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ブルウィップ効果の意味とは?発生する原因や影響、対策について解説 - リテールガイド

ブルウィップ効果とは、サプライチェーンの下流では需要量の変動が小さいのに対し、上流では必要以上に変動が大きくなることをいう。事業規模が大きくなるほどブルウィップ効果による欠品または過剰在庫は大きくなり、損失額も増える。この記事ではブルウィップ効果の意味とともに、原因と対策についても解説する。

ブルウィップ効果とは?

ブルウィップ効果とは販売現場での需要変動に対し、卸売から工場、原材料の取り扱い業者へと辿るにつれ、需要変動を過剰に捉えがちになることをいう。

そもそも「ブルウィップ」とは、家畜の牛に対して使うムチのことである。手元のムチの揺れが小さいのに対し、遠くに離れていくにつれ揺れ幅は広くなる。サプライチェーンの川下の需要変動の小ささに比して、川上へいくほど必要以上に大きな変動と認識される現象が「ブルウィップ効果」である。

この現象はまず1950年代に「フォレスター効果」の名で知られるようになり、その後1990年代からは「ブルウィップ効果」と呼ばれるようになったという。

システムダイナミクスの生みの親で、MITスローン経営大学院の教授ジェイ・ライト・フォレスターがこの現象の報告をしたことから「フォレスター効果」と当初と呼ばれていた。

ブルウィップ効果の事例

例えばサプライチェーンでの川下にあたる小売店が、売れ行きが良い商品の在庫目標を1単位増やしたとする。当初の見込みよりも手元の繰越在庫が1単位減るため、問屋への注文を2単位に増やす。

問屋は当初の見込みよりも2単位増えた注文を受けて、在庫目標が2単位に増加する。手元の繰越在庫が2単位減るため、メーカーへの注文は4単位に増える。これを繰り返しながらさかのぼっていくと、川上では川下の需要変動よりもはるかに大きな需要変動となっていく。そのため川上ほど在庫調達能力や製造・加工能力を求められ、川下よりも需要変動の影響が長期化する傾向がある。

ブルウィップ効果が起きる原因は?

ブルウィップ効果は、需要変動の予測が不確かになるほど生じやすい。サプライチェーンの川上にいくほど需要変動が予測しにくいことや、商品調達と供給のリードタイプの長さがブルウィップ効果の原因だ。加えて意思決定に関わる人が多くなるほど、ブルウィップ効果が発生しやすくなる。

需要予測があやふや

商品の販売タイミングと数量の予測があやふやだと、ブルウィップ効果が起きやすくなる。

近年は以前にくらべ商品ライフサイクルが短く、消費者のニーズも多様化している。さらにSNSによる突発的な口コミの拡散や、災害の発生などでの需要変動の誘発などもあり、需要予測は難しい時代である。100%の需要予測は不可能だが、AIや統計的手法を用い、精度を可能な限り上げることが重要だ。

サプライチェーンの川上ほど需要変動の原因を掴みにくい

ブルウィップ効果が起きる原因の一つは、サプライチェーンの川上へいくにつれ、需要変動の原因が掴みにくいことだ。

川上の企業に対し、川下の企業からの発注量が突然増えたとする。ここでもしも川下の企業から需要変動の原因を教えてもらえないと、需要変動がいつまで続くかを予測するのは困難だ。欠品と過剰在庫を恐れるあまり、需要変動の大きさを必要以上に捉えがちにもなる。

調達・供給のリードタイムの長さ

商品調達と供給のリードタイムが長いほど、ブルウィップ効果が起きやすい。商品が生産されてから消費者が購入するまでの期間を「リードタイム」というが、この期間が長いほど需要予測が難しくなるためである。

近い将来のことは予測しやすいのに対し、先のことは予測がしにくくなっていく。また、サプライチェーンに関わる企業間や組織間で連携が取れていないと、川下から川上への情報伝達も遅くなりがちだ。その結果需要予測の精度を高められず、ブルウィップ効果が生じてしまう。

意思決定する人が多いほどブルウィップ効果は生じやすい

商品供給についての意思決定者が多いほど、ブルウィップ効果は生じやすくなる。

意思決定に多くの人が関わっていると、情報を伝達して共有させるのに時間がかかりがちだ。情報伝達のタイムラグによって商品調達と供給のリードタイムが伸び、計画と実際の状況とのずれがさらに大きくなる。その結果、ブルウィップ効果の原因になる。

ブルウィップ効果がもたらす影響

ブルウィップ効果が起きてしまうと、欠品による機会損失と過剰在庫によるコスト増が懸念される。しかも生産ラインを持つ企業では、稼働効率が悪化するデメリットも考えられる。

欠品による機会損失

ブルウィップ効果が起きていると、サプライチェーンの川下よりも川上の企業の方が需要の減少幅を実際よりも大きく捉えがちになる。

実際の販売量よりも少ない生産・調達計画により川上の商品供給側で欠品が生じてしまい、収益が本来得られた額以下になってしまうことも。加えて川上では需要減少を大きく見積もったために、従業員を解雇するなどのリスクも高まる。そして欠品を生じさせたことにより、取引先からの信頼を失ってしまう可能性まで考えられる。

在庫が過剰になりコストがかかる

ブルウィップ効果により在庫が過剰になると、コストが余計にかかる。実際の販売数よりも多い調達・生産計画により多くの在庫を抱えてしまうと、その管理に多額の費用が生じる。加えて無駄な生産活動や廃棄により、環境が悪化するおそれもある。

生産ラインの稼働効率が悪化する

ブルウィップ効果が生じて大きな需要変動が起こっていると、生産ラインの稼働状況がばらついてしまう。忙しい時期とさほど稼働させなくていい時期とがある状況は、忙しさが一定のときよりも非効率的だ。

加えて非効率的な生産ラインでは残業代がいたずらに増えてしまう、原材料や人手を持て余すタイミングができるなどのデメリットもある。

ブルウィップ効果を防ぐには

ブルウィップ効果を防ぐには、サプライチェーンの川上の企業が川下の需要変動の原因と規模をとらえていることが効果的だ。ブルウィップ効果の抑制を考える際に考慮したいポイントを紹介していく。

リードタイムを短くする工夫を

商品が生産されてから消費者が購入するまでのリードタイムの短縮は、ブルウィップ効果の防止につながる。リードタイムが短くなれば近い将来の需要を予測すれば良く、結果として精度を高められる。商品の需要予測の精度が高いほど、ブルウィップ効果は起きにくくなる。

ジャスト・イン・タイム(JIT)生産方式の導入も効果あり

世界的な自動車メーカーであるトヨタは、「必要なときに、必要なものを、必要なだけつくる」ジャスト・イン・タイム生産方式を開発、採用している。研究が進んだ近年はトヨタ内だけではなく企業間で行われる事例もある。

サプライチェーンの企業間でジャスト・イン・タイム生産方式を採用すれば、川上の生産側は川下の販売側が必要としている量を作ればよい。ただし実現させるには生産側が販売側の需要量を常に把握し、需要に即応できる柔軟な生産体制を構築している必要がある。

企業統合でブルウィップ効果を最低限に

サプライチェーンの川上の企業が川下の企業をM&A(合併・買収)し、企業統合を行うことでもブルウィップ効果を抑制できる。統合された1つの企業内では実際の商品販売量をすぐに反映させた調達・生産計画を立案し、実行しやすいからだ。

例えばユニクロなど垂直統合型のサプライチェーンであるSPA(製造小売業)では、商品の企画と生産、販売に至るまでを自社で行う。SPA方式はブルウィップ効果の抑制に加え、商品流通の際の中間マージンがかからず、コストを抑えられるメリットもある。

M&Aにはブルウィップ効果を抑えられる以外にも、事業規模拡大や強みの強化と弱みへのケアなど多くのメリットがある。反面、組織の一体感が薄れたり債務や減損が発生したりするリスクもあるので、M&Aが自社にとってベストな選択かは慎重に検討すべきだろう。

SCM(サプライチェーンマネジメント)を実践する

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは企業や部門の枠を越え、サプライチェーンを総合的にマネジメントする手法をいう。製造から販売までのプロセスを最適化させ、収益性と効率を高めるために行われる。

下流の販売側が日々の業務でPOSシステムに入力・蓄積したデータや、販売データなどの情報を上流とも共有し、サプライチェーンに関わる全部の企業・部門が一緒に生産・販売計画を立てて実行する。

SCMを実現させるにはソフトウェアを導入・運用するが、それにはコストと人手が要る。だが近年はクラウド型のSCMサービスも登場しており、費用面では導入しやすくなっている。

ブルウィップ効果まとめ

企業ではブルウィップ効果に対しての取り組みが遅れていることが多く、ブルウィップ効果が起きていることに気付いていないケースもみられる。ブルウィップ効果の原因と及ぼす影響、解決策を知っておこう。そして自社が関わるサプライチェーンでのSCM導入について、検討してみてはいかがだろうか。

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