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なぜ岡山?中継輸送拠点が物流施設需要押し上げ - LOGISTICS TODAY

話題配送圏人口で広島市をしのぐポテンシャルを持つとされる岡山市。

後背地も含めた都市圏形成では、倉敷市が含まれていることが順位を押し上げるポイントとなっている。反対に広島市都市圏には廿日市市や府中町が含まれるが、東広島、福山、尾道市といった街は、別の都市圏を形成すると見なされている。主要な郊外都市とやや分断された形の広島に比べて、岡山がエリア一体での商圏として存在感を示すことで、配送においても効率的な組み立てが可能となっており、広島県下の尾道が、岡山との比較でより物流に適しているとは言えない理由もここにある。

とはいえ、ただ地域都市圏の物流ニーズを賄うだけでは、冒頭で紹介した物流施設の建設ラッシュは説明できない。早島における、これまでの2.5倍の施設床面積の拡大には、当然地元の物流需要に応えるだけではない、また、尾道では対応できない「新しい物流需要」があると考えなくてはならない。その需要を生み出すものこそ「物流の2024年問題」なのである。

▲「プロロジスパーク岡山」建設予定地。完成は2025年夏。延床面積3万5000平方m

JR岡山駅から車で早島町を目指すと、ほどなく大きな「更地」を目にすることになる。その奥には規模の大きな展示会場兼国際会議場施設「コンベックス岡山」が控えている。この更地には「2025年夏完成予定」「プロロジスパーク岡山」と大きく書かれた看板が設置され、岡山駅から30分もたたないうちに、物流施設が建設ラッシュを迎えつつあるエリアに足を踏み入れたことを実感する。

中国地方最大の倉庫床面積が旺盛な物流需要を支える

物流適地としての岡山エリアは、何といっても東西(福岡-関西)と南北(山陰-四国)の結節点であることで、幅広いエリアへの中心的な配送拠点となるのが早島インターチェンジ(IC)周辺であることは、地図を眺めればすぐに気付く。とはいえ、早島町自体の人口は1万2000人を超える程度と少なく、岡山市、倉敷市など周辺の商圏も含めた物流ニーズに対応する地域として見る必要がある。

一方、岡山県より巨大な人口を抱える広島県下では、四国への入り口としては瀬戸内しまなみ海道の入り口に当たる尾道市もクロスポイントとしての高いポテンシャルを持つことがうかがえる。ならばなぜ、尾道ではなく早島での開発が集中するのか。

岡山県は農林水産業が盛んな第一次産業県であると同時に、瀬戸内湾岸に総面積2500ヘクタール、200を超える事業所が立地する水島コンビナートを擁し、石油精製、鉄鋼生産、化学品など、日本を代表する重化学コンビナートとして運用されている。

これに伴ってさまざまな製造業も発展してきた。近年はサービス業が占める割合が大きくなり、卸売業・小売業の事業所数8695か所(16年度統計)は、全産業中で最多の数となっている。つまり、荷主も貨物も豊富に存在している。物流産業は、これら地域産業の受け皿として発展し、中国エリア最大の倉庫床面積を備え、都市圏ランキング上位に位置するエリアの物流需要を支えているといえる。

これらの事業環境に加え、無視できない要素として急浮上したのが、「24年問題への対応需要」だ。4月1日に改正される改善基準告示において、一人のドライバーがトラックで配送できるエリアが実質的に見直されることとなった。

新たな規制では、トラックドライバーの運転時間を4時間程度を上限に設定しなければ、安定的な輸送計画を運用しにくい環境となる。これによって荷主と物流企業は配送拠点、配送エリアの見直しが迫られているのだ。

▲東海、九州地方の大都市である名古屋、北九州を1日での往復圏内に収めているのが岡山・早島の強みだ(クリックで拡大)

新しい運び方においては、大阪‐九州間を1人のドライバーが1日で運び、出発した拠点に戻ってくるのは不可能となるため、中継拠点の設定が必要となる。大阪と九州の中継地点をどこに設定するかによって、4月以降の西日本ではサプライチェーンの運送効率も大きく左右される。もちろん山陰や四国への輸送利便性も考慮しなければならない。24年問題への中継拠点としての対応力そのものが、これからの物流施設選びの最重要ポイントとなるわけだ。

大ざっぱに言えば、岡山、広島(尾道)がこうした条件に該当する。どちらも南北へのルートが確保されていることに加え、大阪、福岡へは4時間以内に到達可能だからだ。では何が違うのか。

早島ICを中心に半径300キロの円を描いてみると、東に向けては大阪を超え、名古屋市を含む愛知西部までをターゲットとすることが可能となる。

尾道ではどうか。関西-九州間の中継拠点として、また四国の入り口として早島同様のポテンシャルを持つ尾道市だが、同地から半径300キロの園内に収まる東端は滋賀県大津市周辺、三重県の一部までがギリギリの距離。早島同様、大阪を商圏に収めることはできるが、名古屋圏を4時間圏内に収める岡山の優位性はかなり鮮明となる。24年問題への対応力という観点で、尾道でなく岡山に物流施設が集積するのは、理にかなった現象なのである。

対名古屋・大阪・兵庫の貨物流動量で岡山の優位鮮明

名古屋圏にリーチする岡山の優位性は、20年公表の貨物地域流動調査の切り口でも確認できる。中部地域への貨物流動性では、岡山県が広島県を凌駕(りょうが)していることがすぐにわかる。

岡山県発の愛知県向け貨物が362万トンとなったのに対し、広島県発愛知県向けは217万トンにとどまる。また、愛知県発岡山向けは151万トンとなったのに対し、愛知県発広島県向けは99万5000トンだった。つまり、すでに愛知県との貨物輸送では、岡山県が中国地方の物流拠点として確立されているといえよう。ちなみに、大阪と兵庫2府県合計の輸送量も、岡山県発が799万トンに対して広島発は508万トン。逆方向も岡山県向けが581万トン、広島県向けは397万トンと明確な差がみられた。

※データは2020年度貨物地域流動調査・旅客地域流動調査から引用(クリックで拡大)

貨物の流動量から、関西との間の輸送はもちろん、中部圏と西日本の間の輸送においても、中継拠点を岡山に設定することで、24年問題に対応できる物流の選択肢も広がる。

施設開発コストに直結する面からも、岡山と広島を比べてみる。23年度の都道府県別・用途別平均地価は、広島県の商業地の地価が1平方メートルあたり22万8600円、工業地が4万4100円だったのに対し、岡山県はそれぞれ10万2500円、1万8800円となった。

別項で詳しく記すが、実質的にはさらに岡山を優位に押し上げる要因がある。

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