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道内民泊需要盛り返す 入国規制緩和などが背景 - 北海道建設新聞

国内外からの投資も活発に

 コロナ禍で落ち込んだ道内の民泊需要が盛り返している。アフターコロナの浸透や外国人の入国規制緩和などを背景に宿泊者数が伸び、国内外投資家による民泊物件の投資も活発になってきた。これまで札幌中心だった宿泊需要は、ニセコや洞爺湖、富良野といったリゾート地へと広まりを見せている。(経済産業部・武山勝宣、及川由華記者、関連記事2面に)

 「12月から2023年2月までの予約を見ると、インバウンドが8割を超えている。19年は9割弱だったので程なくコロナ禍前と同じレベルに戻るだろう」―。民泊の運営・企画などを展開するマッシブサッポロ(本社・札幌)の川村健治社長は、10月11日の水際対策緩和を機に外国人客が回復していると話す。「これまで高い割合を占めていた中華圏の旅行者がまだ来ていない」現状の中、宿泊者は今後さらに伸びると予測する。

 回復の予兆はことし3月ごろからあった。川村社長は「学生の団体旅行を中心に、日本人だけでも活況だった。これにファミリー層も加わってきている」とし、民泊が海外だけでなく国内観光客にも浸透していると強調。ほとんどの施設が1室、複数人で利用できる広さがあるため、ソーシャルディスタンスを確保できる点が注目されたとみる。

 民泊運営の商談も急増している。「昨年は1カ月に1件あるかないかだったが、今は月35件ほどの問い合わせが来ている。札幌だけでなく旭川やニセコ、留寿都、函館と幅広く、道外では千葉や京都などからあった」と状況は一変。同社はインバウンドの回復を前提に物件を増やす考えだ。

 ただ、観光庁がまとめた道内の民泊届け出住宅数によると、9月12日時点で札幌市が1298件、それ以外が622件の計1920件にとどまる。19年以降で最少だった21年7月12日の1857件をわずかに上回っているにすぎない。

 しかし、札幌市内でのことし6、7月の民泊宿泊者は1万1921人に上り、前年同期の4820人に比べて2・4倍に伸びている。国別の内訳を見ると、日本が1万1261人と全体の94%を占め、次いで米国が191人、中国が152人、韓国が34人。フィリピンと英国が各25人、シンガポールとフランスが各22人、ドイツが20人と続き、アジア圏を中心に欧米からの需要も回復している。

 民泊運営代行などを手掛けるワールドワイドベース(本社・札幌)は、札幌や洞爺湖、ニセコ、富良野など約10市町村で70室程度の宿泊施設を運営する。昨年は売り上げの20%が訪日客だったが、ことしは60%まで増えるという。宿泊者は米国、シンガポール、香港の順に多い。最も売り上げが多い宿泊先は洞爺湖で、入国規制緩和後は富良野も人気が高まっている。

 急激な円安の影響も民泊需要を後押しする。同社担当者は「今の情勢を見る限り、訪日客にとってはコロナ前よりさらに日本に来やすくなると考えられる」とみる。さらに、中古戸建ての民泊不動産や別荘に興味を示す国内、海外投資家は多く、昨年と比べ問い合わせ数は急増した。訪日観光客に選んでもらうには、立地・宿づくり・おもてなしなどの体験満足度を向上することが重要だと説く。

 民泊は、宿泊施設不足の解消と増加する空き家の活用として有効だ。しかし、事業を始めたくてもスタートアップ段階の不透明さや、地域住民への対応など不確定要素が多く途中で諦める事例は多々ある。北海商科大商学部観光産業学科の池ノ上真一教授は「民泊事業者同士の情報交換を支援したり、スタートアップ段階と運営段階を支える仕組み整備が必要」と指摘。特に、経験豊富な住宅宿泊管理業者と組めば、投資目的を含めて気軽に参画できると助言する。

 コロナ禍からの経済再生で大きく出遅れる日本。選ばれる観光立国、北海道を取り戻すための商機は確実に近づいている。


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