[19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、市場金利の上昇によりFRB自体の行動の必要性が低下する可能性があるものの、米経済の力強さと労働市場の引き締まりを踏まえると、FRBの一段の利上げが正当化される可能性があると述べた。
パウエル議長はニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演で「われわれは、経済成長と労働需要のレジリエンス(回復力)を示す最近のデータに注意を払っている。成長が持続的にトレンドを上回っていること、または労働市場の引き締まりがもはや緩和されていないことを示す新たな証拠が出てくれば、インフレを巡る進展がリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性がある」と述べた。
その上で、インフレ率をFRBが目標とする2%に持続的に戻すためには「成長率が一定期間トレンドを下回り、労働市場の状況が幾分か一段と軟化することが必要になる可能性がある」と語った。
同時に、FRBは一段の利上げの必要性を巡る検証を「慎重に進めている」と表明。10月31日─11月1日に開かれる次回連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が5.25─5.50%に据え置かれる可能性を示唆した。
<新たな「不確実性とリスク」>
また、一部の重要な指標は新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前の水準に近づいており、労働市場が冷え込みつつある証拠が得られているとも指摘。FRBがバランスを取りながらインフレ対応を進める中で、考慮しなければならない新たな「不確実性とリスク」が数多く存在しているとの認識も示した。
こうした不確実性とリスクには、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルに対する「恐ろしい」攻撃に起因する経済への新たな地政学的リスクが含まれると指摘。「FRBはこうした動きが経済に及ぼす影響を監視する役割を担っている」と述べた。また、個人的にもイスラエルに対する攻撃は「恐ろしいことだと感じた」と語った。
<国債利回り上昇>
このところの市場主導による国債利回りの上昇については、全体的な金融状況を「大幅に」引き締めるのに役立っていると指摘。「金融情勢の持続的な変化は、金融政策の行方に影響を及ぼす可能性がある」とし、市場に基づく金利上昇が持続すればFRBの利上げと同様の効果をもたらすとの考えを示した。
追加利上げは必要ないとの見方を明確に支持する内容ではなかったが、金融市場はそのように受け止めた。フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場が織り込む年内の利上げ確率は講演前の約40%から33%程度に低下した。
パウエル議長の発言を受け、10年債と30年債の利回りは上昇した。
パウエル議長は利上げについて「全体的な考え方は金融情勢に影響を与えることだ」と言及。債券市場は「現在、よりタイトな金融情勢を生み出しており」、FRBに対する期待とは関係なく米経済の力強さに対する見方の改善など様々な要因で動いているようだとした。
さらにこの違いは重要だとし、FRBが利上げしようとしているとの市場の見方だけで長期債利回りが上昇しているのなら、FRBはそれに従う必要があり、そうでなければ長期債利回りは低下するとした。
スコシアバンク(トロント)のチーフFXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「金融情勢は逼迫しており、これを回避することはできない。FRBの対応が増えるのではなく減る方向に動いている」と述べた。
<インフレ「なお高すぎる」>
議長は「インフレ率はなお高すぎる」とし、「数カ月間の良好な統計は、インフレ率が目標に向かって持続的に低下しているという確信を築くのに必要な始まりに過ぎない」と指摘。「こうした低い数値がどの程度継続するのかは分からない」とし、「道は険しく、時間がかかる可能性が高い。われわれはインフレ率を持続的に2%に引き下げるという決意で一致団結している」と語った。
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