[モスクワ 11日 ロイター] - 西側諸国による経済制裁のために既に打撃を受けているロシア経済が、今度は国内的な要因でさらに痛めつけられる展開になってきた。プーチン大統領が9月21日に出した部分動員令が生産性に打撃を与え、需要と景気回復の足を引っ張る恐れが強まっているからだ。
これまでに何十万人もの男性が、徴兵されるか国外に逃亡した。西側の制裁にもかかわらず当初の想定より底堅く推移してきたロシア経済には、投資活動をまひさせてしまう不確実性という厄介な問題がのしかかりつつある。
セントロクレジットバンクのエコノミスト、エフゲニー・スボーロフ氏は「部分動員令や地政学的リスクと制裁リスクの高まりによって、経済危機の第2波が始まろうとしている」と語り、ロシア経済は年末にかけて一段と縮小すると予想した。
プーチン氏は今月6日、9月最終週の小売売上高が減少したことを踏まえ、政府に消費需要喚起の対策を講じるよう指示した。同氏は、唐突な部分動員令の発表と消費減退の関連性は一切認めていない。それでもロシア中央銀行は11日、経済活動が9月末に著しく鈍化したと指摘した。
大手銀行・ズベルバンク傘下のズベルインデックスが集計したデータに基づくと、9月19─25日の週に家計が食料品以外に支出した金額は前年比で12.7%減少し、その前の週の9.2%減から落ち込みが拡大した。9月26日から10月2日までの週も12.2%減と2桁のマイナスだ。
ルネッサンス・キャピタルのエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は「小売売上高、特に高額品と非食料品の分野では数カ月中に2桁マイナス圏に戻るだろう」とみている。小売売上高の前月比が直近で2桁のマイナスを記録したのは5月だった。
<貴重な人的資本>
ロシア経済発展省が今年の国内総生産(GDP)成長率について、12%を超えるマイナスになるとの見通しを発表したのが4月。それ以降は、原油高と経常収支の黒字拡大を追い風に、政府の経済見通しは着実に上向いてきた。
9月終盤にロイターが実施したアナリスト調査では、今年のロシアのGDP成長率の予想はマイナス3.2%で、経済発展省の予想は同2.9%。来年はアナリストの予想がマイナス2.5%なのに対して、経済発展省は同0.8%とはるかに楽観的だ。
だが、ロシアがウクライナでの軍事作戦強化を進めているのに伴って、ある程度姿を見せてきた景気回復は腰折れしかねない。
ベテランのエコノミスト、ナタリア・ズバレビッチ氏は「部分動員が主としてもたらす結末は、人的資本の喪失だ」と述べ、いつトンネルの出口の明かりが見えるのか分からない以上、最大限の恐怖と何もかもが不確実という状況が、急激に広がってくると説明した。
実際、部分動員の期間や最終的な規模はなお判然としない。こうした中でロシアのメディアは、推定で70万人が部分動員令の発表以来、国外に逃げ出したと伝えている。
ロクコ・インベストの投資責任者、ドミトリー・ポレボイ氏の見積もりでは、ロシアの労働力人口の0.4─1.4%が既に逃亡したか、戦場に投入されようとしている招集兵になっているという。
ポレボイ氏は、折しもロシアは先進的な機器や技術を手に入れにくくなっている局面にあるだけに、部分動員はロシアの人口動態、労働市場、投資環境という観点で痛手になると分析。「人的資本だけが経済をけん引する力として計算できたのに、生産年齢人口の一部は徴兵され、別の一部は逃げ出している」と嘆いた。
動員作業では組織的な混乱が生じており、何人かの閣僚があわてて自分の重要な部下たちの徴兵猶予手続きに乗り出すなどの光景も見られる。その一方、中小企業が部分動員の最大の被害者になろうとしている。
ズバレビッチ氏は「最悪の事態が訪れるのは、中小企業だろう。徴兵猶予を働きかける政治的手段はなく、2人か3人の要となる従業員を失えば、事業が成り立たなくなる」と話す。
間の悪いことに物価が再び上昇する気配を見せ、中銀の利下げサイクルは幕切れを迎えそうで、部分動員が経済にショックをもたらせば、政策担当者にとって新たな頭痛の種になってもおかしくない。
(Darya Korsunskaya記者、Alexander Marrow記者)
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