株式会社大塚商会は2日、2021年度(2021年12月期)中間決算を発表した。
それによると、連結売上高は前年同期比7.8%増の4666億2500万円、営業利益は同9.7%増の332億4600万円、経常利益は同10.6%増の342億4500万円、親会社株主に帰属する純利益は同13.8%増の236億5700万円。売上高および純利益は連結累計期間で過去最高となった。
代表取締役社長の大塚裕司氏は、「(コロナ禍だった)昨年の経験を生かし、オンラインでのフェア開催など、厳しい環境の中で着実に成長することができた」と上半期実績を評価した。
上半期が好業績だったことを受け、通期見通しは上方修正を実施。売上高は前回予想よりも前年比1.8%増の8810億円、営業利益は同2.1%増の593億円、経常利益は同2.9%増の607億万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同4.9%増の415億円。大塚氏は通期見通しについて、「上期の上振れをそのまま(通期見通しに)載せた。不透明な環境が続いているので、下期の動向は読みにくい。今回の予想をさらに上回ることができるよう頑張りたい」と見通しを説明した。
また2021年度の売上高と利益の状況について大塚氏は、「売上、利益ともに順調に推移した。2019年度はWindows 7からWindows 10への買い換えピークとなるタイミングだったが、2021年度上半期は、売上、粗利、純利益ともに2019年度を上回り過去最高となった。粗利率は若干下がったものの、ボリュームでカバーすることができた」と好調な業績だったことをアピールした。
連結のセグメント別売上高でも、SIが前年同期比7.3%、204億円プラスとなる3022億4600万円、サービス&サポートが前年同期比8.7%増、131億円増の1643億7900万円。この傾向は単体でもほぼ同様の成果となっている。単体の詳細セグメント別売上高では、SI関連が2323億6100万円、受託ソフト等は283億9800万円、サプライが824億9100万円、保守党が805億1800万円。
売上高の四半期推移では、「昨年度が厳しかったこともあり、高い伸びとなった。Windows 10へのパソコン切り替えのタイミングの2019年度には届かなかったが、あと一歩というところまで積み上げることができた」(大塚氏)と第1四半期、第2四半期ともに前年を大きく上回った。
経常利益についても同様で、「もう少し欲しいかなという気持ちもあるが、着実に回復し、巡航速度に戻りつつある」(大塚氏)としている。
単体の詳細セグメント別売上高増減率の四半期推移では、2021年第2四半期はサプライが16.4、受託ソフト等が14.0、保守等が11.9、SI関連商品が10.0と全セグメントが2桁伸長となった。大塚氏は、「コピー保守もだいぶ回復している」と前年度には大きく落ち込んだコピー保守も回復していると言及した。
顧客企業の年商別売上構成、顧客企業の業種別売上構成は毎年、大きな変化はないが、本年度については次のような変化があったという。「顧客企業の年商別売上構成は少しずつ変化しており、規模が大きい年商100億円以上の企業、年商10億円未満の企業が同様に回復している。業種別売上構成では、第1四半期にGIGAスクールのパソコン納入があったことから、官公庁比率が増加している」(大塚氏)。
重点戦略事業の状況については、「たのめーる」は前年同期比10.8%増の881億9100万円、「SMILE」は同5.3%増の61億6100万円、ドキュメントソリューション「ODS」は同6.9%増の293億4800万円、セキュリティ事業「OSM」は同21.6%増の491億1200万円。
複写機は同13.3%増の2万1533台で、そのうちカラー複写機が2万1078台。サーバーは同3.3%減の1万3083台。パソコンは同40.8%増の90万7975台で、タブレットなどクライアント合計では同56.4%増の104万6028台。「4~6月についてはパソコン、クライアントは前年割れとなっているが、1~3月がGIGAスクールの端末導入があったことから、1~6月では高い伸びとなった。複写機は堅調な動きを見せた」と各セグメントの内訳を説明した。
昨年度はマイナス成長となっていた「たのめーる」については、「1~3月には5.1%増、4~6月は17.4%増とかなり勢いがついてきている。コピー用紙は100に戻っているわけではないが、粗利率の高い生活用品、感染症対策商品などが好調。口座数も60%増となっている」と復調していることを強くアピールした。
また今回の決算説明会では、時間を割いてクラウドサービス、セキュリティ、AIへの取り組みについて時間を割いて説明を行った。
「Webサービスは、現在ではクラウドサービスとされているものだが、当社がビジネスを開始した当初はWebサービス、ASPと呼ばれていた。現在311万人が利用している。テレワークとその関連を含めて利用者が増加している」(大塚氏)と、利用者が年々増加しているとした。
その上で、「セキュリティに関しては取り組みを始め25年、クラウドは26年と長い歴史を持っている」と長年事業として取り組んでいることを強調した。
「セキュリティは、2020年度通期の売上が818億円、9万社にセキュリティソリューションを提供している。こうした実績、非常に早くビジネスをスタートさせたことから、フォーティネットジャパンのパートナー・オブ・ザ/イヤーを11年連続で取得するなど著名企業のセキュリティ製品を取り扱う実績がある」(大塚氏)。
クラウドに関しては、「最初にインターネット接続サービスを開始した1994年はYahoo!日本法人ができる1年前で、意外と知られていないがクラウドサービス提供でも長い歴史を持っている。昨年度売上は259億円で、多くのクラウドサービスでナンバー1シェアを獲得している」(大塚氏)と歴史と実績を持っていることを訴えた。
さらに、クラウドサービスを提供する他社の売上規模と比較し、「比較するとそこそこの規模がある」とこの分野での実績があることをアピールしている。
パソコンの販売台数四半期推移では、GIGAスクールの納入時期と重なった第1四半期は2020年度、2019年度を大きく上回った。しかし、第2四半期は大幅に減少している。
複写機は、「しっかりと頑張った手応えがある。複写機ビジネスは単体でのビジネスは難しくなっている。コピー保守についても第2四半期では回復したものの、第1四半期までは落ち込みが続いた。この点を心配される声を聞いているが、システム保守が安定的に成長し、ウエイトも大きくなっている」と勢いが戻っていること、マイナスをカバーする商材があると説明した。
2021年度下半期の見通しについては、上半期は好調に推移したものの、「ただ、まだ不透明さがある」とコロナ禍で市況が完全に回復しているわけではないと指摘した。その不透明な状況に対応するために、「オフィスまるごと大塚商会」を標語にしているように取り扱い商材が多いこと、自社で進めてきたDXのノウハウ、顧客管理やマーケティングのためのシステム「大戦略II」を活用した戦略的営業施策の実施などで対応していく。
「大戦略IIはだいぶ実績につながるようになっている。商材の幅広さは大きな強みで、当社商品だけでオフィスをまかなえる。が、3分の1のお客さまが依然として1商材のみとなっていて、これを拡大していく」。
さらに、戦略的に進めるのがAI活用だ。大塚商会では1998年に現在の大戦略の前身「大戦略」の利用を始め、2001年から営業支援システム「SPR」を導入するなど、システムを活用した戦略的な戦略と営業を進めてきた。2019年にはAIの提供を始め、2021年度上半期にはAI商談件数が7.43万件と前年同期比3倍と大幅に増加している。
「AIに関しては自社利用で、商談を行う際の行き先、商材推奨といった人間が気がついていない部分の気づきを実現する。さらにコールセンター、チャットボットなどさまざまな分野で活用している。こうした経験、ノウハウがお客さまにAI商材を提供する際に大きな力となっている」(大塚氏)。
また、大塚商会の新しい動きとしては2021年10月に「横浜物流センター」をオープンする予定だ。このセンターは地上4階建て、延べ床面積5万3838平方メートル。国内最大規模のロボットストレージシステム「オートストア」を導入し、ロボットによる商材ピックアップによる出荷スピードアップと物流生産性向上実現を目指していく。
こうした施策により、2021年度通期の業績は上方修正した。売上高は前回予想よりも1.8%増の8810億円、営業利益は2.1%増の593億円、経常利益は2.9%増の607億万円、親会社株主に帰属する当期純利益は4.9%増の415億円。現段階では上半期に予想よりも売上が伸びた分をそのまま載せたものだが、「下半期は現状は不透明ということで、伸びを換算していない。さらに業績を伸ばしていけるようにつとめたい」と大塚氏は慎重な見通しであることを強調した。
大塚商会の2021年度中間決算、売上高・純利益が過去最高に - クラウド Watch
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