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こっちを向いてよ、スバルにヤマハ - 日経ビジネスオンライン

(イラスト:モリナガ・ヨウ)

(イラスト:モリナガ・ヨウ)

 東京ビッグサイトで開催された、「ジャパンモビリティショー2023」に行ってきた(23年11月5日に終了)。

 「モビリティショー、なんだそりゃ?」と思う方も「以前の東京モーターショーが衣替えしたもの」と言えば、「ああ」と納得してくれるだろう。自動車主体だったものが、より多様な交通手段・移動手段を扱う展示会となったものだ。といっても、主催は日本自動車工業会だし、共催団体にも名称に「自動車」と入る団体がずらりと並ぶ。

モビリティショー、華はカワサキ、マツダ

 今後動力の電動化が進むことで、自動車メーカー各社も従来の自動車の範囲には入らない移動手段を開発することになる、という意識がこの名称変更には現れているといっていいだろう。参加企業・団体数475社は過去最多なのだそうだ。

 普段、自動車よりもバイクで移動することのほうが多い私のお目当ては、もちろんホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキのブースだ。特にカワサキは、以前から開発が噂されていたレトロな230cc単気筒バイク「メグロS-1/W230」、そして新型オフロードバイク「KLX230」と世界初公開の新車3種(他に世界初公開記念塗装モデルもあり)に、こちらは日本初公開の電動バイク「ニンジャe-1」、おそらく世界初のハイブリッドバイク「ニンジャ7ハイブリッド」と、多彩なラインナップで楽しませてくれた。やはりショーの華は、実際に発売予定がある新車だ。

 一方、自動車のほうはどうかといえば、マツダの「アイコニックSP」がしみじみと印象的だった。車体のラインが優美だし、フロントのマスクがオラオラと自己主張していなくて、にもかかわらず控えめな化粧でも目鼻立ちがはっきりくっきりの女優さんのように美しいのが良い。なにより、まつげのような、さりげなくそっと開く小さなリトラタブル風のヘッドライトが良い。

 我々の世代――などと主語を大きくしてよいものやらだが――は、リトラクタブルライトにひとかたならぬ思い入れがある。空気抵抗が小さくなるリトラ!→高性能の証し!!ってなもので、リトラのライトは憧れであった。今や車体のカーブに合わせたライトが製造できるようになって、リトラでなくとも十分に低い空気抵抗が実現できるのだが、それでもリトラのライトへの憧れは消えていない。「アイコニックSP」のライトは「こういうふうにすれば今の時代でもリトラが復活できるのだ」という斬新さがある。

相手にされていないという疎外感

 とはいえ……と、ここから景気の悪い話になる。

 私がショー全体から受けた印象は「ああ、自分は相手にされていない」という疎外感だった。

 個々には、カワサキのW230のように「これは自分が乗るのに良さげ」と思える車種もあるのだが、全体の印象として「これは自分が乗るクルマだ、バイクだ」と思えるものが少ない。コンセプトカーなら「10年後の自分はこれに乗っているかもしれない」というわくわく感がない。高級車なら「いつかはこれに乗れるかもしれない」という根拠のない未来への明るさが感じられない。

 「それはお前個人の感想だろう」と言われそうなので、順に説明する。まずバイク。以下、数字は自動車工業会の調べたものである。

 現在、日本の二輪車4メーカーにとって日本は、はっきりと主要市場ではない。

 1985年に、208万7226台だった日本の二輪車販売台数は、2022年に40万2501台まで縮小した。

 ただし1980年代は50ccの一種原付の全盛期だったので、それを除外して二種原付と軽二輪、小型二輪――つまりは自動車の免許では乗れず、あらためて二輪用の免許を必要とするバイクの販売台数で見ると、1985年が44万1111台、2022年が27万3861台。22年の数字は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで「ひとりで移動できる乗り物」としていくらか需要が回復したり、あるいは若い頃にバイクに乗っていたりした人が、子育てが終わった50代以降にまたバイクに乗るようになる「リターンライダー」需要が上乗せされた数字であって、需要の底だった17年には20万9354台だった。

 要するに、最盛期の1980年代に比べると、稼ぎ頭だった50ccの原付は壊滅し、それ以外のバイク需要は半減してしまったのである。

 それでも、日本4メーカーは元気に生き残っている。理由は明白で、旺盛な需要のある海外市場に出ていったのだ。もちろん生産拠点も海外に移している。それがはっきり分かるのが、国内二輪車生産台数の推移だ。1985年には453万6347台だったものが、2022年には69万4968台にまで減っている。それだけ海外拠点での生産にシフトしているわけだ。

 そんな状態だから、商品企画は海外市場優先となる。実際、ここしばらくの日本メーカー4社の注目モデルは、まず海外で発表され、販売開始。半年とか1年たってから日本での発売、というのがほとんどだ。もはや我々、日本市場のライダーは日本の4メーカーのメインのお客ではない。

 先ほどのカワサキの例でも、革新的な技術を入れた「ニンジャe-1」と「ニンジャ7ハイブリッド」は、9月14日に海外向けとして発表されている。しかもニンジャe-1は、欧州のA1という免許制度に適合しており、欧州市場を主ターゲットにしていることがはっきりと分かる。

軽自動車以外は海外に目が向いている

 では自動車はどうか。ここではトラックや大型車を除く乗用車の年間販売台数を見ると、1985年に310万4083台だったものがバブル経済絶頂の90年に510万2659台を記録するが、その後落ち込み、2022年には344万8297台。

 「まだ、1985年よりは多いじゃないか」と思いきや、その内訳は軽自動車が大きく増加している。85年に16万1017台だった軽自動車は最盛期の2014年には183万9119台となり、2022年も122万4994台売れている。軽自動車に食われたのが、排気量2000cc以下、幅1700mm以下のいわゆる「5ナンバー車」で、1985年には286万9527台売れていたものが、2022年には、87万7074台まで減っている。

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