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インドは本当に世界の次なる経済大国になれるのか 成功への道のり ... - DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

インドは本当に世界の次なる経済大国になれるのか

HBR Staff/anand purohit/Getty Images

サマリー:「インドの経済的台頭」はこれまでも多くの注目を浴びてきたが、結果的にすべて期待外れに終わってきた。しかし今度こそは、次の経済大国になれる可能性がある。本稿では、インドで未解決の課題やビジネス環境の改善... もっと見るの必要性を含めて現状を分析し、これらを乗り越える方法を示したうえで、今後の発展の可能性を考察する。 閉じる

インドの経済的台頭は必然か

 2002年、インド政府は 「インクレディブル・インディア」(驚くべき国、インド)として知られる広範な国際観光キャンペーンを開始した。今日、インド政府が同様のキャンペーンを展開するとしたら、「イネビタブル・インディア」(約束された国、インド)と名づけるかもしれない。

 国内の熱心な支持者だけでなく、世界中のアナリストたちが、インドが次の経済大国になるだろうと宣言している。ゴールドマン・サックスは、インドが2075年までに世界第2位の経済大国になると予測し、『フィナンシャル・タイムズ』紙のチーフエコノミクスコメンテーター、マーティン・ウルフは、2050年までにインドの購買力が米国の購買力を30%超えると見ている。

 我々は以前にも同じような「インド楽観主義の高まり」を経験している。しかし現実には、熱烈なインド支持者たちをも落胆させてきた。中国(いまだインドの5倍の経済規模を持つ)を追い越すという大胆な予測に始まり、2007年にマッキンゼー・アンド・カンパニーが出した、急速な経済成長を遂げるインドの消費者が「金の鳥」になるだろうという見方まで、まったく実現しなかった。規制緩和の後に政策が撤回され、ビジネス相手としての信頼が失墜し、そしてパンデミックによって壊滅的な打撃を受けるまで、インドが約束されていた必然的な台頭は、期待はずれに終わってきたのだ。では、いまは何が違うのであろうか。

 インドのビジネスエコシステムには、需要、供給、システム全体の異なる側面が一つに集約するポジティブな傾向がある。それらの促進要因が組み合わされば、景気サイクル、マクロショック、政策転換を乗り越えられる可能性がある。促進要因には新しいものもあるが、古いものはクリティカルマスに達しようとしており、最終的には両者が相互に補強し合って、一度成長が始まるとより大きな勢いで成長し続けるフライホイール効果を生み出すことができる。しかし、車のエンジンなどに利用されているあらゆるフライホイールと同じように、振動や焦げ臭い匂いに警戒し続けることが重要であり、インドの場合、このような問題は数多く存在する。企業、政府どちらのリーダーも注意を払い、フライホイールが壊れる前に行動することが不可欠である。

需要

 需要サイドには、3つの力が集結し、インドの経済成長を後押している。

消費ブーム

 インドの将来性に関する議論の出発点は、インドの消費者の将来性である。14億人の人口と、彼らの無数のニーズを抱えるインドの成長は、主に国内消費と投資によって牽引されている。実質賃金は4.6%増加し、可処分所得は15%を超える成長が期待されている。西欧では成熟し切っている産業が、インドではいま急成長している。たとえば、民間医療保険は2015年から2021年の間に約3倍に成長し、耐久消費財は今年(2023年)15%から18%の成長が見込まれている。

文化的背景に適したイノベーション

 国際企業は、インドの「中流階級」の意味するところが理解できず、それに合った価値提案をつくり上げるのに苦労している。インド人の3人に1人が中流階級だと主張するアナリストもいるが、世界基準でいえばインドにおける正確な「中流階級」はわずか6600万人にすぎず、11億6000万人は低所得者である。しかし、この低所得者グループには、上昇志向の消費者層が大勢存在している。

 これには多くの示唆がある。まず、インドでの競争とは、他国よりもはるかに低い価格帯で販売することを意味し、そのためには競合他社が真似しにくいような方法での活動、生産、サプライチェーンの再構築が必要となる。インドで最も売れている自動車は日本のスズキが製造するワゴンRで、価格は7000ドルだ。スズキのインドでの41%という市場シェアは、世界の自動車業界では異例である。

 とはいえ、ネットフリックスがインドでの試行錯誤を通じて発見したように、インドで成功するためには低価格だけでは不十分だ。コンテンツをローカライズし、インドの複数の言語に対応し、アマゾン・ドットコムやウォルト・ディズニーのように、インドの消費者が求める商品間の相乗効果(シナジー)を活かすことが不可欠である。まったく異なる分野では、マクドナルドがベジタリアン向けオプション、インド風スナック、多世代家族向けメニューを導入し、文化的背景に適した価値提案を行っている。

 インド消費者の心をつかむことができる企業には、大きな見返りがある。インドのマクドナルドのフランチャイズ経営者の多くは億万長者である。家電メーカーのハベルズは、浄水器やコンプレッサーのないクーラーなど、インドの消費者のニーズと手頃な価格の両方を満たす「インド向け」製品を提供している。30年前の上場以来、ハベルズの利益は826倍、時価総額は5800倍に跳ね上がった

環境対策

 インドにとって環境対策は急務であるが、それによって新たな需要が急激に拡大している。その潜在的な経済規模は、膨大なエネルギー需要が発生することを意味する。世界第3位のエネルギー消費国であるインドは、再生可能エネルギーの設備量ではすでに世界第4位である。同国は野心的な目標を掲げており、2030年までに500ギガワットの再生可能エネルギー容量の導入、年間500万トンのグリーン水素の生産、二酸化炭素排出量の45%(10憶トン)削減などの実現を目指している。世界経済フォーラムによる2021年の報告書によると、インドで「グリーンエコノミー」関連の雇用が5000万人増加し、2030年までに1兆ドル、2070年までに15兆ドルの経済的機会がもたらされると予測している。

供給

 供給にもいくつかのポジティブな力が働いている。

人口ボーナス

 供給に関する話については周知のものである。2030年までに、インドの生産年齢人口は10億4000万人となり、生産年齢人口に対する非生産年齢人口(子どもと高齢者)を示す従属人口比率は31.2%と過去最低になる予想である。これは、漸増する世界の労働人口の4分の1弱を占めることになる。なお、生産年齢人口の増加は2055年まで続くと予測されている。

 「アジアの奇跡」は、この傾向を利用することで築かれてきた。日本は1964年に、韓国は1967年に、中国は1994年にこの好機に入った。また、インドには英語話者のSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の卒業生が世界で最も多く集まっている強みもある。

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