している。サムスン電子がHBMの設計から生産、パッケージングまで一気通貫の生産体制を整えたことは他社にはない同社だけの強みとなる。韓国証券業界はTSMCが抱えきれないほど需要があるためサムスン電子にもパッケージングを任せる可能性を踏まえ、HBM3とパッケージングまで提供することでサムスン電子が2023年に4~5社だったAI半導体関連新規顧客を2024年には10社前後にまで増やせるだろうと展望した。
サムスン電子は同日、12nmプロセスによる業界最大容量のメモリー「32Gb DDR5 DRAM」の開発も発表した。生成系AIが日常的に使われる将来にわたって、必要となる大容量のDRAM需要に対応できることを示した格好になった。2023年末までに量産を開始する計画で、省エネ・大容量DRAMのニーズが高いデータセンターなどIT企業に最適なDRAMであると技術力をアピールした。
サムスン電子の猛追に対し、SKハイニックスも負けてはいない。同社は2023年8月21日、世界初となるAI向け第5世代HBM(HBM3E)の開発に成功したと発表した。既にエヌビディアなどの顧客へサンプル提供中という。顧客の性能テストを経て2024年に量産を始める。SKハイニックスのHBM3Eは1秒当たり最大1.15Tバイトのデータを処理できる。これは第4世代に比べて40%ほど高速化している。放熱性能は第4世代より約10%向上した。一方のサムスン電子は2023年後半にも第5世代HBM(HBM3P)を公開する計画を発表済みである。
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