アンテナショップ利用実態調査とは
東京都内にある全国の道県のアンテナショップ* 34店舗について、利用の実態を明らかにするため「第7回 アンテナショップ利用実態調査 2023」を実施した。(*アンテナショップ…地方自治体が、地域の情報発信や特産品の販売などを目的として、東京などに設置する店舗のこと。)
本調査はインターネットを利用し、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川)在住の男女20,000人から回答を得た。
この調査では、来店経験、リピート率、購入商品などの店舗利用状況のほか、観光情報の入手やレストランでの飲食、そしてECサイトの利用率など、店舗での商品購入以外での活用状況についても調査・分析を行った。(調査概要の詳細はページ下に記載)
この記事では、コロナ禍により売上高が低迷したアンテナショップが、若者を中心として需要の高まりを見せていることに注目する。なお、本調査の詳細な結果は「アンテナショップの利用実態調査2023」報告書を参照されたい。
調査結果概要
●若者の年間来店回数の平均は年7.2回。60代の3倍
「東京にある、都道府県が運営するアンテナショップに行ったことがありますか」という質問に対し、直近1年間で行ったことがあると回答した人は全体の31.0 %で、前年の調査よりもわずかに増加した。一方で1年以内には行っていないが、それ以前に行ったことがあるという人は29.3 %であり、合計すると回答者の60.3 %が過去にアンテナショップに行ったことがあるという結果となった。この数値は前年度の調査と同じ結果である。
また、1年以内にアンテナショップに行った回数は、来店経験があると答えた人の平均では15.1回、来店経験のない人を0回とした場合の全体平均では4.7回で、いずれも前年の結果より増加している。これは、リピーターや、複数店舗を周る人が増えたということだ。この要因としては、アンテナショップを巡るスタンプラリーに参加する人が増えたことなどが考えられる。
これらの結果を回答者の年代別にみると、年間利用率ではどの年代も30%前後とあまり差がないが、一人当たりの年間利用回数では年代が若いほど多くなっており、20代は60代のおよそ3倍の回数、アンテナショップを利用しているという結果が出た。すなわち、若い層は全体としては利用者が比較的少ないものの、同じ人が何度も利用していることが分かる。
●パン、テイクアウト商品の売り上げが増加。アルコールは減少
来店経験のある人へ「アンテナショップで良く購入する商品を、以下の中からお選びください(いくつでも)」という設問に対し、「お菓子・スイーツ」と回答した人は53.6%と、半数を超えた。次に多いのが「魚介類・水産加工食品」で18.9%、「レトルト・加工食品」で18.5%、「調味料」で17.9%と続いた。
また、前年より購入率の伸びが最も大きかったのは「パン・サンドイッチ」で、前年より1.4ポイント増の7.7%。次いで「ソフトクリーム」が1.2ポイント増の12.7%となった。これらは買ってすぐに食べることができるという共通点があり、テイクアウト商品の需要が高まっていることがうかがえる。
一方で、最も減少したのは「お酒・アルコール飲料」であり、0.8ポイント減少の15.3%となった。これは、コロナ禍で伸びた「家呑み」の需要が やや弱まったことが原因と考えられる。
では、年代や性別によって購入する商品に傾向は見られるのだろうか。下のグラフは、横軸を女性率(%)、縦軸を平均年齢(歳)として購入商品を入力したものである。
このグラフを見ると、女性は野菜、調味料、惣菜など、日常の料理や食事に使用するものを購入する傾向がみられる(赤い点線)。男性は、酒、水産物、肉など、多少は値が張るものの、地域の特産品を利用した加工品を購入する傾向がみられる。そして若者は飲料、パン、ソフトクリームなど、値段も手ごろですぐに食べられるものを購入する傾向がみられる。
特徴的なのは、若い男性が購入する傾向の見られる「お米」である。社長の田中は「アンテナショップではブランド米が少量で売られている。この結果は1人暮らしの男性の、少ししか食べないものにはこだわってみようという指向の表れだろう」と分析する。
●観光情報を入手する人は増加傾向。約4割が入手
来店時に「観光情報を入手した」と答えた人の割合をアンテナショップの店舗ごとに算出し、34店舗の平均をとると、39.1%の人がアンテナショップで観光情報を入手したという結果となった。昨年は31.8%であり、7.3%も増加している。
アンテナショップは産品の販売店というだけでなく、地域の情報を発信するまさに「アンテナ」としての役割の需要が高まっている。アンテナショップをきっかけとして、その地域のファンになってもらえるよう、ニーズを見極め、応えていくことが求められる。
若い世代と地域をつなぐ役割に
20-30代の若者は、直近一年間でアンテナショップを訪れた回数がほかの年代よりも多いことが分かった。これは、若者の方が行動力があるほか、仕事や買い物で出かけたついでに立ち寄ることが多いためではないかと考えられる。
また、若者がよく購入する傾向があるのはパンや飲料、ソフトクリーム、ブランド米のミニパックなど、手ごろな値段でその地域の特産を味わえる商品であり、全体的にもこれらの売り上げが増加している。
これらのことから、若者による地域への関心の高まり、そしてこの段階におけるアンテナショップの役割の重要性が見えてくる。すなわち、若い人に地域を好きになってもらうきっかけとしてのアンテナショップの有用性が、色濃く表れ始めているのである。
若者にとってのアンテナショップの魅力を考えると、経済的に余裕がなく頻繁には旅行することができない状況でも手軽に地域のものに触れられる場所としてアンテナショップを利用していると考えられる。
ブランド米の購入にみられるように、若者の間でも「安ければいい」というのではなく、「本当にいいものを体験したい」というコト消費的な本物志向の高まりがうかがえる。
今後アンテナショップには求められることは、特産品のこだわりをそのままに、若者が手に取りやすい形で商品を提供することで、若者がその地域に魅力を感じるきっかけになる体験を提供することだ。
コロナ禍を経て、首都圏の消費者による他地域への関心は再び高まりつつある。若者には手軽さをフックとして関心を持ってもらい、段階的に地域の魅力に気づいてもらうことが、地域のファンを増やしていくために重要だ。
その橋渡し役としてアンテナショップを活用できるかどうかが、今後の地域活性化のカギとなるだろう。
「アンテナショップの「利用実態調査2023」について
【調査概要】
■調査名:アンテナショップ利用実態調査2023
■調査方法:インターネット調査
■被調査者:全国の調査モニターより、年代(20代、30代、40代、50代、60代以上)と性別で均等に回収
■総回収数:20,000人
■有効回答数:19,878人 (不完全回答および信頼性の乏しい回答を削除)
■調査時期:2023年9月 7日~12日
■調査対象:34店舗(併設してある飲食店は28店舗、ECサイト30店)
■回答者属性:年齢、性別、居住地域、婚姻、子どもの有無、職業、業種、世帯年収、住居
●アンテナショップの利用実態調査 関連情報
アンテナショップの利用実態調査2023特設サイト
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