新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、廃棄された電気自動車(EV)などから希土類(レアアース)を選択的に回収する技術の事業化を目指す。レアアースは産出が中国など特定の国に偏り、今後の需要増加も見込まれるため、供給への懸念がある。コスト競争力の高いレアアースの分離、精錬技術を開発し、国内でリサイクル体制を構築することで、地政学的リスクに備える。
対象とするレアアースは、ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった重希土類である。廃棄EVなどのモーターに組み込まれたネオジム(Nd)磁石や同磁石の製造時に出る切削くずから、環境負荷を抑えつつ高い効率で重希土類を分離、精錬できるようにする。
NEDOが今回採択した研究開発項目は2つ。1つは、重希土類を含む未利用資源から重希土類だけを選択的に濃縮、回収するプロセスの開発である。Nd磁石の製造工場やリサイクル工場から出る廃液などを、重希土類と鉄(Fe)などの不純物に分け、重希土類だけを回収できるようにする。
もう1つは、回収した重希土類からDyとTbを高い精度で相互に分離、精錬する技術の開発である。精錬については新たな電解法と還元法を確立し、省電力化と環境負荷の低減を図る。NEDOによると、レアアースを分離、精製する工程は、作業コストを理由に海外に頼っているのが現状だ。回収した廃Nd磁石を中国やベトナムに輸出し、輸出先で加工した重希土類の再生品を再び輸入しているという。
事業期間は2023~2027年度の5年間で、事業規模は17億6000万円の予定。三徳(神戸市)やエマルションフローテクノロジーズ(EFT、茨城県東海村)のほか、産業技術総合研究所(産総研)や国内の大学など複数の研究機関が参加する。
三徳はプロテリアル(旧日立金属)の子会社で、レアアースの合金製造やリサイクルを手掛けている。EFTは日本原子力研究開発機構(JAEA)発の新興企業で、レアアースなどの元素分離が可能な「多段エマルションフロー」と呼ぶ技術を持つ。同社には、ホンダやKDDI系のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などが出資している。
DyやTbの主な用途であるNd磁石は、EVのような電動車両やエアコン、風力発電機などのモーターに使われ、カーボンニュートラル(炭素中立)の実現へ向けて需要が増える見通しである。電動車両のモーターに使うレアアースのリサイクルを巡っては、日産自動車と早稲田大学が、モーターからNdやDy、Tbを含んだレアアース酸化物を回収する技術を共同開発しており、2020年代中ごろの実用化を目指している。
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