8000年を超える歴史をもち、陶芸技術の粋を極めた中国陶磁。その頂点といえる宋代の陶磁器と清朝の官窯磁器の2つの魅力を紹介する展覧会が、静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)にて開催中です。
静嘉堂@丸の内「二つの頂 ― 宋磁と清朝官窯」会場入口
平安時代、日本にもたらされた中国の文物は「唐物」と称して珍重され、日本文化のなかで大切に伝えられてきました。海路の発達により、宋代(960-1279)に貿易陶磁として役割の担ったのは、龍泉窯青磁や景徳鎮の青白磁などでした。
《青磁鼎形香炉》 南宋官窯 南宋時代(12~13世紀)
商工業や科学技術が発達した宋代では、王朝を支える官僚たちが活躍。窯業技術も発展し、生産力が拡大。青磁や白磁、黒釉など多様で洗練された陶磁器が各地で生まれ、特に優れた作品は「宋磁」と称えられ、現代にまで影響を与え続けています。
(手前)《白地線彫黒泥彩牡丹唐草文壺 》 遼~金時代(11~12世紀)
一方、中国最後の王朝・清朝(1616-1912)では、中国最大の磁器産地である景徳鎮に宮廷用の陶磁器を焼造する政府直営の工房である「官窯」が復興。最高の技術と材料を誇るやきものが、皇帝のためにつくられました。
第3章「清朝官窯の精華」
第3章では、釉下彩・釉上彩などの絵付けのある磁気や単色や複数の釉薬をかけた色釉磁器など、色鮮やかな中国陶磁が並んでいます。
筒形の一面に龍とその裏面に両翼を広げ尾羽をなびかせる鳳凰が向かい合わせに描かれた一対の瓶。青花と金を用いた濃いピンク色の顔料を使った釉上彩によるものです。
重要美術品《青花臙脂紅龍鳳文瓶 一対 「大清乾隆年製」銘 》景徳鎮官窯 清時代・乾隆年間(1736~95)
陰数である“100”を避け、陽数である101人もの唐子が描かれた鉢。「百子図」は、多くの男児に恵まれることを願う吉祥図ですが、この鉢のデザインには官位が上がることを願う「平昇三級」や一族代々の出世を願った「冠帯伝流」などの吉祥図も盛り込まれています。
《五彩百子図鉢 「大清康煕年製」銘》 景徳鎮官窯 清時代・康煕年間(1662~1722)
静嘉堂文庫美術館ではお馴染みの名品、宋磁の至宝である国宝・曜変天目も展示されています。淀藩主稲葉家に伝わったため「稲葉天目」とも呼ばれるこの茶碗は、現存する3点の曜変天目のひとつで、その全てが茶道具として日本に伝わっています。
《曜変天目および尼崎台》 南宋時代(12~13世紀)
曜変天目の付属品には稲葉家以前の伝来を示すものはありませんが、岩﨑小彌太の審美眼によって同じ南宋の天目台が添えられました。会場では、曜変天目の「次第」(茶道具そのものとそれに付属する袋や箱など)も紹介。曜変天目の細長い漆塗りの外箱と天目台の三重箱を収める2重の総箱が並んでいます。
曜変天目 外総箱・内総箱・外箱
寒さが厳しくなる季節ですが、美術館へは4つの駅(東京駅、有楽町駅、二重橋前駅、日比谷駅)から地下通路で便利にアクセスすることができます。
2024年の年明けには、干支に合わせて古代中国で誕生した想像上の動物「龍」をモチーフにした作品を紹介する「ハッピー龍イヤー!」が開催されます。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年10月5日 ]
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