赤字ローカル線の見直しを検討する動きが、JR各社に広がってきた。北海道、四国、九州に続き、西日本も4月に路線別収支を明らかにした。17路線が赤字という。東日本も近く同様の収支を公表する方針だ。
人口減やマイカー利用の広がりで、北海道や四国の経営は以前から厳しかった。ここに来て東日本や西日本も赤字路線への言及を強めだしたのは、収益源だった大都市の鉄道需要がコロナ禍で落ち込み、今後も回復が限られる見込みだからという。
国鉄分割民営化から35年の変化を踏まえれば、当時の鉄道網を維持していくことは、企業経営上は必ずしも現実的ではないだろう。だが、公共交通機関の役割は、経済合理性だけでは論じられない。旧国鉄の債務処理に巨額の税金を投じた経緯を考えれば、JR各社には地域交通を担う責務がある。
コロナ禍による鉄道需要の落ち込みが続くのかは未知数であり、保有する優良不動産など収益源も鉄道だけではない。路線見直しは、あくまで各地域の人口や中長期的な社会経済の動向をもとに検討すべきだ。
これまでJRは、採算に合わない投資を求められることを恐れ、地域との対話に消極的だった。自治体もJRの赤字はひとごとだった。両者の連携不足が、公共交通離れを加速した側面は否定できない。住民と自治体、JRが望ましい地域の公共交通の姿を議論し、実現に向け協力することが求められる。
赤字であっても、並行する道路網が未整備だったり、通勤通学に大勢が利用したりする路線では、鉄道の存在意義がある。
一方で、バスは鉄道よりもきめ細かく停車でき、増便のコストも低い。運転免許を返上する高齢者が増える中、バス転換で便利になる地域もあるだろう。
いずれにしても、前向きに知恵を絞り、「地域の足」を向上させる最善策を探ることが重要だ。JRや自治体が収益力や財政力に応じた負担をするのを前提に、政府も財政支援を強め、議論を後押しする必要がある。不可欠な鉄道に対しては、鉄道の赤字は補填(ほてん)しない原則を見直し、柔軟に対応すべきだ。
民営化時に設けたJR間の収益格差を調整する仕組みは機能不全になっている。自治体などが運営する地域鉄道やバスの経営も深刻で、放置できない。
電話には、全国でサービスを維持するために利用者から1番号あたり月2~3円を徴収する制度がある。こうした事例も参考に、財源確保策の検討を急ぐよう求めたい。
国民一人一人の移動の自由を社会で支える仕組みの再構築は、政府の重大な使命である。
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