福岡市中心部の新築分譲マンションで、販売価格が1億円を超える「億ション」が次々と誕生している。首都圏に比べて割安感があるため投資家のニーズが増えて地価が上がり、大手デベロッパーなどによる土地の獲得競争が過熱していることなどが背景にある。(橋本龍二)
福岡市・天神の中心交差点から北に約500メートルのビジネス街で、新築マンションの建設工事が進んでいた。来年3月の入居開始を予定している23階建ての「レーベン福岡天神
ワンタワーは、不動産業のタカラレーベンが開発した。「知名度が低い九州でマンション事業を軌道に乗せるための試金石」(松島勇一郎・マンション事業本部課長)で、大理石をあしらったエントランスのほか、16階に市内中心部を見渡せるラウンジも備えた。人気の間取りでは抽選倍率が10倍を超え、全153戸が今年1月末に完売した。
福岡市で30年以上にわたってマンション事業を手がける積水ハウスが同市中央区で昨年8月に販売を始めた「グランドメゾン大手門ザ・レジデンス」も、最高価格が3億円に迫る水準だ。だが、すでに全69戸の9割超が売れたとしている。
大型再開発が相次ぎ、人口も増える福岡市では近年、地価の上昇や建設資材の高騰に伴ってマンション価格が上がり続けている。「海外ファンドによる投資目的の購入が増えている」(不動産関係者)ことが一因との見方もある。
市場調査を手がける住宅流通新報社(福岡市)によると、2022年のマンション平均価格は4924万円で、13年の1・5倍となった。1坪(3・3平方メートル)当たりの価格も22年は市平均で229万円と、13年から約100万円上がった。
同社は「隣県などに生活基盤を持つ富裕層がセカンドハウスとして保有する動きも、需要を底上げしている」とみる。一方で、女性向け単身用マンションのニーズが伸びていることもあり、1戸当たりの平均面積は縮小傾向という。
価格の伸び率が特に大きいのは中央区だ。市の再開発促進策「天神ビッグバン」が進む天神地区や、閑静な住宅街の大濠地区を抱えており、22年のマンションの平均価格は6633万円と、13年の約1・7倍に伸びた。
大和ハウス工業が同区の大濠公園近くで開発した10階建ての「プレミスト大濠二丁目」は全35戸で価格が1億円超だが、半数は販売開始から数か月で売れた。セカンドハウスとして持つ富裕層が目立ち、購入者からは「息子夫婦や孫にすぐに会える福岡市内に欲しかった」などの声があったという。同じ大濠地区で大京が販売する「ザ・ライオンズ大濠公園」も、最高価格は2億円を超える。
伸びる需要を取り込むため不動産各社は適地の仕入れにしのぎを削っており、中心部では常に「マンション用地の需給が切迫している」(不動産関係者)。一方で、地場不動産開発会社の首脳は、高まる投資家ニーズに「家を造る側としては、実際に住んでもらえる人に売りたいのが本音だ」と、困惑の表情も見せる。
ただ、先行きには不透明な面もある。日本銀行の金融政策の見直しで、大手銀行や地方銀行は固定型の住宅ローン金利を引き上げる傾向にある。
日本不動産研究所九州支社次長で不動産鑑定士の高田卓巳氏は「マンション価格はコロナ前に頭打ちの様相を見せていたが、『巣ごもり』で快適な住環境を求める需要が喚起された。しかし、販売価格のさらなる上昇と住宅ローン金利の動向次第では、消費マインドに水を差す可能性もある」と指摘している。
新築マンションの値上がりを受け、中古マンション市場も活況を呈している。不動産情報サイト「ふれんず」を運営する福岡県宅地建物取引業協会によると、福岡都市圏の2022年の中古マンション価格は平均2433万円で、15年(1584万円)の1.5倍に膨らんだ。
全体の成約件数のうち3000万円以上が占める割合が年々上昇しており、22年は前年比6.5ポイントプラスの29.6%となった。
旺盛な需要を取り込もうと動き出したのが、関西が拠点の近鉄不動産だ。福岡で販売する中古マンションが好調なことから、昨年11月、福岡市内では20年ぶりとなる営業所を設けた。同社は「市内はエリアにかかわらず中古マンションの需要がある」とみており、今後、一段と販売促進に注力する構えだ。
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