機関投資家やデベロッパーはコロナ禍でも安定稼働する物流施設への投資を増やしてきた。写真と本文は直接関係ありません(記者撮影)
物流施設の「適地」が高騰している。
国土交通省が2023年3月に公表した地価公示から「工業地」を対象に価格動向を調べたところ、上昇率の高いエリアで物流拠点の相次ぐ投資による影響が見て取れた。
今回、各エリアの3年平均を集計して上昇率が高い順(2%以上)にランキングした。ランキングの対象は関東エリア(茨城県、栃木県、群馬県、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)で、時期はコロナ前(2018年1月~2020年1月)とコロナ後(2021年1月~2023年1月)。
コロナ後のランキング上位(4ページ目を参照)の顔ぶれは、いずれも物流施設の適地だ。
千葉県の市川市や船橋市は、都心からのアクセスが良く、物流企業からの人気も高い。千葉県市川市塩浜では、大手デベロッパーの三井不動産による大型物流施設(2022年3月竣工、延べ床面積は約18.3万平方メートル、2022年3月竣工)や、オリックス不動産による物流施設(2022年12月竣工、延べ床面積は約2.4万平方メートル)などが、直近では開発されている。
コロナ後は上昇率が2桁に
注目すべきは地価の上昇率だ。コロナ前(2018年1月~2020年1月)は千葉県松戸市松飛台の平均上昇率9.2%が最高だった(2ページ目のランキングを参照)。ところが、コロナ後の上昇率トップである千葉県市川市塩浜の平均上昇率は16%にまで伸びており、地価の水準は一段階上がっている。
複数のデベロッパー幹部は、「デベロッパーなどが次々に物流施設の開発に参入しているため、用地の取得競争が激しい。コロナ前と比べて開発用地の落札価格は高騰している」と指摘する。
コロナ禍で商業施設やオフィスビルの市況が厳しくなる中、安定稼働する物流施設を買い求める機関投資家は多い。そうした投資家需要の増加を受けて、物流施設の開発に新規参入するデベロッパーが後を絶たない。ある大手デベロッパーの幹部は、「物流施設の開発を手がけるデベロッパーの数は、あくまで体感だが倍増しているのではないか」と話す。
コロナ後のランキング上位のエリアにも、新興プレイヤーによる物流施設の開発が影響を与えていると思われるものが散見される。7位にランクインした千葉県柏市新十余二には、2021年に参入した大手不動産会社のヒューリックによる物流施設(2023年12月竣工予定、延べ床面積は約2万平方メートル)がある。
一方で、「神奈川県厚木市、千葉県の市川市や柏市など物流施設の需要が高い人気エリアでは、大手デベロッパーが買わないような小型の変形地を、新興プレイヤーが高値で落札している」(首都圏のデベロッパー幹部)という声もあがる。
ある物流施設の大手デベロッパー幹部は「足元の物流施設の新規供給量は需要の倍近くあり、明らかに供給過剰だ」と市場の先行きを懸念する。物流施設の開発競争は激しさを増す一方だ。
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