シンガポール貿易産業省(MTI)は11月22日、2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(経済成長率)が前年同期比1.1%だったと発表した。10月に発表した速報値(0.7%)から上方修正した(2023年10月24日記事参照)。季節調整済み前期比は1.4%で、速報値(1.0%)から上方修正した。
2023年通年のGDP成長率見通しについては、第2四半期の時点では「0.5~1.5%」と予測していた(2023年8月15日記事参照)が、今回「1.0%前後」へと予測値の幅を絞り込んだ。MTIは主要国・部門の経済について、「米国やユーロ圏では金融引き締めの累積した影響により2023年の残り期間は成長が緩やかになる」「中国経済の成長は、不動産セクターと国内消費の低迷が続く中、さらに鈍化する可能性が高く、外需も伸び悩んでいる」「世界的なエレクトロニクス部門の不況は底打ちの兆しがあるが、在庫が依然として高水準にあるため、需要は低迷が続いている」と述べた。その上で予測の理由として、「外需が低迷していることから、シンガポールの製造業および精密工学、海運業などの貿易関連産業は2023年の残り期間は低迷が続く」ものの、「航空便での旅行とインバウンド観光の回復が続いており、航空・観光関連産業の成長を支えると期待される」などと述べた。
2024年については、通年で「1.0~3.0%」の成長と予測する。MTIは理由として、「米国やユーロ圏などの主要国・地域で、2024年前半は金融引き締めの影響が続くが、同年後半に回復する」などとして、エレクトロニクス部門への需要回復が進むことから、シンガポールの製造業・貿易関連産業では成長が加速するなどと述べている。世界経済の下振れリスクについては、先進国での金融引き締めの長期化の可能性や、イスラエル・ハマス間の衝突およびウクライナ紛争の激化・拡大が供給と価格の混乱を生む可能性に触れ、需要、企業・消費者のマインドへの悪影響となり、経済成長と貿易の減速につながるおそれがあるとした。
2023年通年の貿易見通しを下方修正、2024年は回復見込む
MTI管轄下のシンガポール企業庁(Enterprise SG)が同日発表した2023年第3四半期の貿易統計によると、財貿易総額は前年同期比で16.4%減少したが、前期(18.7%減)からは減少幅が縮小した。季節調整済み前期比では3.2%増加した。非石油部門の地場輸出額(NODX、注)は前年同期比で18.8%減少し、前期(13.4%減)よりも減少幅が拡大した。エレクトロニクス製品(20.0%減)と非エレクトロニクス製品(18.5%減)の双方で減少した。2023年通年の財貿易総額ならびにNODXの見通しについては、8月時点の予測(いずれも「10.0~9.0%減少」)から、財貿易総額については「10.0%程度減少」に予測範囲を絞り込んだほか、NODXについては「12.5~12.0%減少」に予測を引き下げた。なお、2024年通年については、「4.0~6.0%増加」ならびに「2.0~4.0%増加」を見込んでいる。
(注)自国生産による財輸出で、再輸出を除く。
(糸川更恵)
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