春は再生可能エネルギーの季節である。太陽光発電がフル稼働すると日中の電力供給は需要を上回り、出力制御が発動される。この4月はついに三大都市圏で初めて中部エリアが実施に至り、東京エリアも限界に近い。だが、欧州や米国では出力制御をしないのが主流だ。電力市場の「マイナス価格」が需給調整のシグナルとして機能するためだ。
(出所:123RF)
4月8日土曜日。中部エリアの一般送配電事業者、中部電力パワーグリッドは三大都市圏で初めて「出力制御」を実施した(プレスリリース)。
対象時間帯は8時から16時の8時間で、再生可能エネルギーの出力制御量は速報値で0.4万kWだった。翌9日(日)にも出力制御は続き、報道によると「今後も週末などに行う可能性」があるようだ。別の報道では、9日の出力制御量は59.3万kWと大きなもので、内訳は太陽光が約1400件58.6万kW、風力が9件0.8万kWだったという。
出力制御とは一般送配電事業者が管轄するエリアにおいて、電力の需給バランスが崩れて最悪の場合、停電が起きると予想される時に、発電の抑制を事前に発電事業者に依頼する仕組みである。「優先給電ルール」に沿って発電種別などで抑制順序が決まっている。
東京エリアの出力制御も時間の問題
出力制御は太陽光発電の普及が早かった九州エリアで2018年から始まり、その後、中国や四国といった西日本エリアを中心に広がった。2022年度までに北海道や東北、沖縄でも実施され、今年度は4月に入って同じ週末に中部と北陸が続いた。大都市圏で需要が大きい東京、関西はまだ実施していない。
ただ、東京エリアは限界に近づいているようだ。東京電力パワーグリッド(PG)は2月末の政府有識者会合の場で、「2023年度ゴールデンウィーク期間中の東京エリアにおける需給バランス想定は、現時点では、一定程度の下げ代余力確保の見込み」と説明し、なんとか出力制御を回避できる見通しを公表した。その一方で「通常を超える稀頻度の設備トラブルによる供給力余剰発生のリスクに備え、保険的な位置付けとして、再エネ電源の出力制御の準備をする」としている。
2月末の時点で、東電PGが早くもGW対応を検討していた理由は、昨年のGWには東京エリアでもスポット価格0.01円/kWhの時間帯が出現しており(グラフ1)、加えてこの1~3月には前回記事「電気料金高騰と裏腹に安かった2月・3月の電力市場価格、既存の料金体系は限界に」で触れたように、スポット市場は季節はずれの低価格化現象が東京エリアを含めて見られたためだろう。
それだけに、今年のGWにおける電力余剰の規模は、昨年をはるかにしのぐ可能性がある。
こうした現象が生じる要因の1つに「FIT送配電買取制度」がある。同制度ではFIT認定を受けた発電事業者が自ら発電計画を作成・提出する必要がない。各エリアの送配電事業者が事前に定めたFIT価格で太陽光発電などFIT由来の電力を全量買い上げ、卸電力市場に全量売却する。FIT価格と市場価格との差額は需要家が負担する再エネ賦課金を原資に補填される。
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