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アップルの「ビジョンプロ」は何のためのものなのか 具体的な使用 ... - DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

アップルの「ビジョンプロ」は何のためのものなのか

HBR Staff/Justin Sullivan/ Damian Pawlos/Getty Images

サマリー:アップルの新型コンピュータ「ビジョンプロ」は、ヘッドセット型のユーザーインターフェースを持ち、目の動きと手振りで操作される革新的なデバイスだ。アップルはこれを「空間コンピュータ」と呼び、ユーザーの身の... もっと見る回りの物理空間をデジタル出力のキャンバスに変えるという。そして同社は、これまで構築したプラットフォームと同様に、具体的な使用例を示さないことで、ビジョンプロのプラットフォーム化を狙っている。 閉じる

「ビジョンプロ」が狙う新たなプラットフォーム

 2023年6月にアップルが鳴り物入りで発表した新型コンピュータ「ビジョンプロ」(Vision Pro)は、顔に装着するヘッドセット型コンピュータである。斬新なのは、その使用法だ。コンピュータが出力したものは、物理的なスクリーンを介して見るのではなく、2つのごく小さな超高解像度ディスプレーによって投射され、ユーザーの目のすぐ前に映し出される。また、キーボードやマウス、タッチスクリーンによってコンピュータを操作するのではなく、主なユーザーインターフェースは目の動きと手振りである。

 iPhoneを売り出した際にスクリーン用のタッチペンを取り除いたように、アップルはビジョンプロで物理的なコントローラーを不要にした。ビジョンプロはユーザーの目の動きから何に関心があるかを察知し、手の動きから何をしたいかを判断する。

 こうした機能には、それぞれ先例がある。グーグルグラスやメタ・プラットフォームズのクエストプロなど、データを表示するウェアラブルデバイスは無数にあるし、リープ・モーションマイオ・アームバンドなど、手の動きで操作するテクノロジーもすでに存在している。だが、このような先駆的デバイスの中に、すべての要素を組み合わせて一貫性のある視野を提供したものはなかった。

 アップルはこの新しいデバイスを「空間コンピュータ」と呼ぶ。ユーザーの身の回りのあらゆる物理的空間をキャンバスにしてデジタル出力を表示できるのだから、まさにふさわしい名称だろう。デバイスを置くデスクも(ひざも)必要ないし、認知上の表示領域のサイズには何の制約もない。ユーザーが飛行機の座席のような小さな空間にいて、映画館と同じサイズで映画を鑑賞することも、技術的には可能なのである。

 では、この空間コンピュータで何をすることを目指すべきなのだろうか。アップルが現時点で示す使用例は、いささか凡庸だ。普通のコンピュータやiPadと同じように使用できて、現在の2次元情報を、これまでよりはるかに柔軟で制約のないディスプレーに提示できるという。

 たしかに、そうした需要もあるだろう。十分なスペースが取れないとか、多くの大型ディスプレーにスペースを占領されている場合には、価値があるはずだ。その意味で最も近い例は、超大型スクリーンのテレビである。消費者はそのために、3500ドルを払うだろうか。答えはイエスだ。アップルは、6000ドルもするディスプレー(Pro Display XDR)を販売している。それを踏まえると、現行の使用例のコストとしては、十分に範囲内に収まっている。また、この戦略には、既存のiPadおよびiPhone用の膨大な数のアプリケーションをこの新しいプラットフォームに移植できるという利点もある。

 しかしながら、2次元コンテンツのより上質で便利なディスプレーであることが、ビジョンプロに注ぎ込んだ技術とR&Dの量に見合うとは思えない。

 現実的な問題としてこのデバイスの存在により、コンピュータを頭にかぶるに値する拡張現実(AR)および仮想現実(VR)のアプリケーションの開発へとつながるのか。もちろん、それができるだけの技術的性能はある。ビジョンプロは現在、ユーザーがいる空間に3次元の物体を表示することができ、ユーザーを新しい空間に移動させることさえもできる。

 ところが、アップルはビジョンプロ発表の際、ARやVRという用語にほとんど言及しなかった。それは、アップルがこれまで誰も引いたことがない線を引いたことを意味する。つまり、これはARおよびVRのデバイスでもテクノロジーでもない。このテクノロジーは空間コンピュータなのだ。ARとVRに役割があるとすれば、空間コンピュータで適用されるアプリケーションとしてである。

 ここで、ARとVRの概念についておさらいしよう。

 ARはユーザーを取り巻く環境について、ユーザーの認知を変える。グーグルグラスはスマートグラスを通して通知を表示することで、それを実現した。ビジョンプロは2次元ディスプレーを設置、固定したので、ユーザーが頭を動かしてもディスプレーは動かない。まるでディスプレーが現在の環境の中に存在しているかのように見える。

 この状態は、極めて精密な動画を、デバイスを通して流し、あなたがその動画を閲覧することで実現する。ユーザーは現実の環境を直接見ているわけではないが、直接見ているような感覚になる。技術的には、ユーザーのビデオキャプチャを拡張しているのであり、ユーザーが直接見ているものにオーバーレイしているのではない。だがユーザーにとっては、見ているものが現実世界であれ、精密な動画であれ、見ていることに違いはないのである。

 一方、VRはユーザーをバーチャル環境に没入させる。ビジョンプロはユーザーの視線を完璧にとらえるので、当然ながら、ユーザーはバーチャル環境に没入する。あるモードでは、自分が実際にいる環境のように見える。ダイヤルを回すと、それが変わり、どこか別の場所に移動する。取り込んだ動画は、デジタル処理された3次元環境に置き換えられる。このように考えると、ビジョンプロは明らかにVRデバイスである。

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