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コラム:経済モデル転換目指す中国、不動産不況でも資源需要衰えず - ロイター (Reuters Japan)

コラム:経済モデル転換目指す中国、不動産不況でも資源需要衰えず

 11月28日、 中国の習近平国家主席は、不動産に基礎に借金で成長を押し上げる経済モデルからの脱却を図ろうとしている。写真は9月、中国陝西省銅川で、未完成の集合住宅の屋内に立つ購入者の男性(2023年 ロイター/Tingshu Wang)

[シンガポール 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の習近平国家主席は、不動産に基礎に借金で成長を押し上げる経済モデルからの脱却を図ろうとしている。この変革が世界第2位の経済大国、中国の成長を冷え込ませると投資家は懸念しているが、中国の旺盛な資源需要を支える構造的変化を見過ごしてはならない。

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3000億ドル規模の銅市場を例に取ろう。中国は世界で取引される銅の60%以上を輸入している。あるコモディティートレーダーは、「銅イコール不動産、不動産イコール中国という考え方が一般的だ。そして中国の不動産が下がっているから銅も下がるに違いない、と続く」と語る。

事実、中国の国内総生産(GDP)の4分の1を占め、建設から家電製品まで約40の業種を支える不動産セクターは、まだ底を打っていない。着工面積は昨年既に落ち込んでいたが、今年10月までの1年間でさらに23%も縮小した。

米国との技術競争から対ロシア関係、台湾をめぐる立ち位置に至るまで、西側諸国との地政学的な亀裂も相まって、投資家は中国の幅広い資産に冷ややかな目を向けている。中国の外国直接投資は7―9月、四半期ベースで初めて赤字(118億ドル)を記録した。

しかし、2つの微妙な傾向が状況を複雑にしている。第1に、習氏は住宅バブルに気をもむ一方で、依然として社会不安は何としても防ぎたいと考えている。一般の中国人は財産の70%を不動産として蓄えているからだ。

中国恒大集団(3333.HK)のように経営難に陥った不動産開発業者が、販売済みアパートの建設を完工するよう習氏が望むのはこのためだ。中国は10月時点で約82億平方メートル相当の住宅が建設途上にある。一般的な3LDKの住宅にして約8000万戸だ。銅は建築後期に使用される傾向があるため、不動産危機から生じる潜在的な需要の損失は、建設開始時に多く使用される鉄鉱石ほど深刻ではないと思われる。

第2に、中国経済のけん引役を不動産からグリーン投資やハイテク産業にシフトさせるという習氏の使命は加速している。10月31日に開いた中国共産党「中央金融工作会議」では、これらの投資にもっと多くの資金を投入することが明示された。つまり、国有銀行は電気自動車(EV)、風力・太陽光エネルギー、人工知能(AI)、最先端半導体への融資を増やすよう指導されることになるだろう。これらの産業は銅やその他の金属を必要とする。

このように、中国の「新経済」は旧来の成長エンジンに比べればまだ小さいものの、その台頭はコモディティーに対する新たな需要も生み出している。例えば銅は、電気モーターやバッテリーの製造、送電網、再生可能エネルギーの普及に欠かせない。ウッド・マッケンジーによれば、中国が過去2年間に増やした風力発電能力は、その前の7年間の拡大分を上回っており、2032年末の風力発電能力は2.38テラワットに達する見込みだ。

資源商社トラフィグラの試算によれば、中国の銅需要は2020年の水準からさらに400万トン増加し、30年には年間約1800万トンになる見通しだ。2010年から20年までは500万トン増加した。

今年の銅需要は8%伸びており、習氏が目標とするGDP全体の成長率5%よりも速いペースとなっている。銅価格は今年、中国のゼロコロナ政策解除後の景気回復と失速につれて上下したが、それでも不動産不況によって恐れられたような暴落とは程遠かった。

アルミニウムも同様で、不動産建設やEV部品、充電ステーションのようなEVインフラに使用されている。トラフィグラによると、中国のアルミニウム需要は2010年から20年にかけて年間1800万トン増加しており、30年までにはさらに1300万トン増加して年間5000万トンを超えると予測されている。

これらの要因が相まって中国の成長を下支えしている。国際通貨基金(IMF)は今月、23年と24年の中国のGDP成長率見通しを上方修正し、24年分は10月時点の予想4.2%を4.6%に引き上げた。IMFと世界銀行のデータに基づくBreakingviewsの計算によると、中国の成長率が4%を下回ったとしても、来年の世界のGDP成長に中国は27%寄与する見通しだ。

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もちろん、不動産セクターが徐々に衰えていくことは一部のコモディティーにとりわけ大きな打撃を与えるだろう。例えばオックスフォード・エコノミクスのアナリストによれば、鉄鋼に依存する中国建設セクターの今後10年間の成長率は年率2.5%程度にとどまる可能性があり、オーストラリアのような鉄鉱石輸出国にとっては懸念材料となる。しかし、それでも価格への打撃は激烈からは程遠いだろう。

中国は世界の鉄鉱石需要の70%近くを占めているため、15年に住宅市場が低迷すると、価格は過去最低のトン当たり約40ドルまで急落した。しかしHSBCのアナリストによれば、今年はトン当たり平均110ドルを超えており、現在は過去半年の最高値近辺で推移している。その理由の一端は中国の景気刺激策への期待にあり、また一端はEVや風力発電所、その他のインフラ向けの新規需要にある。

中国が新たな経済モデルに移行してグリーンテクノロジー志向を強めれば、銅の主要生産国であるチリや、ニッケルなどを生産するインドネシア、コバルトの採掘を独占するコンゴ民主共和国のようなアフリカ諸国にも引き続き利益をもたらすはずだ。

中国には「ラクダは痩せ死んでも馬より大きい」という故事がある。コモディティーに置き換えるなら、中国の経済的比重の縮小に注目し過ぎる投資家は、中国が依然として無視できないほど大きな存在であるという事実を見落とす危険性がある。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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