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景気減速への懸念や急激なインフレ進行、ドル高、サプライチェーン(供給網)の混乱が続く中、米IT(情報技術)大手の事業環境に波乱が生じている。
米ネット通販大手のAmazon.com(アマゾン・ドット・コム)の2022年4~6月期決算は、2四半期連続の赤字だった。米半導体大手のIntel(インテル)の同四半期決算は、パソコン向けなどで苦戦し、4億5400万ドル(約600億円)の最終赤字と、過去10年超で最大の減収を報告した。米Microsoft(マイクロソフト)は増収率が12%、増益率が2%にとどまり、市場予想を下回った。クラウドサービス事業は好調だったものの、ドル高が利益を圧迫した。
また、SNS「Facebook(フェイスブック)」を運営する米Meta(メタ)は売上高全体の約98%を占める広告事業が振るわず、上場以来初の減収となった。米Google(グーグル)の持ち株会社である米Alphabet(アルファベット)の増収率は、新型コロナウイルス禍で旅行分野などの広告需要が低迷した20年4~6月期以来の低水準。2四半期連続の減益となった。動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」の増収率は5%と、過去最低の伸びを記録した。
関連リンク アマゾンの決算資料(22年4~6月期) インテルの決算資料(同) マイクロソフトの決算資料(同) メタの決算資料(同、PDF) アルファベットの決算資料(同、PDF)アップル、iPhoneは減収回避
一方で、米Apple(アップル)は、売上高が前年同期比1.9%増の829億5900万ドル(約11兆2000億円)となり、4~6月期として過去最高を更新したものの、純利益は同10.6%減の194億4200万ドル(約2兆6200億円)。研究開発費や販売管理費が膨らみ、20年7~9月期以来7四半期ぶりの減益となった。
アップルの製品・サービス別売上高の増減率は、パソコン「Mac」が同10.4%減、タブレット端末「iPad」が同2%減、ウエアラブル機器が7.9%減。中国のロックダウンの影響で部品調達の制約を受け、ハードウエア事業が軒並み減収となった。しかし、売上高全体の5割を占めるスマートフォン「iPhone」は同2.8%増の406億6500万ドル(約5兆4900億円)と、減収を回避した。また、アプリ販売や音楽配信といった「サービス」は同12.1%増加した。
こうしたIT大手の4~6月期業績結果について、米ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「iPhoneの売上高は市場予想を上回っており、アップルは大混乱を免れた数少ない企業の1社だ」と報じた。同紙によると、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は、為替の影響を除けば、iPhoneが最近の経済動向の影響を受けていることを明確に示すものはないとして自信を示した。
スマートフォン需要低迷で在庫が増加
電子機器の市場では、半導体などの部品の供給制約によって需要を満たすことができない状態がしばらく続いていたが、ここに来て需要が弱まり、供給過剰に陥っている。
米調査会社のIDCが2022年7月に公表したスマホ市場リポートによると、22年4~6月の世界出荷台数は前年同期比8.7%減の2億8600万台。需要低迷に伴い、スマホ出荷台数は4四半期連続で減少した。
IDCのリサーチディレクター、ナビラ・ポパル氏は「この市場は22年初めに供給制約という問題に直面していたが、一転して需要不足に陥った」と指摘する。「生産能力が増強され、生産量が増えるにつれて供給に改善が見られたが、急激なインフレと経済の先行き不透明感が個人消費を抑制し、世界の全地域で在庫が増えた」(同氏)。
シンガポールに本部を置く調査会社カナリスも最新リポートで、22年4~6月の世界スマホ出荷台数が同9%減の2億8700万台だったと報告した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出た20年4~6月期以降、最も少ない四半期出荷台数だった。
カナリスのアナリストは、「供給過剰への懸念が広がり、部品注文が急減している。サプライチェーンにおける供給不足はもはや最も差し迫った問題でなくなった」と指摘する。「需要の弱さは長期に及ぶ可能性があり、スマホのサプライチェーン全体で緊張が高まるだろう」と予想している。
急激な需要減が主要メーカーに打撃を与えているようだ。カナリスによると、22年4~6月のメーカー別スマホ世界出荷台数は、韓国サムスン電子が6180万台。前年同期比6%増だったが、前四半期からは16%減少した。それでも同社は21%のシェアを確保し、首位を維持した。アップルは前年同期比8%増の4950万台。シェア17%で2位になった。
上位5社の3位以降は中国メーカーで、小米(シャオミ)、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)の順。3社の出荷台数はいずれも2桁減少し、中国市場で苦戦している。小米の世界シェアは14%で、1年前から3ポイント低下。OPPOとvivoのシェアはそれぞれ10%と9%で、いずれも1ポイント低下した。
関連リンク IDCの世界スマホ市場リポート(22年4~6月) カナリスの世界スマホ市場リポート(同)Bagikan Berita Ini
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